2019.3.21

今年も米国ラスベガスにおいて世界最大の家電見本市CES(Consumer Electric Show)が開催された。CESは世界中の最新ガジェットが展示される業界向けの見本市。

今年のCESには18万人以上が来場し、4,400社以上の企業が出展した。

CESは世界から集まった最新テクノロジー機器から、その年の技術トレンドを予測することができるとして毎年注目を集めている。

今回出展された最新テクノロジーを世界が抱える社会課題を背景とともに紹介していく。

 

来る食糧不足に備えた人工肉ビジネス。インポッシブル・バーガーの可能性

2050年には世界の人口が現在の74億人から96億人に増加するといわれている。

さらに経済発展で一人あたりのGDPが増加し、世界の発展国の都市化も進展する。

となると、世界の食料生産は今より60%増加させる必要があるといわれ、現状のままでは食料難に陥ると推測されている。

なかでも食肉の食料難は危惧されており、その代替品として注目されているのは”昆虫食”。

牛や豚などの家畜の養育にはエサや水などの飼育が膨大なのに対し、昆虫であればさほどかからないことも注目される要因。

欧米では昆虫食を開発するベンチャー企業も続々と登場し、食用としての虫の取引を自由化する動きもEUでは起きている。

日本でも徐々に昆虫食は広がってきており、コオロギをパスタにすりこんだり、姿のままチップスとして販売する企業が出てきている。

 

とはいえ、昆虫を食べることに抵抗がある人も多いだろう。

来るべき食料難に対し、CESでは”人工肉”の開発を行なっている企業が登場。

それが、100%植物由来原料で作られた人工肉のハンバーガー・インポッシブル・バーガー。米国シリコンバレーのスタートアップインポッシブル・フーズが開発している。

インポッシブル・バーガーは、小麦や大豆のタンパク質、ココナッツオイルから作られている。肉のハンバーガーとほとんど変わらない味で肉汁もある。
実際に食べた参加者からは、「美味しい!」との評価が多数。また、肉を食べないベジタリアンからも注目を集めている。インポッシブル・バーガーは、2019年から市販される予定で、同社は2035年までに畜肉をすべて人工肉に置き換えることを目標としている。

2050年まで、徐々に進行していくと推測されている食料難に対して、こうした人工食品や昆虫食の加工企業はますます注目されていくことが期待される。

 

ウェアラブルデバイスはバリアフリーを促進する。リング型ウェアラブルデバイス・ORII

ついに来年にまで迫った2020年のオリンピック・パラリンピック。
特にパラリンピックの東京での開催に向かって、障害を持つ方へのバリアフリーや障害を活かして活躍する方の活躍の場の提供が進んでいる。

ウェアラブルデバイスの世界は、バリアフリー社会を目指すために欠かせないテクノロジーかもしれない。そう思わせてくれたのは、香港のスタートアップOrigami Labsが開発した、指にはめるリング型のウェアラブルデバイスORIIだ。

ORIIはスマホとBluetoothで連携。音声通話、SiriやGoogleアシスタントなどの音声アシスタントの起動、音声アシスタントを活用したメッセージの送信、メッセージの読み上げが可能。

 

ついに来年にまで迫った2020年のオリンピック・パラリンピック。
特にパラリンピックの東京での開催に向かって、障害を持つ方へのバリアフリーや障害を活かして活躍する方の活躍の場の提供が進んでいる。

ウェアラブルデバイスの世界は、バリアフリー社会を目指すために欠かせないテクノロジーかもしれない。そう思わせてくれたのは、香港のスタートアップOrigami Labsが開発した、指にはめるリング型のウェアラブルデバイスORIIだ。

ORIIはスマホとBluetoothで連携。音声通話、SiriやGoogleアシスタントなどの音声アシスタントの起動、音声アシスタントを活用したメッセージの送信、メッセージの読み上げが可能。

開発のきっかけは、創業者Johan Wong氏の父親が視覚障害を持っており、父親がスクリーンを見ることなくスマホを操作できる様なデバイスを作りたいと考えたからという。

ORIIは、骨伝導になっており、リングをはめた指を耳元に当てることで骨伝導で声を聴いたり伝えることができる。
音声アシスタントの可能性を引き出すウェアラブルデバイスとして、これからの可能性が垣間見える。すでに日本のAmazonでも購入することが可能。

こうしたウェアラブルデバイスの発展と普及によって、ますます進んでいくバリアフリー社会が垣間見える事例だ。

 

「高齢化先進国」の日本が切り込む介護テクノロジー。排泄予測ウェアラブルデバイス・DFree

ここ数十年に渡り、高齢社会、高齢化社会と言われてきた日本は現在、「4人に1人が高齢者」という「超高齢社会」に突入している。
2015年についに総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が過去最高の26.7%となり、2035年には総人口に占める高齢者の割合が33.4%。つまり、「3人に1人が高齢者」になるという推計も出ている。

世界では、日本に次いでイタリア・ドイツ、アジアでは香港や韓国、シンガポールが超高齢社会に突入すると見られている。

そんな、世界の高齢化に伴い、課題となってくるのは「介護問題」だ。
「高齢化社会先進国」である日本でもすでに、介護が必要であるにもかかわらず、自宅でも病院でも介護施設でも、介護を受けることができない「介護難民」は大きな社会問題となっている。

 

そんな介護問題に真っ向から挑む、日本のベンチャー企業がCESに登場した。

それが、排泄予想を行うウェアラブルデバイス・DFreeだ。
これは介護者の介助の負担を減らすことができるこれからの高齢化社会に画期的なデバイスだ。

DFreeは超音波センサーで膀胱の変化を常時計測し、排泄のタイミングを予測する。

センサーで収集された情報はデータ処理され、尿のたまり具合をスマホアプリ上で10段階表示する。排泄が近くなるとスマホに通知が届くように設定可能。2015年に東京で立ち上がったスタートアップ・トリプル・ダブリュー・ジャパン株式会社が開発している。


DFree bladder monitoring wearable device | CES 2019より

介護における排泄の課題は世界共通であり、世界中でニーズのある商品だ。

DFreeはCESにおいても高く評価されInnovation Awardsを受賞した。


高齢化先進国の日本だからこそ、いち早くそのニーズと市場に取り組み、介護関連のソリューションが生み出されることを期待したい。

女性とテクノロジーの可能性は広がっていく。今後注目のFemTech領域

昨今日本でも大きなムーブメントとなりつつある、女性のエンパワーメント 。日本は世界の先進国の中でも女性の社会進出が進んでいない国というデータが出ている。

こうした問題を孕んでいる中、今回のCESでは女性の問題をテクノロジーで解決する、”FemTech”分野が多く見られた。

日本からは、母乳成分を解析するサービス「Bonyu Check」を提供するBonyu.labが登場。

「Bonyu Check」は、授乳期間中の母親が自身の母乳の栄養状態を確認し、”必要な栄養と食事”のフィードバックを貰うことのできる日本初のサービス。

※写真はイメージ

日本の母乳育児率は52%と米国・中国などに比べ高く、多くの母親が”母乳のみ”あるいは”主に母乳で育児”を行うなか、母乳の状態に対して定量的なデータを計測している事例は今まで見られなかった。

働きながら子育てを行う母親も多い中、そうした育児に対する不安に対して、テクノロジーで解決しようというベンチャー企業がBonyu.labだ。

創業者も女性であり、まさに女性による女性のためのテクノロジー開発。

LOONCUPより

その他にもFemtechの分野では韓国の企業による、IoT月経カップ「LOON CUP」も登場。

月経をデータとして管理し、自身の健康状態に役立てるものだ。

 

女性の社会進出、エンパワーメント が注目されていく世界の流れに伴い、「女性だけが持つ身体状態」に寄り添うテクノロジーも発展していきそうだ。
テクノロジーによって自身の身体状態を管理できるようになると、さらに女性にとって働きやすい状態は整ってくだろう。

 

バリエーション豊かでユニークな最新ガジェットが展示された今年のCES。世界で起きている社会問題や未来予測を背景に、日々様々な研究に世界の企業は取り組んでいる。

テクノロジーの背景にある様々な解決すべき課題にも目を向けながら、時代の変化に乗り遅れることなく注視し続けたい。

 

Written by
堀夢菜
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