DIESELが発表した、2016_/SS(スプリング・サマー)コレクションは、若いターゲット層を一点に絞った斬新な戦略に出ました。特に企業が、ターゲットとするミレニアル世代は、消費活動が消極的な世代ということで有名です。企業がこの世代を顧客として取り込むことは容易な事ではなく、海外でも社会問題になっているほどです。
DIESELがミレニアル世代をどの様に表現し、どうアプローチしていったのか迫っていきます。
インターネットありきの生活をアイロニックに表現
Adweekより
何でも加工を施すミレニアル世代に対して、No Filter(加工をしないという意味)という言葉も付けシニカルな表現をしています。
ミレニアル世代の特徴は、デジタルネイティブ世代であるということです。彼らにとって、スマホや電子機器はあたり前な日常のツールであり、ネットによって生み出された、絵文字や、自撮り、メール、いいね、などのキーワードが、トレンドになる事も多くあります。ミレニアム世代が身近に感じるハッシュタグや、SNSのシンボリックな行動を表現し、ダイレクトなコミュニケーションを図っています。
《Love to Like=“いいね”をすることを好きになろう》
世界的に影響力のあるインフルエンサーを起用
Dieselより
今回のキャンペーンで起用されているもモデルたちは、さまざまな文化的背景やパーソナリティをもった方が起用されています。日本のモデル、水原希子さんをはじめ、アメリカの俳優で歌手のジョー・ジョナスさんを含めた6人がプロモーションの顔となりました。
#we’ve got follower than DIESEL(私たちは、ディーゼルよりもフォロワーが多い)とキャプションに記載があり、DIESELのプロモーションであるにも関わらず、インフルエンサーが話している様な、皮肉めいた広告の見せ方をしています。
オープンなセクシュアリティを表現
もう一つのミレニアル世代の特徴として、多種な性趣向に抵抗がなく、お互いを受け入れることができる世代であるということです。
LGBT(レズ、ゲイ、バイ、トランスジェンダー)がアブノーマルな性主観であったひと昔前よりも、LGBTへの理解は進んでおり、社会的な認知をされつつある事が、今回キャンペーンで忠実に表現されています。
バーチャル体験への障壁の低さを表現
インターネットは、物理的な距離を感じさせないくらい、日常のツールとして用いられる事が当たり前となりました。そのツールを活用し、ミレニアル世代は、買い物や友達作りや恋人探しなど、バーチャル空間で、選択し行動していることも特徴です。
斬新なプロモーションの立役者は?
今回のプロモーションは、DIESELのアートディレクターのニコラ・フォルミケッティによって指揮されました。
ニコラ・フォルケッティは、日本出身のファッションデザイナー、スタイリスト、ファッションエディターとして様々な分野で活動しています。当時、クライアントであったレディーガガの衣装に、生肉ドレスをスタイリングしたことで一躍注目を集めました。現在は、ユニクロのファッション・ディレクターやDIESELのクリエイティブディレクターとして活動しています。
そして、今回のプロモーションのコンセプトに関して、以下の様に語っています。「今シーズンは前回に続き、デジタル文化を解剖するという事に視点を置きました。世の中には、SNSを好む人と、そうでない人に分かれていると思います。だからこそ私たちは、そのことを今回のプロモーションで、忠実に表現したかったのです。」と語っています。
そして彼自身も、SNSを日常的に使用しているようで、今回のモデルのキャスティングにもSNSを通して行われたようです。彼は、「プロモーションで、世の中で起こっていることをリアルに再現するため、サイズ、文化、人種、性別がバラバラになるように、モデルのキャスティングをしています。」と明かしました。
ニコラ自身のInstagramに、今回のプロモーションを模写したステッカー“this is my selfie face”(これが私の自撮り顏)と共に、セルフィーを投稿していました。
また、このキャペーンのアイディアの元となったSNS文化に関して彼は、「私は、SNSに関して、好きな部分もあるし嫌いな部分もある。最近の子は、まだ会ったことのない友達や恋人探しをSNS上で行うことに対して、抵抗はないようですが、こんなにクレイジーなことはないと思います。それに、絵文字はもはや新しい世界共通言語だと思っています。」と自身の考えを語っています。
そして今回のプロモーションは、TinderやShazmというような、様々なプラットフォームでもプロモーションを実施しました。
Tinder(ティンダー)
シャズムは、その場でかかっている音楽のアーティストや曲名が分かるアプリです。音楽を認識できなった時に、DIESELの広告が表示され、左側の写真のように、i didn’t get it either…「僕たちもこのこの音楽はわからない…」といった広告写真が掲載される仕組みです。若年層のユーザーが多い、SNSを選んでいることからも、ミレニアル世代へのリーチを意識したものでしょう。
さいごに
若年齢層をターゲットにした、DIESELのプロモーションは、センセーショナルでありながら時代の象徴を反映させた企業プロモーションです。また、クリエイティブ・ディレクターであるニコラ・フォルケッティ氏が「SNSに対してポジティブな意見とネガティブな意見の両方を表現したかった」と話す様に、中立的に表現したプロモーションであることが今回の面白みです。
購買欲が低いとされるミレニアル世代に向けたプロモーションは、この先どういったプロモーションがなされていくのでしょうか。DIESELをはじめとして、その他先進企業のコミュニケーションを注視していきます。