世界中のインターネットユーザーの間で、絵文字がコミュニケーションツールとして使われているということは、1つの文化として定着しています。
絵文字文化は、ここ2,3年の間に起こった最新コミュニケーションツールであり、新たに生まれた海外の文化でもります。この先、絵文字は新たな新言語として、人々のコミュニケーションに変化をもたらすことができるのでしょうか。
IOS 5が登場して以降、ビジュアルコミュニケーションが加速
絵文字で会話のやり取りをするといった行動は、今に始まった話ではありません。ここまで絵文字が世界的に浸透した背景には、2011年にアップルが発表した、IOS5導入に「絵文字」が正式に日本語以外の言語に対応したことが大きいです。
▼年別絵文字使用頻度の動向をグラフにしたもの
インスタグラムなどを通して絵文字が、コミュニケーションツールとして用いられていることを示すグラフを見れば、2011年のIOS5導入以降、急速に絵文字の使用率が上がっていることが、分かります。絵文字を通して感情をより具現化した形で、相手とコミュニケーションが取れるようになると、世界中に浸透していきました。昨年には、世界でも有数の辞書である、オックスフォード辞典の発表する新語に「emoji(絵文字)」が正式に追加されました。
Instagramとemojiの関係
絵文字が世界中で使われるようになったことで、絵文字を駆使したビジュアルコミュニケーションにも多様性が生まれはじめています。Instagramは写真がコミュニケーションのメインとなっているため、非言語コミュニケーションのSNSプラットフォームと言われています。注目したいビジュアルコミュニケーションの例は、京都に位置した観光名所、「清水寺」の運営するInstagramアカウントです。ビジュアルコミュニケーションの可能性を伺わせる、非常にアクティブなユーザー同士のやりとりが印象的です。
▼コメント欄には海外のユーザーによる絵文字投稿が多数
この1件の写真には20件以上も合掌をモチーフにした、絵文字投稿が寄せられています。言語が異なるユーザー同士でも、写真から読み取った情報で、ユーザー同士がコミュニケーションを図ることができる点は、絵文字がもたらした新しい可能性といえます。
また、インスタグラムでお馴染みのタグ投稿も、ハッシュタグの後に言葉をつけるのが今までの主流でした。しかし、Instagramのアップデートにより、4月27日以降、絵文字を使ったハッシュタグ投稿も可能となりました。言語のいらない、ハッシュタグで世界の様々なユーザーが繋がりあう機会ができたのです。
▼絵文字によるハッシュタグ投稿
上の写真で投稿されているタグを絵文字で検索してみると、#お茶・グリーンティーは全体で6万件以上もの投稿があります。
絵文字を用いた企業プロモーション事例
そのような流れを受け、企業も絵文字を活用したプロモーションを行っています。ここからは、絵文字を用いた海外での企業事例をいくつかご紹介します。
Chevrolet(シボレー)
自動車メーカーのChevrolet(シボレー)が昨年おこなったプロモーションは、絵文字だけを使って作文を作るというもの。海外ではこの広告が発表された途端、絵文字を解読できるかと、SNSで話題騒然となりました。
この作文を普通の文に直すと、
「新しい2016年のクルーズには革新的なテクノロジー、気鋭なデザイン、そして素晴らしい燃費が今回のスポーティな車になっているよ。スタイリッシュでソーシャルな人たちにとって、こんなに最高な新製品はパン発明以来のことでしょう!シボレーのスポークスマンは、「我々は新しいクルーズが世界を変えられると思っています」と言っています。
デザイン: アスレチックな作り、スタイリッシュでカッコイイ見た目
テクノロジー: 7つのデバイスは4G LTE Wi-Fiが使用可能。クール!このクラスでは初めてApple CarPlayとAndroid Autoを搭載、ブルートゥース接続可能、タッチスクリーンとスピーカー/音楽も装備。
座席: 5席
燃費: 2015クルーズはEPA基準、ハイウェイで1ガロン35マイル。2016クルーズは、それを上回る燃費となる予定。素晴らしい。もう一度満タンにするまでにどれだけ時間がかかることか!
安全性: エアバッグ10個搭載。6ヶ月のOnStar スタンダードがついています。
発売: もうすぐです!2016年春に発売予定。
販売地域: 全世界
最後に、クルーズで色々な場所に行く準備をしよう!より良いドライブに必要なテクノロジーと燃費は搭載されています。気にいる準備をしておいて!」という内容。
この広告を受けてTwitterではかなりユーザー間で盛り上がりも見せたようで、広告が公開されたのち後日この作文の回答が公式で公開されました。
ツイッターでの反応
Someone please decode this. #chevygoesemoji #j350 pic.twitter.com/qptQ6sg444
— Katie Dunne (@kt_done) 2016年5月18日
訳:(誰かこの文解読してくれない?)
Great campaign #CHEVYGOESEMOJI #Chevy #wtnm
— Tate Marchand (@March_Hands17) 2016年5月23日
訳:(いいキャンペーンだよね)
PEPSI(ペプシ)
飲料ブランドのPEPSI(ペプシ)では、70カ国の地域に合わせて絵文字を作り、その絵文字をパッケージプリントして行うというキャンペーンを実施しました。
ADAGEより
キャンペーンには、ペプシモジの公式アプリが開発されており、無料でダウンロードし、自分のスマホに落としこんで使うことができる仕組みにもなっています。さらに、パッケージやアプリだけでなく、ファッションデザイナーのジェレミースコットとコラボし、ペプシの絵文字にインスパイアされたサングラスを発売もされました。
.@ITSJEREMYSCOTT collaborated with @pepsi for a collection of sunglasses [sub]: https://t.co/DIYUh93jEI pic.twitter.com/rXtdDZfMCm
— WWD (@wwd) 2016年2月1日
LOREAL(ロレアル)
化粧品ブランドのLOREAL(ロレアル)では、Beaumoji(ビュー文字)と呼ばれる130種類にも及ぶ、ビューティーに特化した絵文字がリリースされています。アプリをダウンロードし、設定を進めると、メッセージ内でのemoji使用ができるようになります。
このBeaumojiにちなんで、SNSを中心に「#Beaumojicontest」というコンテスト を実施しました。ハッシュタグ付き投稿をしたユーザーの中で選ばれたユーザーが、ロレアルが主催するビューティーカンファレンスに参加できるというものでした。
ロレアル以外にも、メイベリン、NYX、URBAN DECAYといった海外発の化粧品ブランドもBeaumoji内でemojiを作成しています。実際に存在する商品が絵文字になっており、バラエティに富んだ絵文字として、若者の中でも人気の絵文字となっています。
ADWEEKより
ADWEEKより
さいごに
感情や状況をよりリアルに相手に伝える手段として、絵文字が大きな役割を担っていることがお分かりいただけたかと思います。最近では、スナップチャットが導入したBitmojiも自分をアバターにしてスタンプを作成することができるなど、絵文字から派生して、より多様なコミュニケーションができるツールとして注目を集めています。テキストコミュニケーションからビジュアルコミュニケーションへの移行が想像されている中、今後も、特定の言語を問わないコミュニケーションは加速していくのではないでしょうか。