顔認識と聞けば、本人確認のための手段というようなイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか。しかし、顔認識はマーケティング、顧客満足度向上など様々な用途で活用され始めています。
最近では、ディズニーが映画館の観客の反応を探る顔認識システムを開発しました。観客の顔の表情を読み取り、いつ、どの場面で観客が盛り上がっているのか識別することが可能です。ディズニーを始め、多くの企業がこの顔認識をビジネスへ活用することを検討し始めています。
ディズニーは映画来場者の表情を数値化
ディズニー・リサーチはカリフォルニア工科大学と共同で顔認識システムを開発。まず、スターウォーズ、ジャングル・ブック等のディズニー映画シリーズを上映し、赤外線カメラで3,179人の観客から1,600万以上もの表情に関連したデータを収集しました。
Factorized Variational Autoencoders(FVAEs)と呼ばれるアルゴリズムにより、その表情に関連したデータを数値化し、映画の観客が笑ったり、微笑んだり、あくびをしたりと、どのように映画に反応しているのか計測します。まだこの顔認識システムは実用化されていませんが、将来的には映画を観た観客の反応を元に、映画制作の改善に役立てることが期待されています。
従来の映画業界ではCGなどの映像技術で他社と差別化するのが主流でしたが、今後はこの顔認識技術のような最新技術を活用し、観客の反応の良い映画制作を目指すことも考えられます。さらに、顔認識技術は映画だけでなくショービジネス全般で活用されることになるかもしれません。
列に並んでる表情を読み取る、小売店Walmart(ウォルマート)
米国小売大手のWalmart(ウォルマート)は、顧客満足度を下げないように、カスタマーサービス改善に顔認識を活用する予定です。レジにビデオカメラを設置して、レジの順番待ちの顧客の顔の表情を記録し、その表情から不満度を測定するというもの。
顧客がサービスに対して不満を抱えているかどうかは、購買データから読み取ることは難題です。しかし、顔認識では、レジの順番待ちの顧客の表情を読み取り、不満を抱えているかどうかを把握することが可能です。顔認識は小売におけるカスタマーサービスの改善に役立てることもできるのです。
DiGiorno Pizza(ディジョルノ ピザ)は顔認識をプロモーションに活用
Nestlé(ネスレ)の冷凍ピザDiGiorno Pizza(ディジョルノ ピザ)はマーケティングに顔認識技術を活用しました。24人のゲストを集めて、DiGiorno Pizzaのピザを食べるパーティーを開きます。
ピザをオーブンに入れてゲストが口に運ぶまでの間、パーティー会場の部屋に設置した40台のビデオカメラがゲストの顔を録画し続けます。
その後、画像認識サービスのGoogle’s Vision APIを用いて、ゲストの表情の変化(主に笑顔、目の動き)から感情の盛り上がりを読み取りました。
結果は以下の通りです。
・ピザがオーブンに入った時(幸せ度18%上昇)
・ピザを焼く匂いが部屋に漂ってきた時(幸せ度24%上昇)
・ピザが焼きあがりオーブンから取り出された時(幸せ度20%上昇)
・ピザがカットされた時((幸せ度11%上昇))
・ピザを食べた時(幸せ度11%上昇)
ピザを焼く匂いが部屋に漂ってきた時に、幸せ度が最も上昇しています。ピザがどのようなタイミングに場を盛り上げる食べ物なのかを、数値で消費者に示すことができます。またこれにより、DiGiorno Pizzaは「ピザを焼く」という体験そのものが人々を幸せにするということも訴求しました。顔認識をプロモーションに活用したユニークな事例です。
ディズニーのようなエンタメ業界から、ピザのような冷凍ピザのようなフード業界に至るまで、顔認識機能は企業のマーケティングに活用されています。商品開発から、プロモーション、カスタマーサービス向上に至るまで活用領域の広い顔認識機能は、注目すべきテクノロジーの1つではないでしょうか。