米飲料大手ペプシコが、高級飲料LIFEWTRのブランドイメージ形成のため、ユニークなプロモーションを展開した。
LIFEWTRが行うのは、アーティストによるボトルデザインや、アートの展示会を開催するというような、アート領域に注力した活動だ。その活動の背景にあったのは、高級飲料をより多くの消費者に選んでもらうための、ブランドイメージの形成だった。
拡大する新たな高級飲料市場
LIFEWTRは米国では「Value-added water」という新たな飲料カテゴリに属す。Value-added waterは直訳すると「付加価値飲料」を意味する。一般的な水と異なり、精製水にビタミン、ミネラル、栄養素が付加されている飲料だ。
現在米国において、Value-added waterの注目度は非常に高まっている。BMA(the Beverage Marketing Association)によると、2016年、米国におけるValue-added waterの生産量は前年から12.3%増加し、2017年にはさらに10%の増加が予測されている。
また、LIFEWTRを含むValue-added waterは、通常の水ボトルに比べて価格が高いのが特徴だ。
ペプシコの展開している水ボトルAquafinaは、20オンス(591ml)ボトル1.29ドル(約147円)で販売されている。その一方で、LIFEWTRの販売価格は700mlボトル2.06ドルだ(約235円)。
通常の水ボトルより高価なLIFEWTR。高いなりに選ばれる理由がなければ消費者には振り向いてもらえないだろう。
専門家によると、付加価値が効能を発揮するのは、激しい運動をする人に対してであり、その他の人にはあまり効能がないという。では一体どのようにすれば、運動をしない人にもLIFEWTRを手にとってもらえるのだろうか?
“アーティスティックな水”というブランディング
どのようにすればより多くの人にLIFEWTRを手にとってもらえるのか。LIFEWTRが着目したのはアートの活用だ。そして目指したブランドイメージは“アーティスティックな水”というもの。
LIFEWTRのボトルのラベルはアーティストによってデザインされ、期間ごとにそのアーティストは変わるのだ。これまでに設定されたテーマ、それによってデザインされたラベルは以下。どれもがモダンアートでスタイリッシュである。
シリーズ1「パブリックアート」
ペインターなど公共スペースのアートを専門とするアーティストによるラベル。
シリーズ2「ウーマン イン アート」
3人の女性アーティストによるラベル。
シリーズ3「エマージング ファッション デザイナーズ」
気鋭のファッションデザイナーがデザインしたラベル。
女性アーティストの支援を積極的に
LIFEWTRはラベルのデザインのみならず、OOHの役割も兼ねたアート活動を実施している。その最たる例が女性のためのアートの展示会「#ArtByWoman」です。
今日、欧米におけるビジュアルアーティストの51%を女性が占めている。しかし、常設展示を行っているアーティストに占める女性の割合は、たった5パーセントしかいない。
そこでLIFEWTRは、シリーズ2「Women in Art」のボトルリリースと同時期の2017年6月に、“女性のための”アートの展示会「#ArtByWoman」をニューヨークのリンコルンセンター前で開催した。
また展示会に合わせて、街の看板やデジタルサイネージでも#ArtByAWomanの宣伝を実施。看板を通じて、道行く女性にハッシュタグ#ArtByAWomanをつけて自身のアートをSNSに投稿するよう呼びかけも行った。
展示会 #ArtByWomanに展示されたアートや、ハッシュタグ#ArtByWoman付きで投稿されたユーザーの写真は、LIFEWTRの公式Instagramアカウントのコンテンツとしても活用され、人気を呼んでいる。
LIFEWTRはラベルのデザインから展示会まで幅広くアートを活用し、高級感ある洗練されたブランドイメージの形成に励んでいる。そして女性アーティストの積極支援という、現代にフィットしたストーリーは、消費者から選ばれるブランドになる一因だろう。