現在、育児広告をめぐる議論は世界中で起こっています。1980年~2000年に生まれた人をミレニアル世代と呼んでいる中で、すでに結婚をし、子育てをしている若い親世代、現在20代〜30代の世代がミレニアルペアレンツと呼ばれています。彼らは、子育てに対し、一体どのようなビジョンを持っているのでしょうか。
ミレニアルペアレンツに支持されるCMや広告は、理想的かつ野心的なものではなく、現実的なものへ移っていると言われています。BabyCenterの調査でも、ミレニアルズ世代の母親(ミレニアルマザーペアレント)の66%が、ブランドは広告を打ち出す際に、現実的に育児を描写することが大切だと回答しているのです。
ミレニアルペアレンツは現実主義
子育ては容易ではなく、様々な困難や苦労も伴います。しかし、「その時間がいずれあなたにとって、宝物になる」と訴求する広告に、ムーニーのプロモーション動画があります。2分ほどの動画のうち、はじめの1分は、父親がほぼ登場せず、母親1人が育児に向き合う姿が描かれています。そして育児の大変さがリアルに描かれています。
最近は、女性の社会進出や男性との雇用機会均等を求める運動など、女性の社会的立場が上昇し、子供が生まれても働き続ける女性も増えています。そのような背景がある中で、ミレニアルペアレンツは、以前の世代に比べて非常に現実主義的になっています。
現実的に起こりうるトラブルの描写も
食品会社Kraftは、子育ての中で現実に起こりうるトラブルを描写したCMを制作しています。休日に父親と娘がブランコで遊んでいる様子を描写したもの。小さい娘を乗せたブランコを力いっぱい押す父ですが、少し目を離した隙に娘がブランコから落ちてしまい、焦って娘の方へ駆けていきます。
楽しく親娘で遊んでいたはずが、思わぬ事故を引き起こしてしまうという描写です。このようなことは、子育てをしている上で現実的に起こりうるトラブルです。
以下もKraftのCMです。バウンシーハウスという、風船で作られた遊び場で子供たちと遊ぶはずが、バウンシーハウスを父親が壊してしまう様子が描かれています。周りにいた子供達はバウンシーハウスの周りから逃げて行ってしまいます。
ただ、仲睦まじく、何のトラブルもなく親と子供が遊んでいる様子を描くよりも、現実的に起こってしまうトラブルを描写したCMの方がミレニアルペアレンツの共感を得ているのです。
近頃、日本ではワンオペ育児を描写したプロモーションが問題となっています。しかし一方で、そのような広告は現在の日本における育児を、現実的に描写しているとも言えます。
今後、育児に関する価値観はどのように変化していくのでしょうか。また、企業はどのような広告を作っていけばいいのでしょうか。欧米と比べ、日本においてはまだまだデリケートな問題で、慎重さが必要と言えるでしょう。