VRが様々な業界で活用され始めています。米国ホームセンター大手Lowe’s(ロウズ)がVRで「DIY体験」できるブースをカナダ、米国の3店舗の一角に設置しました。その狙いは何なのでしょうか?
VRとARを活用し 他社と差別化
米国では昔からDIYが非常に盛んであり、DIY文化の先進国と言えます。日本でなら業者に頼むような家や道具の修理も、自ら材料を購入して済ませてしまいます。DIY道具を販売するホームセンターも充実しておりLowe’s 、The home depot、Targetなどホームセンター大手各社が大規模な店舗を米国全土に展開しています。
競争の激しい業界において生き残るためには、他社との差別化が求められます。ホームセンター大手Lowe’sは、ARやVRなどテクノロジーを導入する取り組みにも積極的です。
動画コンテンツ、ARを作ってきたLowe’s
Lowe’sはこれまでDIYのハウツー動画を作成してYouTubeに投稿してきたほか、Facebook等のSNSにもDIYの楽しさを演出するショート動画やハウツー動画を投稿しています。
YouTubeのハウツー動画:キッチンのタイル貼りハウツー
Facebookのショート動画:オシャレな棚を壁に設置
ARアプリナビゲーション
Googleの3Dスキャン技術「Tango」を活用したLowe’sオリジナルのARアプリです。ARによりスマホ画面上の現実世界(Lowe’s店内)に黄色の線を重ねて表示します。その黄色の線に沿って歩いていくと、欲しい商品までたどり着けることができます。そうしたナビゲーション機能や、スマホ画面上の家具に黄色い線を引くことで家具のサイズを測れる計測機能も有します。アプリはTangoに対応したスマホであるLenovoの「Phab 2 Pro」、ASUSの「ZenFone AR」などで使用可能です。
新たに行うのはVRでのDIY学習
Lowe’sに来店するすべての顧客がDIYに習熟しているわけではありません。そこでLowe’sは前述のハウツー動画のような学習コンテンツを制作し、顧客にDIYの学習機会を提供してきました。
しかし、ハウツー動画だけではDIYの知識は定着しにくいものです。また、顧客の興味を喚起できません。そこで、Lowe’sは顧客が能動的にDIYを学習でき、かつLowe’sの商品のプロモーションにもなるVRブース「Holoroom How To」を設置しました。VRで「風呂場のタイル貼り体験」ができるというものです。
Lowe’sより
「Holoroom How To」においてはVRヘッドセット、コントローラーのHTC Viveを使用します。
Lowe’sより
VRで「風呂のタイル貼り体験」。まずはセメントが入ったバケツを取ります。
バケツのセメントを工具でかき混ぜます。
Lowe’sより
セメントを壁に塗っていきます。
Lowe’sより
セメントの上にタイルを貼っていきます。
タイルを貼る中ではみ出たセメントをスポンジでこすり落とします。
リアルなDIYと同じ作業をVRで体験することが可能です。
現在、VRブース「Holoroom How To」でDIY体験できるのは「風呂のタイル貼り体験」のみです。しかし、将来的には様々なDIY体験を「Holoroom How To」で提供することが予測されます。
VR空間で商品の利用体験をしてもらうことにより、DIYへのハードルも払拭することができます。従来のテキストや動画と違い、VRはバーチャルな空間ではあるものの「体験」することができるため、商品やサービスを訴求しやすいと言えるのではないでしょうか。