音楽業界と密な関係のプラットフォームと聞いて、最初に思い浮かぶのはYouTubeだろう。YouTubeに曲を投稿し、歌手になったという話も珍しい話ではない。誰が知る、ジャスティン・ビーバーもその1人だ。
しかし、最近では音楽業界からInstagramが注目されている。そこには、Instagramユーザーの属性、プラットフォームとしての特性、インフルエンサーの影響力の強さが関係している。
音楽にお金を払っているユーザーが多い
リサーチ会社Nilsenの調査(2015年実施)によると、Instagramユーザーは非Instagramユーザーと比べ、音楽を聴く時間が長く、また音楽に関するものにお金を多く使うことがわかった。
Instagramユーザーかつ、音楽好きの人は、週に平均して30時間半音楽を聴くという。一方米国人の平均は週に23時間半だ。Instagramユーザーかつ音楽好きの人は、一般の人に比べ30%も音楽を聴く時間が多いのだ。そして、彼らは2倍の確率で音楽のストリーミングサービスを購入しているという調査結果も出ている。
また、Instagramのフォロワー数ランキングの上位にはアーティストのアカウントが名を連ねている。これも、Instagramユーザーの多くが音楽への関心を持っているといえるだろう。
Instagramフォロワー数ランキング
1位 Instagram:2億2,712万人
2位 Selena Gomez(セレーナ・ゴメス):1億2,869万人
3位 Ariana Grande(アリアナ・グランデ):1億1,489万人
5位 Beyoncé(ビヨンセ):1億760万人
6位 Taylor Swift(テイラー・スイフト):1億429万人
(2017年10月現在)
元々、Instagramは音楽のためのプラットフォームではない。しかし、Instagramユーザーの多くが、音楽好きであるという事実は、Instagramが音楽分野に注力する十分な理由となる。
アーティストにとってStories、LIVE機能は追い風
Instagram Storiesの1日あたりのアクティブ・ユーザーは2億5,000万人(2017年1月時点)。時間が経つと消えるプラットフォームの先駆けSnapchatは、1日あたりのアクティブ・ユーザーが1億6,600万人(2017年1月時点)であり、すでにこの分野ではInstagram Storiesの方が主力となった。
Instagram Storiesは一般のユーザーからインフルエンサー、企業アカウントまで幅広く活用されているが、それはアーティストも例外ではない。アーティストがInstagram Storiesで配信するのは、ライブやイベント、新曲リリースの告知に加え、ステージの裏側など。投稿が消えてしまうため、ステージの裏側なども公開しており、ファンにとってはたまらないコンテンツだ。
例えば、Lady Gaga(レディー・ガガ)は積極的にInstagram Storiesを活用しているアーティストの1人だ。彼女が投稿するのも、新曲リリースの告知や、ステージの裏側である。2017年2月、アメリカンフットボールの優勝決定戦、スーパーボウルのハーフタイムでパフォーマンスをした際にも、Instagram Storiesでステージの裏側を配信した。
Instagram Storiresは、ファンとアーティストを密に繋ぐ機能の1つだ。また、Instagram LIVEもファンとアーティストの関係を深める働きをする。Instagram LIVEは、ファンと同じ時間をリアルタイムで共有することで、繋がりを感じさせ、距離感を縮めることができるだろう。
Instagramによってトップアーティストの仲間入りも
Instagramでは、インフルエンサーがアーティストの曲をプロモーションする流れも加速している。米国の俳優でYouTubeパーソナリティーのJake Paulは、ダンスデュオのAyo&Teoのダンスの真似をした動画を自身のInstagramに投稿。すると他のインフルエンサーやフォロワーもそれを真似した動画を続々と投稿。Ayo&Teoの知名度は一気に上昇した。
また、Instagramで3,300万人のフォロワー(2017年10月時点)を持つバスケットボールプレイヤーLebron Jamesは、トレーニング中の様子を撮影した動画を投稿。その動画では新人ラッパーのTee Grizzleyの曲が流れていた。すると、Lebron Jamesの投稿経由でTee Grizzleyのフォロワーが急増。投稿後1ヶ月で50万人ものフォロワー数が増え、2017年10月現在ではフォロワー数が100万人を超えるアーティストとなった。
Instagramは音楽業界との関係を強化
2015年Instagramは、パークウッドエンターテイメント社のデジタル部門長のLauren Wirtzer Seawood氏(以下Lauren氏)を音楽業界とのパートナーシップを強化する部門の責任者に任命した。
Lauren氏が在籍していたパークウッドエンターテイメント社は、ビヨンセが2010年に創設したマネジメント会社である。ビヨンセが抱える1億700万フォロワーという数字には、パークウッドエンターテイメント会社によるマーケティング戦略が一役買っている。そして、同社でデジタルマーケティング戦略を担っていたのがLauren氏だ。その経験を生かし、著名アーティストやそのマネジメントチームにInstagramを活用したブランディング法を教えている。
またInstagramを運営するFacebookも、2017年2月に音楽業界とのパートナーシップ構築の責任者としてTamara Hrivnak氏を抜擢。Tamara氏はワーナーミュージックのデジタル部門責任者やGoogleで音楽業界とのパートナーシップ構築の責任者を務めた人物だ。
Instagramは多数の音楽好きユーザー、アーティストに適したプラットフォームを持っているだけでなく、音楽業界との関係性を強化する動きを見せている。Instagramと音楽業界の関係性は、今後どのように変化していくのだろうか。また、他のプラットフォームはどのように音楽業界と関わりを見せるのだろうか。