イベントマーケティング・SNSマーケティングの情報を発信するWebメディア「COMPASS」(コンパス)が主催する「COMPASS Secret Salon Vol.1」が開催されました。第1部では、「Instagram Storiesにみるユーザートレンド・企業トレンド」という内容のセミナーを開催し、第2部では「Snapchatライク」なSNSの流行について、キリン株式会社デジタルマーケティング部 島袋孝一氏、COMPASS編集長石井リナが、トークセッションを行いました。今回はトークセッションの様子をお伝えしていきます。
スピーカー:キリン株式会社 デジタルマーケティング部 島袋孝一
COMPASS編集長 石井リナ
モデレーター:株式会社SnSnap CMO 目良慶太
「SnapchatライクなSNS」はノウハウ蓄積も難しい
目良: SnapchatをはじめとしたInstagram StoriesやSNOWを今回のセミナーでは「SnapchatライクなSNS」と呼んでいましたが、企業として、消えてしまうSNSをやるのかというのは、どのように考えられていますか?
(左)キリン株式会社 デジタルマーケティング部 島袋 孝一氏 (右)COMPASS編集長 石井リナ
島袋: 企業は「ユーザーが多いから新興するInstagramや (Instagram Stories)を今すぐはじめてみよう」というわけにもいかないと思うんです。企業やブランドが、そこに住んでいる世代やクラスタのユーザーとコミュニケーションをとりたいか(とるべきか)、否か、に分かれてくると思います。僕らのブランドとしてゴールを見据えたときに、どのようなコミュニケーションプラットフォームを選択するのか。
キリンの場合、ビールであればそうした若年層特化型のSNSプラットフォームは選択しないけれど、「午後の紅茶」のような10代20代とコミュニケーションをとる意向のあるブランドであれば、実施の検討をする、とかそういった話になってくるかと思います。
目良: 各プラットフォームの中でも、SNOWにあるような企業コラボレーションのスタンプ機能などを導入するようなケースがやりやすいのかなと思うのですが、いかがですか?
島袋: そうですね、プロモーションの形としては分かりやすいですよね。
石井リナ: プロモーションとしてはありだと思うのですが、企業が長期的にSNSを活用したいのであれば、オーガニックな運用が1番かなと思います。今回お話した「SnapchatライクなSNS」については、オーガニックな運用に関してもチーム内のノウハウ共有が難しいんです。今までは、他社の企業事例とかってInstagramやFacebookで投稿を見れると思うのですが、1日で消えてしまうので、他社がどんなことをしていたか追いきれないんですよね。
株式会社SnSnap CMO 目良慶太
目良: なるほど、いままでのSNS運用と違い、コンテンツが消失するプラットフォームだから情報共有も難しくなっていくということですよね。
石井リナ: なので、そこはCOMPASSを見てください、という感じなのですが(笑)企業の中では、SNS運用の体制をきちん整えて、今までよりリソースを割かないといけないかなとは思います。
他社事例はそこまで追わなくてよい?
島袋: 話にあがっていた、他社事例に関しては、それが必ずしも自社の課題解決に繋がるとも限らないので、あまりむやみやたらにトレンドを追わなくてもいいのかな、とも考えているんですよ。自分たちの課題を置き換えたときに、親和性があるところに関しては、情報収集するくらいでいいと思います。ただ、SnapchatもSNOWもInstagram Storiesも、全て私はダウンロードしたり、使ったりもしているので、そうした動きはマーケターとしては、少なからず必要だと思いますけども。
石井リナ: あとは、企業トレンドを追う前に、ユーザー同士のコミュニケーションなど、ユーザートレンドを追うべきですよね。2015年の初めころにInstagramセミナーなどで各所を回っていたときには、Instagramって何でも載せられるんですよ、とお話していたんですね。だけれども、ユーザーが増えていく中で、ユーザー間同士の中で「なんとなく」のプラットフォームのカラーや暗黙のルールができていくんですよね。例えば、なるべく綺麗な写真を載せたいのが、Instagramなんだ、などという風に。なのでプラットフォームの中でも使い方が変わっていくので、その動向もしっかり追っていくべきだと思いますね。
目良:では、ユーザートレンドを追う中で、この人はフォローしておいた方がいいとかっていう人はいますか?
石井リナ: Snapchatも早かったですけれども、Vineインフルエンサーのけみおくん(IG:@mmkemio Snapchat:@mmkemio)とかは面白いですよ。彼を見ていると若い子たちの使い方もなんとなく雰囲気がつかめると思います。芸能人ですけど、青山テルマちゃんのStoriesも根強い人気ですよね。
https://www.instagram.com/p/BOZNO3XDtNN/?taken-by=mmkemio
石井リナ: ちなみに、インフルエンサーマーケティングについて、島袋さんはどのように考えられていますか?
島袋: そうですね、これも一般論として、インフルエンサーってどうしても使わざるをえないシーンが結構あると思っています。多くの企業の宣伝担当さんは、情報発信をすることが仕事なので、ある程度、量的にリーチを取らないといけないというシーンはあると思うのですが、機能・役割を割り切って考える必要があるなと。自分ごと化や友だちごと化をして情報発信していくようなコミュニケーションプランも合わせて考えなければと思いますね。
石井リナ: 参考になります!
ブランドとの「時間共有の機会」を創る
目良: では、この辺りで参加者の方々からの質問も受けていこうと思います。
参加者A:コスメブランドで働いていたことがあるのですが、特に若年層の女の子たちは写真撮影をする際に、プリインストールのカメラアプリではなく、(加工機能のついた)カメラアプリで撮影する子たちが多いというような印象でした。Camera360やSNOWなどが人気なカメラアプリだと思うのですが、仕上がりがとても綺麗に撮影できるようなそうしたアプリ類を含めて、今後どのようなトレンドで移り変わっていくのかなと考えられていますか?
島袋: SNS上で、素顔を出すことにOKな人と、そうでない人って、結構別れていますよね。投稿の際も、公開範囲を限定する「鍵付き」にして楽しんでいる人もいると思っていて、そういう部分では、若い女の子たちと、そうした写真加工アプリの親和性はかなり高いと思っています。コスメブランドや飲料メーカーが、そうした加工アプリを外部のパートナーとのアライアンス(広告契約)だけでなく、ブランド自体がライフスタイル系アプリ出すという施策の検討も、ユーザーとのコミュニケーションの時間のためになるのであれば良い施策なのかなと。売上という指標だけでなく、ブランドとの「時間共有の機会」を創る。今後企業のマーケターは、そういう柔軟な発想でお客様に提案できていったらいいですよね。
石井リナ: 携帯のレンズで撮影したセルフィーを、生の状態で、SNS投稿する人は本当に少なくて。必ずどこかしら加工している可能性が高いんですよね。Instagram StoriesですらSnapchatで撮影したものを投稿し直している女の子も多いほどです。ただ、SNOWを含めた加工アプリで撮影してもその投稿をするのは、TwitterやInstagramなどの「SNS」が一般的ですよね。なので、オーガニックにSNSは運用をしてコミュニケーションをとっておきながら、イベントなどやプロモーション時期だけ、加工アプリを活用するなど、目的や役割に応じて棲み分けをしてもいいのかなと思います。
SNSはカスタマーサポートの役割も果たしていく
目良: では、次の方のご質問にいきましょう。
参加者B:IT系の広告代理店でSNSコンサルタントをしております。そこで企業のSNSプロモーションをする上でのKPIはどのように考えられているのか教えてもらえればと思います。
石井リナ: SNSにおけるKPIはもちろん、目的にもよると思いますが、エンゲージメント率で考えるケースが多いかなと思います。ダイレクトマーケティングで使いたいという様なお話をされると、SNSはそういう用途で、積極活用すべきではない、という話をしますね。
参加者B:では、消えるSNSに関しては、どのように成果をおいたらよいでしょうか?
石井リナ: そうですね、こちらも基本的にはユーザーとのエンゲージメントではないでしょうか。もちろん自分たちが、どういう人たちに対して、どう思われたいから、こういうコンテンツを投稿していくと設計した上で、そのターゲットのユーザーと、どれだけコミュニケーションを深められたかというところを追うべきだと思います。海外が多いですが、各企業Storiesでコミュニケーションを双方向にとっている事例も増えてきています。そうした事例を見てもStoriesでインタラクティブなコミュニケーションは可能かなと。
島袋: 個人的には、SNS運用のKPIは、エンゲージメントというところはもちろんですが、Twitterであれば何百、何千リツイートというようなホームラン的な投稿が何本でました、というようなところは定量的に分かりやすいと思います。ただ、本質的には、そういった「バズ目的」ではなく、お客様との日常的な双方向コミュニケーションがSNSの本来の目的です。
また、今後のSNSの役割の個人的な未来予測ですけど、キリンの場合だと、ペットボトルや缶に、お客様相談室の「電話番号」が書いてあるんですね。弊社にかぎらず、多くの企業が行っている、お客様からのお問い合わせなどの「電話」で行なっているカスタマーサポートも、今後は、それがLINEでAIチャットや、TwitterやFacebookのDMになるかもしれないですし、エンゲージメント以外の役割も担っていく時代が来るのかな、とも思っています。
島袋さんにご協力頂き、マーケター向けに行った今回の第1回目の「COMPASS Seacret Salon Vol.1」。次回は3月頃に開催予定です。是非次回のイベントの様子も配信予定ですので、お楽しみに!
Interview photo:ENO SHOHKI