ストーリーズビジネスを展開するluteは6月、韓国のHIPHOPレーベルとの業務提携を発表した。日本で昨年、TWICEが女子中高生を中心に爆発的なヒットを生み、今年6月アメリカで防弾少年団がビルボード音楽チャート1位になるなど、韓国音楽が世界的に流行っている。なぜいま韓国が熱いのか?後編では代表の五十嵐弘彦氏に現在の韓国ブームを紐解いてもらった。前編はこちら

 

――前半では、luteの目指す世界について伺いました。そこで、音楽エンタメ業界を構成しているのは「メディア・レーベル・演者」であり、それを自社で作っていく、というお話がありました。今回、韓国のヒップホップレーベル・Hi-Lite Recordsと業務提携して日本でのアーティスト活動をバックアップすると発表されましたが、それも紐付いてくるのでしょうか?

そうですね。それは3つ目の演者の部分にあたります。これまでluteでは、日本のインディーズレーベルとの関係を築いてきました。そのうえで、次に今圧倒的に面白いのが韓国なんです。そもそも日本は世界で2番目に大きい音楽市場を持っています。なので国内のアーティストも国内市場だけでやってこれている、という前提があります。

 

一方、韓国国内の音楽市場は大きくなく、韓国アーティストはアメリカや日本といった国外のデカイ市場を最初から視野に入れています。先日、韓国男性アイドルグループの防弾少年団がビルボード・チャートの1位になったというニュースもありましたが、韓国アーティストはいかに海外市場でヒットを狙っていくかを常に考えているので、アメリカのチャートにかなり食い込んでいるという背景です。そういった流れがある中で、ここ最近韓国のHIP HOPなどのインディーズシーンがかなり盛り上がってきているんです。

lute代表の五十嵐弘彦氏(編集部撮影)

――韓国ブームは度々起こっていますが、昨年からティーンを中心に波が来ていますよね。こういった流れはどう見ていますか?

「また1つフェーズが変わったんだな」と思っていますね。1弾目のブームは「冬のソナタ」などの韓国ドラマブームで、どちらかというと富裕層に流行り、2弾目は、KARAや少女時代などのK-POPで若者を中心に。最近のブームはその第3弾の流れがきているな、と思っています。それがインディーズシーンだったり、ファッションといった文脈です。僕たちはこの流れを、「韓流サードウェーブ」と呼んでいます。

 

それがK-HIP HOPというストリート発祥のカルチャーのムーブメントですね。HIP HOPはもともと黒人が生んだ音楽カルチャーですが、今や世界的なブームとなっています。そのブームは音楽だけにとどまらず、音楽から派生しライフスタイルの一つとなっています。例えば、ファッションでいうとルイ・ヴィトンやバレンシアガといったハイブランドがスニーカーを出しているというのも1つの流れであったり。

 

そのカルチャーにすごくフラットに韓国の人達が入ってきてるっていうのが韓流サードウェーブの起こりですね。他にも韓国ではインディペンデントなアパレルショップやZINEやコーヒー屋なんかも急速に流行っていて。若者たちの「やりたい、やろう」という意思とスピードが早いのでストリートカルチャーには勢いがありますね。

 

――確かに最近の韓国は若い方たちがアパレルショップや本屋さんなどを経営する話をよく聞きます。世界の時流を読みながら、オリジナルにしていく力が強いんですね。反対に、韓国の若者たちの日本のカルチャーへの興味関心は高いのでしょうか?

興味は持ってくれていますが、日本側がカルチャーをグローバルに発信できていないという現状があります。あっちの若者と話すと、日本のHIPHOPで知っているのは20年くらい前までなんです。例えば、m-floとかKICK THE CAN CREWとか。アニメだとカウボーイビバップくらいまでで。そういう状態なんですけど韓国のレーベルに「一緒にやりましょう」って話にいくと「日本の活動超やりたい」って面白がってくれて。

 

なので韓国側も日本市場や日本のカルチャーに興味はある状態なのですが、日本の大手のレーベルだと制約も多く、スピード感を持ってやっていこうというのはなかなか難しい現状もある。なのでうちみたいなスタンスの会社と組みたいと思ってもらえてるのはありますね。

業務提携を行うHi-Lite Recordsの所属ラッパー・Reddy (右)lute株式会社とエージェント契約を締結した韓国女性ラッパー・Jvcki Wai(ジャッキーワイ) (左)(lute提供)

――確かにストリートカルチャーから派生したムーブメントだからこそ、よりスピード早く様々なメディアを駆使して展開していくことが必要ですよね。どうして日本のカルチャーがうまく輸出されていないのでしょうか?

日本はもともと音楽市場が大きいので国外に輸出しなくてもやっていけたんです。でも、それはCDが売れていた時代の話で。サブスクリプションサービスが成長してきたこの10年間で、音楽ビジネスの在り方は変わってきていて、これまでは音楽ビジネス=音源ビジネスだったことが、今後細分化していくと思っています。

 

例えば、アメリカの音楽市場は音源はここ10年間で売り上げが下がっていますが、ライブは盛り上がっている。アーティストへのスポンサードやブランド力を活用してのマーチャンダイズビジネスも異様なほど伸びています。CDの売り上げが高いアーティスト、グッズがとにかく売れるアーティスト、ライブで集客ができるアーティスト……と、マネタイズの形はアーティスト本人の資質に適応化されていく時代。

 

まだまだ日本ではアーティストに最適化したマネタイズのやり方は確立されていません。そのビジネスモデルを、若者に熱狂を産みやすい日本や韓国のアーティストとともに作っていけたらと思っていますね。

日本のプロデューサー・PARKGOLFと韓国女性ラッパーJvcki Waiのコラボ楽曲(lute制作)

 

――例えば、アーティスト自らグッズを作ってWEBで販売したり…など、SNSを通してアーティスト自身の趣味嗜好が発信できる時代だからこそ、新たなビジネスモデルが生まれる時代ですよね。一方でアーティスト自身が自由に発信できる時代の今、アーティストをマネジメントすることはどう考えていますか?

luteが定義するマネジメントとは「ビジネスパートナーとしてアーティストと対等な関係を築くこと」です。契約で縛ってアーティストを管理したり押さえつけるのではなく、対等にお互いに話し合ってゴールイメージを決め、一緒に走ることを目的にする。

 

グローバルな観点で見ても、やはりアーティストとマネジメントはそういう関係性なんですよね。ちゃんとお互いに理解した上で、パートナーとして走ってくことをやるべきだと思っています。一方韓国ももともとは契約できつく縛るというやり方が多かったんですが、最近は変わって来ていますね。理由としては大手が輩出するアーティストだけではなく、インディーズレーベルが韓国音楽産業の中核をなす構造になってきているから、というのはあります。

 

――なるほど。

目指す方向を決めてアーティストによって最適なマネタイズを確立していくことにより、luteが目指す「メディア・レーベル・演者」で構成する「アーティストビジネス・カンパニー」という世界を作ることに繋がっていく。

 

その先には、luteと同じビジネスモデルで全然違う色のアーティストがいる会社がたくさん出てきて、さらには皆ちゃんと食えていて、結果、日本の音楽業界が元気になったら嬉しいなって思ってます。

 

luteが先陣を切って、音源ビジネスだけではなく、こういうやり方もあるんだよっていうことを見せていきたいですね。

 

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保科 さほ
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保科 さほ

1990年生まれ、鳥取県出身。 IT業界でデザイナー・広報→エンタメ業界でタレントマネージャーを経てフリーライターに。ガールズカルチャー,サブカルチャーを軸に企画・ライティングやクリエイティブディレクションを行う。 エモかわいい女の子のスナップメディア・東京女子物語主宰。https://twitter.com/sahohohoho