1964年に徳島で創業。ポカリスエットやポカリスエット イオンウォーター、カロリーメイトなど人々の健康維持、増進をサポートする食品、飲料を世に送り出してきた大塚製薬。同社はこれまでCM以外にもさまざまなプロモーション活動を展開してきましたが、新たなプロモーションを展開しています。
そのプロモーションの名は「FLOWER DRY ALERT(フラワードライアラート)」。イオンウォーターが持つ”渇いたからだを日常的に潤す”というコンセプトのもと、フラワーアート・ユニット「plantica(プランティカ)」監修のフラワーアートと音楽家 蓮沼執太氏による楽曲を通して、その時、その場所の空気の”乾き”を感覚的に知れる、というもの。
2月2日にWebサイトが公開されるやいなや、「デザインが綺麗」、「サイトが可愛い」という反応が起こるなどSNS上で話題に。また、2月17日〜28日の期間限定でTENOHA DAIKANYAMAの中庭スペースに、FLOWER DRY ALERTの世界観をリアルに体験できるフィールドも用意するなど、リアルとWebをうまく連動させたプロモーションとなっています。
同社はなぜ、このプロモーションを始めようと思ったのか。この取り組みの仕掛け人である、大塚製薬株式会社ニュートラシューティカルズ事業部の槇美保子さまとフラワーアートを監修したplanticaの大栗忠久さんに話を伺ってきました。
水分補給の必要性を女性に訴求するために
— このプロモーションを始めようと思った、きっかけは何だったのでしょうか?
槇:FLOWER DRY ALERTを始める前に、ポカリスエットで「tenki.jp」と共同で秋冬の水分補給の必要性を5段階に分けて指数化した“からだ乾燥指数”というものを作り、天気と連動した水分補給の提案をしていました。
一方、イオンウォーターは女性に訴求していきたい商品だったのでなにか別の切り口はないかと考えていたところ、花の乾燥と湿度を絡めて水分補給の必要性を提案するのは面白いのではないか、と思ったのがきっかけですね。
— 女性にとって、乾燥対策は冬の関心ごとですよね。
槇:夏は気温も高く、熱中症になりやすいため自然と水分補給の必要性を感じると思うのですが、冬場はなかなか水分補給しようと思わない。でも、実際は空気が乾燥しているため水分は必要なんです。フラワーアートを切り口にして興味を持ってもらえたら、秋から冬の乾燥と水分補給への意識を高めてもらうきっかけになるのでは、と思っていました。
— 今回、Webだけでなくリアルも含めた取り組みになっていますが、なぜリアルな場にも展開していこうと思ったのでしょうか?
槇:乾燥や天気は日常生活の中で実際に体感するもの。そのためWebだけで展開するのではなく、日常で身近に感じられるようにリアルな場も作っていこう、となりました。
TENOHA DAIKANYAMAを選んだのは、私たちが訴求したい20代〜30代の女性がよく足を運ぶ場所で、なおかつフラワーアートのビジュアルが活きると思ったからです。
TENOHA DAIKANYAMA
実際に触れて 感じる花とデジタルの融合の先に
— 実際にWebサイトとリアルな場のディスプレイを拝見して、フラワーアートがすごく美しいな、と思いました。
大栗:もともと自分たちは生花をベースに、映像やテクノロジーといった新たなレイヤーを加えた“お花”のアートを手がけていて。今回はお花をデジタル化することで湿度を感じさせるコンテンツにしたのですが、やっぱりお花は生で見てもらったり、触ってもらったりすることで良さを感じられるもの。その想いもあって、リアルな場で生のお花をデジタルと融合させた取り組みにしました。
— なぜ、お花だったんでしょうか?
槇:人間と同じでお花も水分がなければ生きていけない。そこが非常にリンクしているので、お花を活用した施策を展開することで、乾燥や水分補給をイメージさせられれば、と思ったからです。
— こだわった部分はどこでしょうか?
大栗:今回、押し花を使ってフラワーアートを作っているのですが、トータルすると3000枚くらいのお花を自分たちで押していて。それを一枚一枚アクリル板にのりで貼り付け、ビジュアル化しているのでかなり時間はかかりましたし、すごく大変な作業でしたね。
— リアルな場に展開してみて、反応はいかがでしたか?
槇:休日はTENOHA DAIKANYAMAに用事がなくても、表にある看板を見て興味を持ち、ディスプレイを撮影して帰る人は意外と多かったですね。あとはTwitterやInstagramで「ポカリスエットのイベントがやっている」という投稿もありました。
— 実際に訪れてみて、細部まで世界観が統一されているな、と感じました。
大栗:それは細部までこだわりました。普段、TENOHA DAIKANYAMAは黒がメインなのですが、細かい部分までFLOWER DRY ALERTの色合いを取り入れてもらっています。
リアルな場を持つことでWebへの送客効果も
— この取り組みの概要を伺っていて、確かにお花は綺麗ですし女性にリーチすることもできるなと思ったのですが、肝心のイオンウォーターを想起させにくいのではないか、とも思いました。
槇:確かにそうですね。ただ、今回は購入につなげるために行った施策ではなく、「乾燥と水分補給=イオンウォーター」と想起してもらうための施策として始めました。イオンウォーターの認知度はそれなりにあるのですが、一般的には“ポカリスエットの薄い版”というイメージが強い。
まだまだイオンウォーターのことを知ってもらえていないので、そこを知ってもらうためのきっかけになればいいな、という思いがありますね。
— 購買ではなく、ブランドを構築することが目的だったと。
槇:大塚製薬のことは多くの人が知ってくれていると思うのですが、当たり前ですが“お花”のイメージを持っている人はいないと思うんですよ。だからこそ、お花とイオンウォーターの意外性のある組み合わせをお見せすることで、お花を見たときに乾燥や水分補給、イオンウォーターを想起してもらえるといいですね。
— 最後に今後の展望がありましたら教えてください。
槇:今回は冬場での取り組みになりましたが、今後は夏場での水分補給の必要性を訴求する取り組みもできたらな、と思っています。また、リアルな場を持つことはWebとの相乗効果を生み出しますし、相互送客効果もあるので、今後も積極的に展開していきたいと思います。
—取り組みの裏側が知れて良かったです。今日はありがとうございました!
水分補給の必要性を訴求するため、フラワーアートと音楽でその日、その場所の湿度を知らせる施策をWebとリアルの両方で展開した大塚製薬。Web上で展開されるコンテンツが飽和してきているからこそ、今後、リアルな場での体験を提供していくことが他社との差別化につながっていくのではないでしょうか。
Interview photo:ENO SHOHKI