注目のマーケターらをゲストに迎えるセミナーイベント「COMPASS Secret Salon」。第4回は「オフラインイベント×SNSによるブランド認知拡大施策とは?」をテーマにトークセッション。今回登場するのは、ソフトバンクでマーケティングを担当する坂口卓也さんが登場。モデレーターはCOMPASSの運営元SnSnapの西垣雄太CEOが務めました。
対談の切り口となったのは、ソフトバンクも一部スポンサーとして昨年夏に横浜みなとみらいで開催されたポケモン社主催の「ピカチュウ大量発生チュウ!」。世界中で話題となったARを活用したスマートフォン向け位置情報ゲームアプリ『Pokémon GO』も連携し、来場者に大好評だったとか。これらを仕掛けた坂口さんは「サービスとハードの均質化が進んだ結果、“面白い体験”を提供するのが重要になる」と語ります。その心とは--。
ソフトバンク株式会社 坂口卓也さん
新卒でOA販売会社の営業を経験の後、ソフトバンクのグループ企業に転職。約6年勤務し代理店営業〜情報システム責任者を担当。その後数年間、個人事業主として複数のベンチャー企業のコンサルティングに従事し、2012年よりソフトバンク(当時ソフトバンクモバイル)に入社。デジタルマーケティング技術やブロックチェーン技術の研究開発に携わりつつ、Niantic社の位置情報ゲーム『Ingress』、『Pokémon GO』を活用したマーケティングプロモーションを推進。
リアル×デジタルなイベント
西垣:「ピカチュウ大量発生チュウ!」では、ソフトバンクとSnSnapで一緒にO2Oマーケティングの施策を実施しました。
坂口:2014年から毎年開かれているポケモン社主催の街型イベントは、大量のピカチュウが街中に登場してパレードを行ったりします。街中でピカチュウと触れ合い、写真撮影を行って楽しむイベントです。そんな中、昨年のイベントでは『Pokémon GO』と初めて連動しました。イベント開催中、みなとみらい全域で累計300万人が来場し、ソフトバンクブースには#SwingSnapの撮影参加者だけでも7000人以上にご来場いただきました。
西垣:リアルイベントにデジタルコンテンツが連動しているのが特徴的ですね。それだけにネットワーク環境の対策が重要だったと思います。人が密集するところではネットワーク環境が不安定になりがちです。スマホアプリとの連動イベントだと、快適なネットワーク環境が求められます。
坂口:ソフトバンクは『Pokémon GO』のスポンサーでもありますので、臨時の移動電波車を導入し、Free-Wifiも設置、新たに基地局も複数設置し、万全の状態で迎えました。結果的に、他キャリアユーザーのネットワーク環境が不安定な中、ソフトバンクのユーザーは安定して通信できました。イベントに来場された方からも、「ソフトバンクでよかった」との声を多数いただいています。
西垣:ネットワーク環境がしっかりされていたことで、お客様の満足度もすごく高かったのですね。
坂口:「ピカチュウ大量発生チュウ!」は非常に大規模なイベントです。全国、さらには海外から参加された方もたくさんいます。イベントを楽しみに遠方からやって来た方が、ネットワーク環境の問題でイベントを楽しめないと非常に悲しいと思うので。ネットワーク環境を支えることでお客様に満足していただき、本当によかったです。
多くの来場者で行列ができるソフトバンクブース
参加・体験によるコミュニケーション
西垣:ブース出展について伺います。コンセプトは「『参加・体験』を起点としたコミュニケーション」だったそうですが、どのような思いが込められたのでしょうか。
坂口:「ピカチュウ大量発生チュウ!」そのものに大きなコンテンツ力があります。何千ものピカチュウが街を歩いているわけですから。そんな中、ただチラシを配ったり、会社の紹介をするだけでは、お客様には全く響かないのかなと。そこで、思い切って楽しい“体験”をしてもらおうと考えました。SnSnapの#SwingSnapを導入したのも、楽しい“体験”をしてもらえると思ったからです。結果的に非常に多くのお客様に楽しんでいただくことができました。
西垣:楽しい“体験”をしてもらうということで、具体的にはどのようなキャンペーンを行っていたのでしょうか。
坂口:キャンペーンの流れとしては、「受付」→「撮影」→「SNS投稿」→「印刷」→「QR読み込み」→「アンケート」→「景品お渡し」です。#SwingSnapの撮影条件は、ソフトバンクのLINEと友達であること。友達登録してくれたお客さんに対しては、撮影を行い、それぞれのSNSに投稿をしてもらうことで、#SnSnapから記念カードを印刷できるようにしました。さらに、カードの裏に記載されたQRコードを読み込み、アンケートに回答することで、ポケモンのぬいぐるみやTシャツといった景品が当たる仕組みを作りました。
西垣:LINEの登録、そして撮影データをSNSに投稿するという手間があるので、イベント前には不安もありました。結果的には、ピカチュウのコンテンツ力と、“体験”の提供により、非常にたくさんのお客様に楽しんでいただくことができました。
坂口:結果的に、1分間に1組以上のお客様に撮影サービスを楽しんでいただけました。撮影を行った来場者のうち67%は、撮影するために新たにLINEの友達登録をしてくれました。非常に良い結果が得られたのではないかと思っています。
“体験”の提供で“感動”を生む
西垣:ソフトバンクは、普段から店頭で『Pokémon GO』と連動したコンテンツ展開をされていますよね。
坂口:ソフトバンクは2016年から『Pokémon GO』のオフィシャルパートナーを務め、『Pokémon GO』のゲーム内にもスポンサードロケーションとして登場しています。「ピカチュウ大量発生チュウ!」が実施された8月は、全国のソフトバンクショップも連動してピカチュウのソフトバンクオリジナルの学習帳がもらえるプロモーションを行っていました。
西垣:日頃、携帯ショップに立ち寄る機会はほとんどないと思います。ところが、位置情報を利用したゲーム内で携帯ショップが主要スポットとなることで、多くの方が店頭に立ち寄ってくれるのですよね。
坂口:正直なところ、ゲームをプレイしている多くの方はショップの前までしか来てくれません。そのため、中に入ってアンケートに答えてくれた方には施策に応じて『Pokémon GO』に関するアイテムや、学習帳など家族向けのコンテンツをプレゼントするなど、自然な流れでショップの店先から一歩店内へ入っていただけるような施策を打っています。
西垣:普段から店舗の中でも“体験”をつくっておられるのですね。
坂口:ソフトバンクは、日本の携帯キャリアの中で最初にiPhoneを扱い始めました。今ではどのキャリアでもiPhoneは取り扱われています。現在は、キャリア間の料金差もほとんどありません。つまり、いわゆるサービスとハードの均質化が進んでいて、差別化が非常に難しい状況です。そこで、重要なのが「面白い体験」の提供だと考えています。ソフトバンクのお店やブースなどで「面白い体験」を提供し、そこに感動を生じさせる。感動の積み重ねによって、ソフトバンクのブランディング、イメージアップを図ることが大切かなと。
西垣:ありがとうございました!