こんにちは、石井リナです。
ファッション業界と言えば、イノベーションが起きていないと言われるほど、昔からの習慣やしきたりが多くあります。ファッションブランドが行う「展示会」もその1例です。今回は、展示会における受発注業務の効率化を実現したターミナルの代表、瀬戸恵介さんにお話を伺います。なかなかIT化が浸透しないファッション業界の中で、どのようにサービスを浸透させていったのか、何が実現できるのか、今後目指す未来などをお伺いしました。
ブランド・バイヤー双方良しをテクノロジーで実現
石井リナ:早速なのですが、ターミナルのサービスである「TERMINAL ORDER」(ターミナルオーダー)で出来ることを教えて下さい。
瀬戸さん:展示会では、主にブランドとバイヤーが、今後製品化する予定のアイテムを介して受発注のやりとりを行っています。従来の方法では、受発注のやりとりが紙面を用いたアナログなものであったため、多くの時間や労力を割いてしまっていたり、オーダーや集計のミスが多発していたりしていたんです。展示会時の受発注業務の効率化をインターネットを使って実現しているのがTERMINAL ORDERです。
石井リナ:私も実際に展示会で利用させて頂いたのですが、安心感もありますし、スムーズにオーダーも出来るので、とても便利に感じました。
▼TERMINAL ORDERアプリイメージ
瀬戸さん:ありがとうございます。TERMINAL ORDERを使用することによって、ブランドの方々にとっては大きく3点メリットがあります。1つ目は、業務効率化による人為的ミスや時間や労力など、コストの削減です。2つ目は、展示会のレポートも管理画面から排出することが可能なため、売上の改善に活用できるデータが簡単に入手できること、3つ目はTERMINAL ORDERというプラットフォームを利用して、新規バイヤーの獲得が期待できるということです。
▼管理画面イメージ
石井リナ:ブランドにとっては今まで紙に商品番号や、価格などを自分たちで記載しながら接客していたものが、最初から来場者がアプリで行ってくれるので、データ管理出来ますし、トラブルも減りますし、有り難いですよね。
瀬戸さん:それだけではなく、主な来場者であるバイヤーの方々にとってもメリットはたくさんあります。1つ目はTERMINAL ORDERで様々なブランドに出会えるということ。2つ目はPCやスマートフォンなど、どこからでも商品の確認が出来るということ。さらにはデジタル管理によって、簡単に正確に管理出来るので、集計作業や計算ミスがゼロになるということが3つ目です。
石井リナ:ブランドにとってもバイヤーにとっても双方向に好まれる環境をテクノロジーで実現したというのは素敵なことですよね。
導入により、ブランドの売上は増加傾向に
石井リナ:展示会って、今じゃないと購入できないという、その場の雰囲気や勢いで、オーダーすることも多い様な気がします。いつでもオーダー出来ることによって、ブランドは売上が下がったりはしないのでしょうか?
瀬戸さん:売上に関しては、むしろ上がっているブランドが多いです。例えば、発注のキャンセルが起こってしまうと、ブランドからすれば積極的に運用しづらくなってしまうと思うので、そのようなある種「信用」に関わってくる部分に関してはかなり注意を払っています。
石井リナ:ブランドにとっても導入するメリットの多いサービスだと思うのですが、マネタイズはどのようにされているのでしょうか?
瀬戸さん:主なプランとしては、システムの利用における初期費用と月額使用料を頂いています。その他にも、新規取引の促進を目的としたBtoBのPRプランなどもあります。
TERMINAL ORDERがないと手間がかかると思われる?
石井リナ:TERMINAL ORDERを導入した際の、ブランドからの声はどのようなものがありますか?
瀬戸さん:取引規模が大きなブランドですと、展示会毎に派遣スタッフを20人ほど雇用して、まるで受験会場かのごとく、紙面の注文票をひたすらパソコンにデータ打ち込みする作業が発生していたそうなのですが、その作業が単純に必要なくなったという声も頂きました。また他にも、人為的ミスで多くの損失を生むようなことがなくなったという実例もありました。
石井リナ:売上の計上もきちんと出来るし、人件費カットも出来るということですよね。エンドユーザーであるバイヤーからの声はどうですか?
瀬戸さん:「今まで紙面で行っていた作業がインターネット上で済むので、商品を撮影するためにカメラを持ち歩いたり、ラインシートを大量に持って帰ったりせずに済むので感動しました!」という声を頂きました。
石井リナ:私も初めて利用したときに感動しました!これが普及すると、TERMINAL ORDERが入っていないブランドの展示会の通常のオーダー方法が手間に感じそうですよね。
瀬戸さん:そうですね。あと2、3年かけてこのサービスを当たり前のものにしてブランドとバイヤーにとって無くてはならないものにしていきたいですね。
IT業界出身だからこそ実現できた世界
石井リナ:そもそもどうしてこの事業を立ち上げようと思われたんですか?
瀬戸さん:私自身はもともとIT畑の出身で、前職ではTHE REAL REAL(ザ リアル リアル)というリユースサービスを日本で立ち上げて、運営していました。そこでの経験上、ファッションの展示会などを見る機会も増えていったのですが、その中で予想以上にアナログな部分を目の当たりにして、ITの力で効率化出来る部分があるのではないかと思ったんです。
石井リナ:確かに、展示会に関しては、最初からデータ管理する方が、楽ですし、正確ですよね。その他の業務にリソースも割けますし。
瀬戸さん:ただ、展示会でのブランドとバイヤーのコミュニケーションはとても大切だし、絶対にIT化や効率化してはいけない部分があるので、そのようなアナログとして残しておく部分は、意識しています。
石井リナ:ファッション業界は未だにFAXなど使って、連絡のやり取りをしていたりもするほどなので、ITの介入がなかなか難しい業界だと思うのですが、受け入れてもらうのに難航はしましたか?
瀬戸さん:もともと業界的には当たり前になっていた部分なので、サービスを提供し始めた当初はサービスを理解して、さらに受け入れて頂くまでには時間がかかりましたね。私としても100%ファッション業界の構造や知識がある中でスタートしたわけではなかったので、それらをしっかりと理解することにももちろん時間はかかりました。ただ、次第に契約が取れ始めて、今では180以上のブランドお取り引きさせて頂いているので、ようやくスタートラインに立てたのかなと思いますね。
日本のブランドを世界に発信することが使命
石井リナ:私も前職がIT系の会社で、学生の頃からファッション誌のインターンなどをしていたので、「ファッション×IT」みたいなところには注目していたつもりなんですが、展示会におけるアナログな部分などには慣れてしまって、疑いすらしなくなっていましたね。
瀬戸さん:いま、良い意味でIT業界の人たちがファッション業界をITの力を使って改善しようと活路を見出しているとと思います。テクノロジーでファッションの可能性を広げられる可能性はまだまだあるんじゃないでしょうか。
石井リナ:そうですよね、私もワクワクしています。今後の展望としてはどのようなことを考えられていますか?
瀬戸さん:本来の目的である、マーケットプレイス化構想に向けて、本格始動しました。このマーケットプレイス化構想ではブランドとバイヤーの新しい出会いの場を提供していきたいと思っています。ブランドのSNS投稿が流れてくるフィードがあるので、そのブランドの世界観や商品を見てもらうことで、バイヤーとブランドが新たな出会いを生み出せる環境を提供していこうと考えています。
石井リナ:バイイングしてもらうためにも、ブランドはSNS運用に力を入れないといけないですね。
瀬戸さん:あとは、社名の由来にもなるのですが、日本のブランドを世界に発信することに関してもマーケットプレイス化構想の中で実現していきたいと思っています。空港のターミナルのようなイメージで社名もつけたので、まさに日本ブランドと海外バイヤーとの「ハブ」”のような立ち位置になっていきたいですね。
石井リナ:素敵ですね。マーケットプレイス化構想の本格化、今後の展開にも期待していますね!ありがとうございました
実際の展示会でTERMINAL ORDERの案内をされ、使ってみて便利さに感動し、その場で取材を決めました。また、今回の取材で終始感じたことは、テクノロジーがファッション業界の中に入っていくことの難しさです。加えて、業界における、「新参者」としての努力も垣間見れるものでした。
その努力ゆえ、現在ではブランド良し、バイヤー良し、ターミナル良しという三方良しでビジネスが成り立っており、純粋に素晴らしいことだなと感じます。彼らの今後の展開に期待しながら、日本のブランドを世界に発信し続けることを楽しみにしています。
Photo:ENO SHOHKI