イベントマーケティング・SNSマーケティングの情報を発信するWebメディア「COMPASS」(コンパス)が主催するイベント「COMPASS Secret Salon」。その第3回が2017年7月6日に開催されました。
「YouTubeから紐解く10代のインサイト」と題した第1部のトークセッションには、株式会社VAZ 代表取締役社長 森泰輝氏が登壇。インフルエンサーを起用して若年層マーケティングを行う同社に、“スマホネイティブ世代”へのアプローチや、YouTuber起用した際のプロモーション事例について伺いました。
スピーカー:株式会社VAZ代表取締役社長 森泰輝
モデレーター:株式会社SnSnap CMO 目良慶太
大人気YouTuberを抱えるVAZとは
目良:まずは、VAZがどのような会社か教えてください。
森:初めて持った携帯がスマホという、21歳以下のスマホネイティブ世代に対して、どのようにリーチするかを考える、若年層マーケティングの専門会社としてVAZができました。今、インフルエンサーと呼ばれる人たちが、スマホネイティブ世代の有名人となっています。スマホネイティブ世代にとっての有名人を抱えている新たなホリプロのような会社がVAZです。
例えば、きりたんぽという、VAZの中堅クラスのYouTuberがいるのですが、彼女は今Twitterのフォロワーが16万人、YouTubeのチャンネル登録者数が19万人います。Twitterで「大阪城公園でオフ会をします」とツイートしたところ、1,000人以上のファンが集まったんです。写真を撮ったり、サインをもらったり、短い時間ですがきりたんぽに会うためにはるばる大阪に来ました。
目良:1,000人というとものすごい数ですね。チャンネル登録者数が20万人というとかなりの有名人なのではないですか。
森:若い子の間では有名ですね。VAZの株主にホリプロさんがいるのですが、ホリプロさんに聞いてもタレントのイベントを行って1,000人ものファンが集まるのは本当にトップのタレントだけだとおっしゃっていました。
ヒカルというVAZの代表的なYouTuberがゲリラオフ会をしたこともあったのですが、夜中に「今からオフ会をします」とツイートをして兵庫県の姫路駅に 何人来るかを調べた動画なのですが、人が集まりすぎて結局タクシーで逃げることになったんですよ。
目良:ヒカルくんは登録者が210万人を越えているんでしたよね。
森:そうですね。他にも、ヒカルのIPを利用したスマホゲームを出しています。ゲーム自体は大したゲームではないのですが、本人がYouTubeで僕のゲームが出ましたと言っただけで、そのゲームがApp Storeの無料アプリランキングで1位になりました。普通はプロモーションなどをするのですが、彼の場合はノンプロモーションでランキング1位を取れてしまうほどの人気があります。
スマホネイティブ世代のメインSNSはYouTubeとTwitter
目良:なぜ10代はYouTuberに夢中なのでしょうか。
森:なぜ10代がYouTuberに夢中になっているのかを説明するために、デジタルネイティブ世代以前の世代、デジタルネイティブ世代、スマホネイティブ世代の区別をする必要があると思っています。
森:私は真ん中のデジタルネイティブ世代に属しているのですが、この世代はちょうどテレビとPCを主要メディアとしていました。それに対してスマホネイティブ世代というのは、メディア利用がスマホに集中していて、テレビを見る時間とスマホを見る時間が逆転しています。
目良:私も森さんもデジタルネイティブ世代ですね。1998年前後生まれのスマホネイティブというのは今の20歳以下ぐらいを指しているのですね。
森:そうですね。彼らはスマホがメディアの中心になってしまって、テレビを見る頻度がどんどんと減ってきていますね。
森:私たちが子供の頃は暇な時間があればリビングでテレビを見ていたと思います。今の中高生に話を聞くと家族と家でご飯を食べている時はテレビを見るけど、自分たちから自主的にテレビを見る機会がとても減っていて、それよりも自分の部屋でスマホを見ている時間が増えているんです。
スマホネイティブ世代はFacebookよりTwitter、テレビよりYouTubeを主に使っています。また、現在YouTubeの人気が高まっている理由として、スマホの登場があげられます。YouTubeが登場したのは10年以上前ですが、最近になるまでは動画はPCでしか見ることができませんでした。そのため、PCとTVを比べるとTVの方が手軽に見ることができました。しかし、スマホがあるため、スマホネイティブ世代からするとYouTubeの方が手軽に見れるんですよね。
目良:なるほど。実際どのようなYouTuberが支持されているのでしょう?
森:YouTuberが登場する前のYouTubeは、音楽を聴いたりするのに使うのが主流で毎日定期的に見るコンテンツはありませんでした。しかし、You Tuberの多くは1日1コンテンツを投稿しているので、その投稿を見るのが習慣化している流れがあります。そのため、支持される人というと毎日新しいコンテンツを投稿する人になります。
森:支持される人として、他に挙げられるのは、今まで誰もやってこなかったことをやる人です。今、中高生の間で韓国ブームが来ています。そのため、VAZでは韓国語が得意な子に韓国語講座という動画を作ってもらったり、韓国の通貨など文化を紹介したりするチャンネルを作ったところ、非常に人気が出ました。誰もやっていなかったことをやってポジションを作ることも大事ですね。
目良:VAZのYouTubeで有名な方は元々どのようなことをされていたのですか?
森:様々な人がいます。例えば、元々別の画像・動画投稿サイトやSNSで有名で、YouTubeに移ってきた人もいます。現在はYouTubeで有名ですが、今までネット上で活動していなかった人もいます。その中で、他の人が持っていないものを持っていたり、才能を感じる人にYouTubeを始めることを勧めて、YouTuberになったという例もあります。
YouTuber起用の価値換算はTrueViewとの比較を
目良:では、実際に企業がYouTuberを使ったプロモーションを使う際のことをお聞きしていきたいと思います。企業はYouTuberを使ってプロモーションを行う際に、どのように人選をしているのでしょうか?
森:ただバズらせたいということであれば、とにかく派手なことをやる人を使えばいいのですが、ブランドイメージを大切にしたいなどの要望をいただけば、その要望に適した人を採用します。
目良:企業が実際にマーケターを使ったプロモーションをしたいと思った時の料金形態はどのようになっているのでしょうか。
森:ヒカルを例にしてVAZの料金形態を簡単に説明します。彼は毎日動画投稿をしているのですが、直近60日間の動画の平均再生回数を取って、その数字×5円を目安としています。彼の場合は平均再生回数が150万回ぐらいあるので、700万円近くはお金を頂いています。TrueViewよりも安いので、YouTuberが使われるのだと思います。
森:しかし、YouTuberを使う際にKPIをどう捉えるかというと、変数が多すぎて定義付けが難しい部分があります。再生数に基づいてTrueView換算した際の広告費用を考えて、YouTuberを使うことの費用対効果を考えることは可能ですが、実際に売り上げが上がるかどうかという話になると、一概に説明することは難しいですよね。
目良:YouTuberが企業さんのプロモーションをする際に気をつけなくてはいけないことに、ステルスマーケティングの問題などもあると思うのですが、そこはどのようにされているのでしょうか。
森:必ずPR表記はしますね。動画内で発表をする場合もありますが、必ず表記しているのはYouTube動画の概要欄ですね。概要欄に「○○さんの提供です。」という書き方をしています。
目良:なるほど。具体的に企業のプロモーションの事例はどのようなものがありますか?
森:爽やかさが人気なスカイピースという2人組のYouTuberが「七輪焼肉 安安」さんのプロモーションをした動画です。この動画は、安さを売りにしている安安さんで1万円分食べきるまで帰れないという企画でヒットしました。ただ、人気のあるYouTuberが「安安の焼肉は美味しい」という動画を撮るのではなく、企業のイメージに合ったYouTuberがこのような企画をする方がヒットします。
目良:企業さんに合わせた企画を立てるんですね。実際に再生数や効果はどのようなものだったのでしょうか。
森:再生数は270万回を超え、全国の安安さんで売り上げが伸びました。安安さんはこの動画を出した月に、この動画しかプロモーションを行わなかったそうですが、特に中高生の客数が増えたとおっしゃっていましたね。
目良:最後に、VAZの今後の展望についても教えてください。
森:最近考えているのは、若者を数百人単位で動かし、社会を変えるようなサービスを作りたいということです。具体的に今は、18歳から22歳までの非大卒の人たちを対象にして、就職支援やキャリア支援のサービスを行っていきたいと思っています。大学生に向けた就職支援やキャリア支援はたくさんありますが、非大卒の方に向けたサービスは今ない状態なので。
目良:そのサービスが実現すれば本当に社会が変わりそうですね!ありがとうございました!
Photo:Mariko Kobayashi