「定額制」でサービスを受けることができる、サブスクリプション型のサービスが日本でも盛り上がりを見せている。
代表的なサービスは、Amazonプライムや音楽配信のSpotifyやAppleMusicや、映像配信のNetflixやHuluだろう。
特に音楽配信のサブスクサービスは、年々会員数の増加が見込まれている。
ICT総研の予測では2017年末時点で約1780万人の利用者数が、2020年末に2270万人に増加すると予想している。
そんな「サブスクリプションサービス」だが、これらが流行るのはなぜか?また、今後どのように広がって行くと見込まれるのか、背景にある消費行動の変化と海外の事例をもとに紐解いて行く。
「物を所有しない」ミレニアル世代の消費行動の変化が背景に。
サブスクリプションサービスの流行の背景には、ミレニアル世代の消費行動が関係している。
ミレニアル世代は現在22歳~30歳の年齢で、物心つく頃にインターネットが身近に存在していた世代だ。
世界の労働人口に占めるこの世代の割合は、2020年には全体の30%以上、そして2025年にはおよそ75%にもなると予測されている。
ミレニアル世代の消費行動の特徴として、世界では2つのことが言われている。
一つは、物の所有欲が低いこと。
二つ目は、共感したものにお金を使うこと。
一つ目の所有欲の低さは、近年言われている「車離れ」など、若者の〇〇離れと国内でも度々取り上げられている。要因としては、バブル以降の大量生産大量消費の時代に生まれたミレニアル世代は、生まれた頃から物に溢れた社会を生きており、「安かろう悪かろうではなく、より自分にあったものを自分の目で選びたい」という欲求を持つ人が増えてきていることによる。
また、二つ目の「共感したものを買う」ことも、SNSを活用して情報を得ることが当たり前になっている世代にとって、一方的にプロモーションされているものではなく、口コミや投稿で「誰かがいいと言ったもの」に共感し、購買をするのが一般的な価値観になりつつある。
インフルエンサーマーケティングが爆発的に力を持ったのも、こうしたミレニアル世代の特徴があるからだ。
その中で世界では、物のストーリーを伝える「共感性の高いサービス」や生産の過程が可視化されている「透明性のあるサービス」にミレニアル世代の関心は集まっている。
そうした背景のある中、サブスクリプションサービスはミレニアル世代にとって最適化された販売手法といえる。
「利用する権利を売る」。サブスクリプションサービスの特徴とは?
サブスクリプションサービスの対義語は、プロダクトサービスという従来の「物を売る」ビジネスモデル。
サブスクリプションサービスは、「物を売る・所有する」のではなく、決まった金額を月額払うことで「利用する権利を売る」サービスだ。
例えば、TOYOTAが今年3月にサービスをスタートした車の月額利用サービス「KINTO」では、月々定額を支払うことで、トヨタの車に乗ることができる。
ミレニアル世代を中心に、車の所有欲が下がっていると言われるが、一方でカーシェアリングサービスなど「車に乗る」需要は下がっていないことに目をつけた、車のサブスクリプションサービスだ。
また、海外ではライブに行き放題のサブスクリプションサービスも登場している。
2014年にアメリカでローンチされたJUKELYは、月額25ドルで地元の音楽ライブを無制限に楽しめるサービス。ローンチ後、サービスは着実に伸びており、アメリカ国内でサービス対象地域を広げている。
Jukelyより
国内の音楽市場でも「CDが売れない」と叫ばれる中、ライブビジネスは年々伸びていると統計が出ている。
ライブハウスやフェスといった、体験と共感の場所がミレニアル世代に需要があることに目をつけたサブスクリプションサービスだ。
このようなミレニアル世代の消費行動に合わせた、サブスクリプションサービスは今後も広がって行くことが期待されている。
様々な業過に広がる国内のサブスクリプションサービス
数年前から流行の兆しを見せてきた、アメリカのサブスクリプションサービス市場。
サブスクリプションサービスの代表であるアメリカでの音楽配信市場は急成長しており、2018年には前年比16.5%増加の約9300億円規模の市場にまで成長した。
そうした中、様々な業界がサブスクリプションサービスをローンチしている。
まずは、国内で話題になっているサービスを紹介する。
初代バチェラーの久保CEOが手がける、家具のサブスクリプションサービス・CLAS
CLASより
Amazon Primeで配信されている恋愛リアリティーショー・バチェラー・ジャパンで初代バチェラーを務めた久保裕丈が代表を務めるCLASは、家具家電のサブスクリプションサービス。
月々500円からインテリアの利用・交換が行える、日本初の個人宅向けインテリアサブスクリプションサービスとして注目を集めている。
チェア500円~ローテーブル1,000円~ソファ・べッド2,000円~と月額を支払うことで自分の気分やライフスタイルに合わせて家具を変えることができる。家具を一度買ったら捨てることも交換することにもコストがかかってしまうが、所有せずいつでも交換できるという新しいライフスタイルを提案している。
おもちゃのサブスクリプションサービス:トイサブ
子どもの成長に合わせたおもちゃの定額制レンタルサービス・トイサブ。月額1580円から成長に合わせたおもちゃが届く。2015年のローンチ以降、着実にニーズを伸ばしており、大丸松坂屋との提携などサービスを拡大している。
ランチのサブスクリプションサービス:POT LUCK
月額1万2000円でランチとディナーが食べ放題のサービス、POT LUCKは30日間の中でランチ・ディナーを合わせて最大60食を食べることができる。
現在、渋谷・恵比寿・代官山・表参道エリアを中心にスタートしており、今後サービスエリアを増やして行く見込み。
Uberや楽天デリバリーなど、デリバリーサービスが浸透した都内を中心に食に関するサブスクリプションサービスは広がって行きそうだ。
今後日本でも登場しそうな海外のサブスクリプションサービス
月額でホテルの部屋に住めるサービス:Any place
2017年1月にローンチされた、1ヶ月単位でホテルの空き部屋を借りられるサービス・Any place。現在サンフランシスコとロサンゼルスで展開されており、月あたり平均1600ドルほどで部屋を借りられる。CEOはアメリカ在住の日本人で、自身が滞在中、賃貸を借りるのが難しかったことからサービスローンチに至ったという。
住居にまつわるサブスクリプションサービスは、先日お伝えした国内の事例・HafHなども出てきており、今後も盛り上がって行くことが予想される。
クラフトビールのサブスクリプションサービス:Hopsy
職人が手がける丁寧なビールとして日本でも人気を集めているクラフトビールのサブスクリプションサービス・Hopsyは2015年にアメリカでローンチされ、限られた地域での配送ながら100万ドルの投資と、400万ドルの売り上げを出している。
月額は239.99ドルで、サーバー1台とビールタンク(約2L)2本とグラス2個が届けられる。
近年クラフトビールは日本のみならず台湾や韓国でも若者を中心に人気をあつめているクラフトビール。日本での登場も期待できる。
オーガニックの生理用品のサブスクリプションサービス・Cora
先日のCES2019の記事で紹介した月経から身体状態を測るウェアラブルデバイスのように、女性xテクノロジーのフェムテック(Fem tech)が世界中で注目されている。
生理用品のサブスクリプションサービスであるCoraは、月額15ドルでBOXに入った生理用品が毎月個々人の生理用品に合わせ届けるサービス。
2019年3月にはP&Gが同じくオーガニック生理用品のサブスクリプションサービス・Kaliを買収したことでも話題となった。
https://www.instagram.com/p/BuZxkebHq0I/
日本ではまだ生理用品のサブスクリプションサービスはローンチされていないが、海外の事例が度々SNSでも話題になっており、国内でローンチされるのも間近だろう。
エアロバイクのサブスクリプションサービス・Peloton
画期的なビジネスモデルで注目を集めているサブスクリプションサービス。
家庭内で使うエクササイズバイクを販売しているPelotonは本体代金とセットでオンラインでエクササイズを受講できる動画のサブスクリプションサービスを提供。
このようなビジネスモデルは、「SaaS Plus a Box」と呼ばれ、ソフトウェアとハードウェアを同時に販売する手法だ。海外でもまで事例は少ないが、今後注目されるだろうとマイクロソフト取締役が提唱している。
月額39ドルで全米のユーザーが同時に同じインストラクターのクラスに参加でき、他の参加者と順位を競うなど、マラソンの疑似体験ができる。アメリカのミレニアル世代を中心に人気を集めている。
ジムに定額支払う従来のビジネスをテクノロジーに置き換えたサブスクリプションサービスだ。商品と定額課金を組み合わせるビジネスモデルは今後も増えて行くと予想される。
サブスクリプションサービスが広がる背景には購買ではなく体験を消費するミレニアル世代の特徴を押さえておくことが欠かせない。
アメリカでは数年前よりサブスクリプションサービスブームが来ており、様々なビジネスが登場している。
国内でもますます盛り上がって行くことが期待される。
新しいサブスクリプションサービスのビジネスの種は、体験や共感に重点を起いて考察し、その上で普遍的な需要のある分野に眠っていそうだ。