2016.8.22

8月21日に閉幕したリオデジャネイロオリンピック(以下リオオリンピック)。世界中が自国の選手の応援と、メダルの行方に熱中していた2週間あまりの時間はこれまでの五輪と変わりありませんが、実は今年から国際五輪協会によって、公式スポンサーでない企業による、オリンピックに関するSNS投稿に厳しい規制が入りました。

その内容は、自社の公式SNSアカウントでのトライアルや試合に関する投稿、#Rio2016や#TeamUSAなどのハッシュタグを含むトレードマークの使用禁止といったものです。報道関連企業以外は、五輪公式アカウントの投稿のシェアやリポストが禁止されており、非常に厳しい規制となっています。

そんな限られた企業のみ許されたSNS投稿ですが、SNSを上手く運用し自社のブランディングに活用している公式スポンサー企業もいます。その企業は、スイスの高級腕時計メーカーOMEGA(オメガ)です。

公式タイムキーパーとして“記録”がテーマのハッシュタグを投稿

1932年以来26回のオリンピック大会にて公式タイムキーパーを務めてきたOMEGAは、リオオリンピックでも全ての競技の公式タイムキーパーを務めています。公式スポンサーの中でも、タイムキーパーであるという特性を生かし、ユーザーに自身の成長を記録することを呼びかけるハッシュタグ「#RecordingDreams」を用いたキャンペーンを行いました。

五輪選手をアンバサダーとして活用

「#RecordingDreams」のハッシュタグは、OMEGAの公式アンバサダーを務める各国の選手によって、ツイッターやインスタグラム、フェイスブックにて拡散されています。南アフリカの水泳選手であるチャド・レクローは自身のインスタグラムにて、 “僕の思う自分のベストショットを載せるから、君も#RecordingDreamsをつけて子供の頃の夢をシェアしよう!”とユーザーに呼びかけています。

イギリスの陸上選手、ジェシカ=エニス=ヒルの公式Twitterより

Proud to be the face of the new OMEGA Watches ad campaign for Rio 2016. It’s time for the dream to continue! #RecordingDreams

Michael Phelpsさんの投稿 2016年7月9日

アメリカの水泳選手、マイケル・フェルプスの公式フェイスブックより

南アフリカの水泳選手、チャド・レクローの公式インスタグラムより

選手のメダル獲得をSNSでお祝い

OMEGA公式アンバサダーの選手がメダルを獲得した際には、OMEGA公式アカウントが各SNSにて、選手の記録とともに「おめでとう!」とお祝いの言葉を投稿するといったことも。公式タイムキーパーのOMEGAだからこそ出来る、選手とコラボレーションしたユニークな投稿で、選手とともにオリンピックを盛り上げています。

非営利団体とコラボレーション、オリンピックまでをカウントダウン

また、OMEGAは若者と教育をサポートする、リオデジャネイロを拠点とした非営利団体、「VIVA RIO」とパートナーシップを結んでいます。OMEGAは2015年8月から、リオオリンピックへのカウントダウンキャンペーンとして、「OMEGA VIVA RIO」と称した12個のチャリティー活動を12ヶ月に渡って行いました。
図1
OMEGA VIVA RIO公式サイトより

各活動については、OMEGA VIVA RIO公式サイトにに詳細を確認することができます。

ハッシュタグ投稿で募金キャンペーン

SNSユーザーにチャリティー活動への貢献を促進させるため、SNSに画像を投稿すると、活動に寄付できるキャンペーンも同時に行いました。

2015年8月3日から2016年8月5日までの期間に、ユーザーがインスタグラム、ツイッター、フェイスブック、Weibo、WeChatにハートシンボルの画像をハッシュタグ#OMEGAVIVARIOとともに投稿すると、一投稿につき16セント(およそ15円)がOMEGAによってViva Rioの活動に寄付される、という仕組みです。

アメリカの競泳選手、ナタリー・コーグリンの公式ツイッターより

イギリスのプロゴルファー、ローリー・マキロイの公式ツイッターより

こちらのキャンペーンもまた、多くのスポーツ選手たちによってSNSにて拡散されました。そしてそれを見たユーザーによって、ツイッターを始めとするインスタグラムやフェイスブックなどのSNSに、ハートシンボルの写真が投稿されました。

図2

Instagramより

インスタグラムでは1,200件以上の投稿がなされ、ツイッター、フェイスブックは目視での確認となりますが、ツイッターはおよそ100件、フェイスブックでは約500件と、Weiboなど他SNSを考慮して少なく見積もっても2,000件は投稿されていると推測できます。非営利のプロモーションとしては、高い拡散力を持ったものだったのではないでしょうか。

さいごに

公式スポンサーでない企業のSNS投稿に規制が敷かれた一方で、公式スポンサーの企業は、オリンピックという世界中の人々の関心が集まるタイミングを活用し、有効的に情報発信が出来ている事例です。

今回のOMEGAのプロモーションが優れているのは、スポーツ選手というインフルエンサーと連携し、ユーザーをキャンペーンに上手く巻き込むことができた点です。OMEGAが発信したものをインフルエンサーが拡散、それを見たユーザーがキャンペーンに参加(=SNS投稿)すると同時に、相乗的にさらキャンペーンを拡散するという一連の導線が非常に巧みです。

“選手を応援する”“ことや、“チャリティー活動に貢献する“といった、慈善的な目的で参加できるキャンペーンだったことも、大きな反響を得られたポイントではないでしょうか。4年後の東京オリンピックでは各企業がどのようなSNSを用いたキャンペーンを行うのか、今から楽しみなところです。

 

text:里見  香麟
edit:新國  翔大

Written by
COMPASS編集部
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