画像:Runway Riotより
2015年末、オーストラリアの人気インスタグラマーEssena O’Neill (エッセナ・オニール) さんが「本当の自分を見失ってしまった」ことを理由にSNSを辞めたことが世界的なニュースになったのが記憶に新しいですが、セレブリティーを中心に、マスメディアやSNSに露出される「作られた世界」に反発する動きが加速しています。
INDEPENDより
54万人以上のフォロワーがいたエッセナさんは、インスタグラムに投稿する写真一枚につき5,000〜15,000USドル(約50-150万円)の広告料が支払われるほどの人気インフルエンサーでした。しかし、SNS上での自分の見え方を気にするあまり、興味は無いが万人受けする投稿をしたり、美しく見えるまで一つの投稿の為に100回も撮影を繰り返す日常に疲れ、昨年(当時19歳)全てのSNSアカウントを閉鎖しました。「本当の自分を見失ってしまった」と涙ながらに語り、過度に美化されたSNSの裏側を語ったことが注目を集め、BBCニュースなどで世界的に取り上げられました。
ネット上で人の体型を批判したり、ネガティブなコメントを残す 「body shamer(ボディーシェイマー)」に対して直接立ち向かう若いセレブ達が近年ニュースでも注目されています。歌手・女優のセレーナ・ゴメスもその一人です。昨年の夏に自身のインスタグラムに水着の写真をあげたところ、心ないフォロワーから「ワークアウトしなよ!」とコメントが寄せられ、それに対しセレーナは「他の人やあなたにどういう体型になるべきなんて言われたって気にしないわ、自分自身、仕事、ファン、友達、家族のことを愛する以外にするべきことなんてない。」と体型より気にするべきことがあると主張しました。
歌手のZendaya(ゼンデイヤ)は、モデリスト・マガジンに掲載されたリタッチ前と後の写真を自身のInstagramに掲載し、許可なく、自分の体を修正されることに対して抗議をしました。キャプションには「こういう出来事が非現実的な理想の美を作って、女性たちの自身を無くさせるの。私のことを知っている人は私が真実と純粋な自己愛のために立ち上がるってことを知っているわ、だからこの本当の写真(左側)を見せることに決めたの。」と力強い言葉を添えています。
エマ・ワトソンも悩んだメディア上の「作られた自分」
映画ハリーポッターで一躍有名とイギリス人女優エマ・ワトソンも、今では国連でフェミニズムについてのスピーチをして注目を集めたりと、すっかり現代の強い女性の理想像となっています。そんな彼女も21歳の時まで自分の見た目に自信が持てなかったとEsquire UKの取材で語りました。
Esquireより
当時は、プライベートで友人に写真を撮られることを極端に嫌い、友人と喧嘩になったこともあったと言及しています。なぜ堂々と出来ないのか考えたときに、雑誌に写る「メイクとスタイリングで作り上げられた自分の姿」と、「普段の自分の姿」と比べてしまっていたことに気づいたと言います。ふと雑誌の表紙にまで写っている自分がこんな風に考えていたら、他の女の子達は私よりもっと自分の見た目に自信をもてなくなるんじゃないかと思ったときに、「自分が変わらなくちゃ」と思ったそうです。
その後彼女は数々の講演やインタビューを通じて、女性が抱える自尊心についての問題に触れ、多くの女性にポジティブな考え方や勇気を与えています。
企業でも広がる「ありのまま」を映した広告
モデルのIskra Lawrence (イスクラ・ローレンス) がエディターを務める、ファッションサイト「Runway Riot (ランウェイ・ライオット)」は全ての体型の女性の為に作られました。 ランウェイ・ライオットはカーヴィーな体型の人にもファッションを楽しんでもらえるようにという思いを込めて作られたサイトで、注目すべきはサイト上の写真が全て加工無しということ。幅広いサイズ展開の商品の紹介や、ファッション業界でのプラスサイズモデル起用の事例を積極的に取り上げた記事、プラスサイズのモデルへのインタビューや、オリジナルのエディトリアルなどを発信し、モデルの多様性を訴え続けています。
最近ではイスクラ・ローレンスが他のカーヴィーモデル達と登場した当サイトのフィットネスエディトリアルが注目を集めました。エクササイズをする女性の体型の固定概念を払拭し、「健康的な体型」は一つでないということを世界にプロモーションしています。
Runway Riotより
アメリカ発のカジュアルファッションブランドAmerican Eagle Outfitters (アメリカンイーグルアウトフィッターズ) のランジェリーライン「Aerie(エアリー)」では、2014年1月から#AerieREALというキャンペーンを始め、このキャンペーン以降売り上げが3ヶ月で最大32%(2016年四半期)、2015年1年間でも20%上がったとの報告があります。
#AerieREALとは、当ブランドの全広告(オンラインストア、SNS、店頭の広告など)の写真の修正とスーパーモデルの起用を一切止めるというキャンペーンです。多くの下着ブランドでは、若い女性の平均より細い体系のモデルを使い、エアブラシで肌をきれいに見せたり、写真に修正を加えて体を細く加工されています。私たちはそれを街角であたりまえのように見ます。そうした現状に疑問視したAerieの役員、Jennifer Foyle(ジェニファー・フォイル)さんは「全ての女の子が、自分が誰であるかと自分がどう見えるかについて自信を持ってもらいたい」という思いを持ち、このようなキャンペーンが始まりました。積極的にプラスサイズのモデルを起用したり、Aerieの商品を着用し#AerieREALをつけて投稿された写真をインスタグラム上でシェアするといったプロモーションを行った結果、ユーザーの支持を共感を呼び、大幅な売り上げアップを記録しました。
ADWEEKより
2017年には、メディアにおける細いモデルを起用する風潮や、それらが若い女性たちに与える美の理想像に対して行動を起こしているファッション業界のリーダー達の様子を描いたドキュメンタリー映画 「Straight/Curve」がアメリカで公開予定です。
メディア自体が今まで作られてきたボディーメージを払拭しようとしたり、SNSを使い慣れた若い世代のインフルエンサー達が自分らしさを発信したりする動きが起きています。日本ではまだまだInstagramでのリア充アピールが加速しています。日本ではこうした本来の自分らしさを大切にしよう、というムーブメントは起きるのでしょうか。