TikTok(ティックトック)の勢いが止まらない。2016年10月に中国版がリリースされ、昨年夏には日本を含むグローバル展開を開始したショートムービーアプリ、TikTok 。日本では中高生を中心に急激なブームとなり、現在世界でのユーザー数は2億人を突破した。
そんなTikTokは今後どのようなコミュニケーションツールになり得るだろうか。ユーザー特性や企業活用の可能性を探る。
若者にTikTokが流行る3つの理由
そもそもTikTokとはどのようなSNSなのだろうか。
TikTokは15秒の動画をユーザーが投稿・視聴する「ショート音楽動画コミュニティ」だ。ユーザーは、音楽に合わせて口パクとダンスをするだけで動画を簡単に作成することができる。余計な編集の手間がなく、簡単に投稿できるので、専門スキルがなくても利用が可能だ。
中国でのサービス開始以来、日本、韓国、東南アジアをはじめとする多くの国・地域で人気を博しており、2018年第一四半期のApp Storeでのダウンロード数は4580万回と世界で最もダウンロードされたアプリとなった。
TikTokはなぜここまで人気になったのだろうか。そこにはいくつかの特徴がある。
まず一つ目に、とにかく操作が簡単な点だ。TikTokは、これまでの動画投稿アプリと比べて、フルスクリーン、音楽、画像処理フィルター、撮影体験など全てにおいて勝っている。特に、10代はスマホを横にするのも面倒がる子が多い。スマホを傾けることなく、縦のまま撮影できて視聴できるという利点は大きい。秒単位という動画の時間感覚も、「冒頭の数秒でその動画をスキップするかどうか決める」という10代の感覚と合っている。
また、「Tik Tok」では「おすすめ」のタブがあり、いま人気のある動画がタイムラインで観られるようになっている。いま流行っている動画がなにかすぐ分かるため、投稿はしない見るだけのユーザーも楽しめるのだ。
また、YouTubeのように自分で投稿ネタや企画を考える必要がなく、流行っている動画がお手本になる。動画に合わせる楽曲も用意されたものから選択し、フィルターやエフェクトもつけることができる。本来ならば専門の編集スキルが必要になるようなクオリティの高い動画をいとも簡単に作成することができるのだ。スタンプも多数用意されており、クールな音楽とノリのいい振り付けで撮った動画はとても可愛らしく、一見PVのような動画になる。この投稿までのスピードの速さと撮影の手軽さがデジタルネイティブ世代に受け、流行に繋がっているようだ。
男女国籍言語関係ない。ボーダレスに交流できるのがTikTok最大の強み
Tik Tokで人気となった音楽が、再び人気になるなどの現象も見られる。その一例が「め組のひと」で、これは1983年ラッツ&スターの大ヒット曲を2010年に倖田來未がカバーしたもの。楽曲のキャッチ―さと早回しのコミカルさが相まって人気に火がついた。Tik Tokでの人気に合わせて、この曲も人気が出たという。
二つめは誰でも楽しめるという点だ。特にInstagramなどはリアルの友人と繋がる以外だと、「ファッション」「旅行」「コスメ」など共通の趣味があることが前提となる。しかし、TikTokはその趣味上の境界線がない。共通点がなくても、音楽に合わせて踊るだけで男女国籍言語関係なく交流ができるのだ。基本的にTikTokは模倣文化なので自分が流行の発信者になることもできるし、コンテンツが面白ければあっという間にエンゲージメント率が上がる。
また、Instagramのストーリーとよく比較されるが、使用するシュチュエーションが異なる。
多くの若者がInstagramストーリは友人とのコミュニケーションのためと使い分け、TikTokはシェアされて有名になることが投稿のモチベーションになる。
ヒットするアプリになるには、「口コミされること」が大きなエンゲージとなる。SNSやリアルな場で友達に「面白いアプリ見つけた」とオススメされることが大切だ。他人にTikTokを勧めると回答した人たちの理由を、競合3社の理由と共に見てみよう。
TikTok推奨者がオススメ理由にあげているのは、圧倒的に「楽しさ」が多く、次いで「かわいい」や「友達」と続いている。意外と操作の簡単さや芸能人を理由に挙げる人は少ないことが分かる。利用している人はシンプルにTikTokを楽しんでいると言えそうだ。
男性の利用が増えている?TikTokのユーザー属性
女子高生を中心に話題となったTikTokだが、最近では男性のユーザー数が伸びてきているとうデータも出ている。
AppApeLabの調査によると、2018年3月時点での男女別ユーザー分布は、男性がやや多いようだ。リリース後の人気に火が付いたのは女子高生の間で話題になったことがきっかけだったようだが、現在はどの年代でも男性ユーザーの数が多くなっている。多くのユーザーが動画投稿目的ではなく視聴目的であることを考えると、男性のアテンションをひきつけるTikTokerが増えているのかもしれない。
ユーザー年齢はというと、やはり10代のユーザーが多くを占めており、そこから年代が上がるごとにユーザー数は減少しているが、40代のユーザー数は30代・50代以上のユーザー数よりも多くなっている。ユーザーは必ずしも動画を投稿する必要はなく、アプリを導入すれば動画視聴のみを楽しむことができるため、他の動画メディアと同様、視聴目的が一定数いるものと考えられる。
次に、Tik Tokの日間起動回数の分布に目を移してみる。グラフから見ても分かるように、1日に21~50回起動が4割、51回以上起動が3割と、ヘビーユーザーの数が際立っている。「15秒の動画」というコンパクトなフォーマットにより、ついつい何十回も起動してしまうユーザーが多いようだ。
また、1日あたりのアプリ起動回数を平均してみると、2018年3月のデータでは、1日あたり43.4回。睡眠時間を除いた1日の稼働時間を16時間と仮定すると、1時間に3回近く起動されていることが分かる。一方、代表的なSNSであるTwitterの平均起動回数は15.5回。TikTokの約1/3ほどだ。「15秒の動画を視聴するSNS」と「140文字以内のテキストを読むSNS」という性質の違いは、起動回数に大きな開きを生じさせているようだ。
どんな動画が人気なのか
TikTokに投稿される動画にもいくつもの種類がある。かなり種類が多いが、大まかに分類すると以下の通りだ。
①歌詞ハメ動画
これは、使用する楽曲に合わせて口パクをしたり、セリフをハメたりするものだ。15秒という短い中で歌詞やセリフに合わせるので簡単に作成することができる。音楽に限らず、セリフにハメた動画も人気があり、面白い要素も入れることができる。
②音ハメ系
TikTokの中で最も多いのがこの音楽にのってダンスをする動画だ。全身でするダンスに限らず、スマホ片手で撮影できるような「手振りダンス」「顔芸」など上半身だけで収まるような振り付けのものも多い。「#だれでもダンス」というハッシュタグが存在するように誰でも簡単に踊れる振り付けが流行っていることが多い。
最近では芸能人も徐々にアカウントを取得し始め、映画や新曲のプロモーションの一環として利用している。きゃりーぱみゅぱみゅは、自身の楽曲で踊った動画をアップし、「#○○ダンス」「#なりきりきゃりー」というようなハッシュタグをつけることで、より皆が真似しやすい工夫をしている。映画「あのコの、トリコ。」では公開前プロモーションでTikTokを利用している。出演者が映画主題歌のダンスを踊ってみた動画を挙げることで話題性を高め、オフショット的な役割も果たしている。
③シュール・ギャグ系
いわゆる「お洒落で盛れる」動画以外も流行っているのがTikTokの注目すべきところだ。「#レボリューション」のハッシュタグでは、寝起きやノーメイクの状態から、服やメイクでどれだけ変身するかという動画だが、中には大変身に値するものもあって見ていて単純に面白い。メイクアップ商品のプロモーションの一環としても利用できそうだ。
実際のプロモーション利用活用例
TikTokは音楽やダンスと親和性が高いため、最近では様々な分野のプロモーションの一環として利用されることが増えている。
まず一つ目は、ULTRA JAPANとのコラボキャンペーンだ。
2018年9月15日(土)16日(日)17日(月・祝)に東京にて開催されたULTRA JAPANの会場では、「#ultratiktok」をコンセプトに、お洒落で思わず仲間と様子をシェアしたくなるTikTokエリアが設置された。加えてCYBERJAPAN DANCERSのメンバーも1日2回登場するTikTokショーケースも開催された。TikTok Japanの公式アカウントでは、ULTRA JAPANの限定グッズやチケットプレゼントキャンペーンが企画されており、「#ultratiktok」を付けて投稿するとプレゼントが当たる仕組みになっている。動画に使用する楽曲もultraの曲を使って撮影し、その動画をSNSにシェアすることで応募完了となる。フェスに登場するアーティストの楽曲を使用することで、本番前の盛り上がりを創り出すことが可能となっている。
二つ目に、サントリー食品インターナショナルは、2018年4月に発売した「ペプシJコーラ」のプロモーション動画にTikTokを利用した。
SNSを中心に話題が拡がり、動画で踊っているダンスを2万人以上が真似して投稿している。動画では、「ペプシ Jコーラ」のテレビCMオリジナル楽曲に合わせ、テーマである「JAPAN & JOY」を表現したダンスを石川さゆりさんや、X JAPANのSUGIZOさんをはじめとする芸能人が踊る。トレンドのTikTokを活用して大御所タレントが踊るというギャップも狙っているそうだ。
今後の展望から見るTikTokの使い方
今後、「Tik Toker JAPAN」では、若年層のビジュアルコミュニケーションやインフルエンサー活用のコンサルティングを通じ、日本における「Tik Tok」を通したコミュニケーションを活性化していく予定だ。
近年多くリリースされている動画サービスやSNSの中でも特に注目を浴びているTikTokは企業側の新たなプロモーション施策においても重要なチャネルの一つになり得そうだ。
特に若年層に向けたプロモーション活動には最適だろう。自社で扱っているサービス特性と相性が良かったり、ターゲット層が近い場合はぜひTikTokを用いたプロモーションを検討してみてはいかがだろうか?