創業から6年経った2017年現在、世界75か国約6,000店舗で商品を販売し、世界的に有名な時計ブランドとなったDaniel Wellington(以下ダニエルウェリントン)。ダニエルウェリントンは、創業当初からInstagramを活用したインフルエンサーマーケティングを実施した。

 

ダニエルウェリントンは、インフルエンサーに対し時計のギフティングを行った。そして、インフルエンサーにはInstagramをはじめとしたソーシャルメディアで紹介をしてもらった。

 

ダニエルウェリントンは、創業当初からこの取り組みを行っており、認知という点では、成果をあげたと言えるだろう。しかし一部では、大量の時計を無料で配布した結果、「無料でもらえる価値の時計」という印象を顧客に与え、ブランドイメージを毀損しているのではという声も挙がった。果たして、ダニエルウェリントンの行ったインフルエンサーマーケティングは失敗だったのだろうか。


クラシックで気品溢れる時計を届けたい

2006年、ダニエルウェリントンの創業者であるFilip Tysander(以下フィリップ)氏は、スウェーデンの高校を卒業後、オーストラリアにバックパックの旅に出た。

 

フィリップ氏は、旅先で英国紳士ダニエル・ウェリントン氏に出会った。ダニエル氏はNATOストラップ(時計のナイロンストラップの1つのタイプ)のロレックスを腕につけていた。この出会いこそがダニエルウェリントン創業のキッカケとなる。

Daniel Wellingtonより
ーNATOストラップの採用されたダニエルウェリントン

 

スウェーデンに帰国後の2007年、フィリップ氏は兄と一緒に蝶ネクタイのECサイトを開始。さらに、当時流行していたプラスチック素材の時計のECサイトも開始した。

 

しかし、数年するとそれらのファッショントレンドの勢いはなくなった。フィリップ氏が思い出したのが、英国紳士ダニエル・ウェリントン氏との出会いだ。彼がつけていた様な気品のあるクラシックな時計があればきっと売れるだろうと考えた。

 

当時、ミニマルでクラシックなデザインの時計は高価だった。フィリップ氏はミニマルでクラシックなデザインの時計を低価格で提供したいと考えた。

 

そこで自ら時計をデザインし、貯金2万4,000ドル(約250万円)をはたいて中国の工場に時計の生産を発注。2011年にECサイトを設置して時計ブランド「ダニエルウェリントン」の時計販売を開始した。ムーブメントには日本製のミヨタムーブメントを採用し、組み立ては中国で行った。これにより高品質ながらも時計の価格を抑えることに成功した。現在の時計の価格は195ドル(約2万1,000円)で、創業当初もほぼ同じ価格帯だ。

 

2016年には220億円の売上を

創業後、ダニエルウェリントンの売り上げは順調に伸びていった。創業して3年後の2014年には、7,000万ドル(約77億円)の売り上げを記録した。続く2015年には1億7,000万ドル(約187億円)、2016年は2億ドル(約220億円)の売り上げとなった。

 

そして、この成功の理由の1つとしてインフルエンサーマーケティングが挙げられるのだ。

 

ファッションの一部である時計と、ビジュアル志向のSNSであるInstagramは相性が良い。ダニエルウェリントンが売り上げを伸ばし始めた頃、Instagramもまた急速にユーザー数を増やしていた。ダニエルウェリントンは、そんなInstagramを活用し、インフルエンサーマーケティングを行ってきた。

 

ダニエルウェリントンは数多くのインフルエンサーマーケティングを行ってきた。日本国外でモデルのKendall Jennner(ケンダル・ジェンナー)やKylie Jenner(カイリー・ジェンナー)、男性モデルのLucky Blue Smith(ラッキー・ブルー・スミス)を。日本では、タレントでモデルのローラなどをインフルエンサーとして採用している。

またダニエルウェリントンは、セレブではないが影響力のあるマイクロインフルエンサーも登用。本人が志願するか、もしくはダニエルウェリントンからのスカウトで、インフルエンサーとして起用される。

 

ダニエルウェリントンは、インフルエンサーとなったユーザーに無料で時計を配布。インフルエンサーは、時計が写り込んだ写真を、15%の割引きクーポンコードとハッシュタグ#danielwellingtonつきで投稿する。投稿を見たフォロワーは、その写真のクーポンコードを使用し、公式サイトで割安で時計を購入することが可能だ。

ハッシュタグ付きの投稿数は150万以上

ダニエルウェリントンのInstagram活用は、インフルエンサーマーケティングだけにとどまらない。ダニエルウェリントンのソーシャルメディア担当者は、マイクロインフルエンサーや一般ユーザーがInstagramに投稿した、ハッシュタグ#danielwellingtonつきの投稿から良質な写真を選抜。選抜した写真をダニエルウェリントンのInstagram公式アカウントで掲載している。

 

今では多くの一般のユーザーが、自発的にダニエルウェリントンの時計をつけた写真を、ハッシュタグつきでInstagramに投稿している。2017年12月現在、ダニエルウェリントン公式アカウントの投稿が約5,000件であるのに対し、ハッシュタグ#danielwellingtonのついた投稿は約155万件。ユーザー自らの手によってダニエルウェリントンのブランディングにつながるコンテンツが生成される、そんな好循環を作り出すことに成功している。

 

ダニエルウエリトンはインフルエンサーマーケティングのために大量の時計を無料で配布した結果、ブランドイメージを毀損したと言われている。多くのインフルエンサーに無料で時計が配られたことで、一般ユーザーの購買意欲が失われてしまったのだ。

 

しかしダニエルウェリントンの売り上げをみれば、誰にもわかるように多くの人に低価格でクラシックな時計を届けたと言えるだろう。また、Instagramでユーザーが自発的にコンテンツを生成する好循環を作り出すことに成功したとも言える。

 

もちろん、中長期的に見た際のブランドイメージ毀損は大きな痛手だ。しかし大きく売上を伸ばした現実をみると、ダニエルウェリントンのインフルエンサーマーケティングが大失敗だったとも、言えないだろう。

 

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森本進也
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森本進也

ライター。1989年生まれ。IT、経営、マーケティング、金融、バイオ、医療等の領域において海外の最新トレンドを追っている。好きなメディアはTechCrunch、Business Insider、Scientific American。