映画のプロモーションは、テレビCMで映画のトレイラーを流すというのが一般的です。

 

一方、2016年2月米国で公開された映画「Deadpool」(デッドプール)はソーシャルメディアを活用したプロモーションに積極的に取り組み、成功を収めました。世界興行収入7億8,310万ドル(約867億円)の記録を持ち、R指定映画の世界興行収入記録を塗り替えました。


従来のスーパーヒーロー映画と一線を画す

特殊部隊の傭兵だった主人公ウェイドは末期がんに侵され、がんを治すために藁にもすがる思いで人体実験に参加します。人体実験によりがんの進行は抑えられ、さらにどんな攻撃を受けても回復する不死身の身体となります。しかし、実験の影響で身体全体の皮膚が醜くなってしまいます。

 

絶望したウェイドは実験施設から脱走。マスクを被り変身して「Deadpool」を名乗り、自暴自棄になり刺激を求め、危険な戦いに身を置くようになります。Deadpoolの特徴は、従来のスーパーヒーローの勧善懲悪な世界観ではなく、自暴自棄でやんちゃな主人公です。下品な言葉を使いながら、戦いを繰り広げるコミカルな世界観も有名です。


SNSと親和性の高いキャラクターを押し出し、顧客層を拡大

従来のスーパーヒーロー映画は基本的に少年を対象にした映画だと言ってよいでしょう。しかし、R指定されているDeadpoolは少年を顧客対象にできません。Deadpoolは顧客層として若い女性も含めたより幅広いカテゴリーの人々に訴求することを狙いました。

 

単純なスーパーヒーローでない、人間臭さのあるDeadpoolのキャラクターを前面に押し出したコンテンツをFacebook、Twitter等ソーシャルメディアに投稿しています。映画の「売り込み」ではなく、登場キャラクターそのものをコンテンツ化しているのです。Deadpool自体がキャラ立ちしていることもあって、投稿されたコンテンツはソーシャルメディア上で多くシェアされています。

 

1.乳がんと精巣がんの早期発見を促す公共広告風動画

Deadpoolの主人公は人体実験前、末期がんに侵されていました。そのキャラクター設定を活用し、ガン撲滅団体と提携しコンテンツを作成しました。乳がんと精巣がんを早期発見するための方法をDeadpoolが解説した公共広告動画風の動画をソーシャルメディアに投稿しています。この動画は、2017年8月現在、Facebook上で630万回以上再生され、13万以上シェアされています。

 

2.Deadpoolの姿が笑える360度動画

最新の360度動画を活用しています。360度動画で周りを見渡すと複数人のDeadpoolがビリヤード場でビリヤードをしたり、バーのテーブル上に乗ってコミカルな動きをしたりと、クスッと笑ってしまう動画が投稿されています。こちらの動画は、2017年8月現在、Facebook上で1165万回以上再生され、22万以上シェアされています。

 

3.季節に合わせたコンテンツ
クリスマス編

2015年12月14日からクリスマスまでの期間、毎日カウントダウンでDeadpoolのコンテンツが公表されました。クリスマス・イブ、クリスマス当日には、Deadpoolの新しいトレイラーがクリスマスプレゼントとして公表されました。

 

クリスマス・イブに公開されたトレイラー“Deadpool’s Trailer Eve”

 

クリスマス当日に公開されたトレイラー“Red Band Trailer 2”

 

バレンタインデー編

バレンタインデー前には、Deadpoolになる前の主人公ウェイドと、恋人のバネッサの姿が映った「True Love Never Dies」というロマンティックなメッセージのコンテンツが投稿されました。単なるスーパーヒーロー映画ではない、ラブストーリー要素のある映画であることを訴求する狙いがあります。


ローカライズによって世界中から人気を集める

映画を公開する各国に合わせたローカライズも積極的に実施しています。

 

2016年1月26日のオーストラリア建国記念日には、その日のためだけに作ったオリジナルコンテンツを投稿。2017年8月現在、Facebook上で385万回以上再生され、7万以上シェアされています。

 

主人公を演じるRyan Reynolds(ライアン・レイノルズ)も台湾に向けた投稿では、中国語を使用しています。

 

日本でも日本語のTwitterアカウントが設置されており、2017年8月現在、77,000人を超えるフォロワーがいます。一般的な映画の公式アカウントと異なり、DeadpoolのアカウントではDeadpoolが1人称「俺ちゃん」を使ってTweetしている点がユニークです。Deadpoolの親しみやすいキャラクターが伝わってきます。

 

Deadpoolのプロモーションは従来の映画のプロモーションとは一線を画す独自性があります。SNSと非常に親和性の高い、ユニークなキャラクターを前面に押し出したコンテンツが人気を集め、ソーシャルメディア上で話題を呼びました。

 

そして、映画に対する親しみや興味を喚起させ、より幅広い顧客層を開拓。SNSでの積極的なコミュニケーションが結果として、R指定映画で歴代最高の世界興行収入を記録することに繋がったのではないでしょうか。

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森本進也
Post Author

森本進也

ライター。1989年生まれ。IT、経営、マーケティング、金融、バイオ、医療等の領域において海外の最新トレンドを追っている。好きなメディアはTechCrunch、Business Insider、Scientific American。