2020.2.25

2020年に、日本も教育改革を行う中、世界でもEdTechに注目が集まっている。

EdTechとは、教育(Education)× テクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉で、教育領域でテクノロジーを活用したビジネスやサービスの総称だ。

EdTech領域が進んでいる、中国・インドの事例と国内の事例を紹介する。


アメリカ、中国、インドで特に盛り上がりを見せるEdTech

Edtechは、世界規模で注目されている分野だ。日本市場でも2023年には3000億円にも上ると見られているが、2015年から2022年のエドテック関連市場は、平均成長率18.3%と毎年順調に伸びており、2020年には11.2兆円の市場規模と見通されている。

世界の中でも特にEdTechに力を入れているのはアメリカ、中国、インド。

EdTechをリサーチする企業・HolonIQによると、全世界のVC投資の50%以上も中国のサービスが占めている。続いて、アメリカは20%、インドは10%、ヨーロッパは8%となっている。

EdTechが注目され始めた背景には、2008年ごろのアメリカにある。

アメリカが提供をはじめた学習方法・Massive Open Online Course(通常MOOC)がある。
MOOCは、オンライン講座の総称で、海外や遠方の教育機関の講義を視聴することのできる学習方法を意味する。

MOOCは、世界中の誰もがオンラインを通じて大学の講義を基とした教育を無償で受講できるようにすることを目的に立ち上げられ、ハーバード大学やスタンフォード大学の講義も受けることができる。

2012年頃には世界中でMOOC型サービスが普及し、「教育の民主化革命」ともいわれている。

そんなEdTech先進国アメリカでは、ビジネスマン向けSNS「Linkedin」が、オンライン学習サービスを買収し、「Linkedin」の中にサービスが追加。「Linkedin」はSNSサービスx学習のプラットフォームとなった。

アメリカでは、MOOC型のサービスを大学で取り入れるなど、世界で最も教育とテクノロジー分野で先進国となっている。


コロナウイルスで休学となった中国。オンライン学習サービスが活躍

アジア中でコロナウイルスが猛威を振るう中、中国では休学となる学校も増えている。

そんな最中、中国30省300都市にある学校が2月10日より、Alibabaが提供する「Dingtalk(釘釘)」を用い、オンライン授業を開催した。


「Dingtalk」は、2015年にリリースされたオフィス管理やコミュニケーションアプリ。

このオンライン授業は、「Dingtalk」のライブストリーミング機能を用いて開催された。

中国では、EdTech領域は日本の30倍もの市場規模があり、ユニコーン企業も5社輩出している。

中国は年間4兆円という規模でEdTech領域に投資を行なっており、その背景には、激しい学歴社会や、都市と地方の教育格差があり、中流以上の家庭では1人の子どもにかける1年の教育費が35万円以上の家庭が過半数を占めるというデータもある。

中国のEdTechサービス

Zuoyebang(作业帮) 

1億7,500万人以上のユーザーを持つ宿題プラットフォーム。小学校から高校までの生徒を対象とし、宿題の写真をアップロードすると、回答を検索し、生徒は宿題の回答と分析を取得できるアプリ。また、 Q&A形式で自分の先生を見つけたり、宿題の評価を受けることもできる。

Yuanfudao(猿辅导) 


小学校から高校までの生徒を対象とし、中国語、英語、数学、歴史、生物学など、全教科を網羅するコースを受講できる。

17作业(一起作业) 


学校現場と連動し、学校のビックデータを用いて、パーソナライズされた学習を目標とする家庭教育プラットフォーム。
オンラインの個別指導も。

これら3社はすでにユニコーン企業となっている。

世界の投資家も中国に次いで注目するインドのEdTech

インドは、5〜24歳の人口が世界で最も多く、オンライン教育市場の売上は2021年までに19億6000万ドル(約2100億円)に成長すると見込まれている。(KPMGとGoogleの2017年の報告による)

そんなインドにもEdTech領域のユニコーン企業が1社ある。

昨年7月に160億円の調達を完了し、世界展開を行うと発表したインドのEdTechスタートアップの最大手「Byju’s」だ。

「Byju’s」は、2011年にローンチされ、科学と数学に焦点を当ててサービスを伸ばしていった。2019年に海外展開のために、英語教育にを追加し、ビデオレッスンや、パーソナライズした学習方法などを提案している。

TikTok風学習サービスも。インドのEdTechサービス

Vedantu

昨年インド国内で大型調達を行ったVedantu。インドの小学校〜高校の学生向けにオンライン動画コンテンツやライブ授業、模擬テストなどを提供。「Byju’s」との大きな差別ポイントは、ライブ授業があることだという。


Bolo Indya

70秒の短尺動画での知識共有プラットフォーム。
TikTokを意識したと見られ、教育以外にも人生・人間関係・キャリア・自己啓発・金融・テクノロジー・スポーツ・生活術など、コンテンツの種類があり、短尺でユーザーが投稿する。動画型SNSを活用したEdTech領域へ挑む。

Toppr

インドの小学5年生〜高校3年生を対象に、受験対策のためのオンライン模試や問題演習、映像授業が行えるサービス。わからない箇所は、チャット機能で専属講師に24時間質問が可能。

 

多様な業界が参入してきそうな日本のEdTech

超高齢社会となり、少子化がさらに進む見通しの日本だが、今年2020年から新学習指導要領が実施される。グローバル人材を育成するために、英語やプログラミング教育に力を入れるようだ。

日本の教育現場の課題には、教師の重労働がある。EdTechの普及によって教員の負担を減らし、より良い教育現場を育成することも日本の課題だ。

EdTech領域は日本市場でも2023年には3000億円に成長する見通しだ。

日本のEdTechは、リクルートが提供する「スタデイサプリ」や、ベネッセやソフトバンクが提供する「Classi」、プログラミング教育に特化した「ライフイズテック」が牽引してきた。

最近では、教育出版社である旺文社が、EdTechに注力したベンチャーを立ち上げや、カルチャーメディアのCINRAが、13歳〜19歳向けオンラインラーニングコミュニティ「Inspire High」を発表するなどといった動きも見られる。

CINRAが提供する「Inspire High」では、従来の教師の範囲ではなく、アーティストや起業家、研究者やビジネスパーソンなど、第一線で活躍しながら自分の人生を楽しむ様々な大人との出会いをライブ配信で提供する、感性を育てる形でのEdTechだ。

これまでの教育分野の事業の枠を超え、国内でもEdTechへの注力が進みそうだ。

日本の注目EdTechサービス

atama+



AIを活用したサービス。AIが生徒の学習状況を分析し、パーソナライズした「専用カリキュラム」を自動的に作成。
個別指導塾を中心に塾への導入が進んでおり、Z会グループと連携するなどローンチ2年で500教室を突破。

SENSEI NOTE

学校教員向けコミュニティサービス。先生たちが授業に関する内容を投稿し、Q&Aで質問できたり、コミュニティを作成するなど、閉鎖的になりがちな日本の教師に向けた情報交換が特徴。

Qubena

小学校の算数と中学数学に対応したAIを活用した問題サービス。解くべき問題をレコメンドしてくれる。
タブレット上に手書きで定規やコンパス、分度器を使った作図もできる。

日本の教育見直しがやっと行われる2020年。
世界に向けたグローバル人材を育成するために、様々なテクノロジーを活用して未来を担う子どもたちの
教育や感性を育むEdTechに注目していきたい。

 

 

 
Written by
COMPASS編集部
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