SXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)とは、日本でこそまだまだ知名度が低いですが、アメリカのIT関係者で知らない人はいない一大イベントです。SXSWミュージック・SXSWフィルム・SXSWインタラクティブ・SXSWコメディの4部門に分かれています。毎年3月、アメリカのテキサス州オースティンで開催され、2017年度は3月10日~19日の期間に開催されました。

 

その中の一部門であるSXSWインタラクティブは、IT関連の企業、ベンチャー企業の新技術の展示会、デモがメインの内容となっています。SXSWインタラクティブを抑えておくと現在のテクノロジーの最先端が把握できるといっても過言ではありません。

 

2017年3月12日~14日に、そのSXSWインタラクティブにおいて世界中のIT関連の企業、ベンチャー企業の新技術から優れた技術を選出する「SXSW Interactive Innovation Awards 」が開催されました。今回は、「SXSW Interactive Innovation Awards 」のファイナリストに残った65社の中からイノベーティブでユニークな企業を5社厳選し、ご紹介します。

 

①照明のように操作できるサウンドビーム ー「HOLOPLOT Wave Field Generator」 by Holoplot GmbH

ドイツ拠点の企業Holoplotの音響機器HOLOPLOT Wave Field Generatorは、光の照明のように特定の場所に狙いを定めて音を送ることができる操作可能なサウンドビームを作り出せます。

 

操作できるサウンドビーム

ーHoloplotサイトより

HOLOPLOT Wave Field Generatorは壁のような形状となっており通常の音響機器では生み出せない、音が届く範囲を操作できる音の束と言えるサウンドビームを生み出します。

 

狙いを定めて音を届ける

ーHoloplotサイトより

たとえば、会場内のドイツ人にはドイツ語音声を、アメリカ人には英語音声を聴かせることが可能です。

 

距離が離れても音量が落ちにくい

ーHoloplotサイトより

通常のスピーカーだと音は拡散し距離が遠くになるにつれ、音量が落ちます。HOLOPLOT Wave Field Generatorはサウンドビームで音が拡散しづらく、距離が離れても音量が落ちにくいです。

HOLOPLOT Wave Field Generatorは建物の壁に埋め込むことも可能です。美術館など雰囲気を壊すことなく音楽を流したい場面に活用できそうです。

②「Sydney Opera House #comeonin」 by DDB Group AustraliaーInstagramを利用した集客

オーストラリアのシドニー・オペラハウスには世界中から820万人もの観光客が訪れている観光名所です。しかし、観光客はオペラハウスの外観のみを撮影しており、全体の1%しかオペラハウス内に入場していないといいます。

この現状に危機感を持ったオペラハウスは広告会社DDB Groupとタッグを組み、観光客をオペラハウス内に誘導するためのInstagram集客施策「#comeonin」を展開しました。

 

位置認識、画像認識技術のソフトウェア


ーDDB Worldwide Youtubeより

位置認識、画像認識技術を活用したソフトウェアがオペラハウス付近で直近で撮影、Instagramに投稿された画像を発見します。

 

オリジナル動画で観光客を誘導

ーDDB Worldwide Youtubeより

その画像を投稿した観光客に対し、オペラハウスのレスポンスチームがオリジナル動画を作成し、Instagramのダイレクトメッセージで送信します。たとえば、オリジナル動画では、チームのスタッフがオペラハウスの舞台裏の衣装を指さしながら、衣装を試着しに来ないか?と観光客のナディアさんに提案します。

 


ーDDB Worldwide Youtubeより

ナディアさんは衣装を着られるならばとオペラハウスに入場します。その後、Instagramでその体験をシェアします。

Instagram集客施策「#comeonin」では上記のような流れで観光客を誘導。結果、4週間で500万人にオペラハウス内の様子をシェアすることに成功しました。

③高級外車、限定生産車と自在に変化する撮影用車体 ー「Blackbird(ブラックバード)」 by The Mill

テレビCM、映画には車が登場する機会が多いですよね。しかし、高級車や限定生産車など特定の車を用意する場合は非常にコストがかかります。そこで役立つのが英国拠点の企業The Millの撮影用車体「Blackbird(ブラックバード)」です。

 

車体が伸縮

ーThe Millサイトより
ブラックバードは車体を伸縮させて車幅の変更をしたり、ホイールを変更することができます。

 

モデル車の外観をCGで重ねる
ーThe Millサイトより
ブラックバードの外観にモデル車の外観をCGで重ねると、映像でモデル車をそっくり再現できます。映像は拡張現実アプリでリアルタイムに確認することもできます。ブラックバードは屋根上に4台のカメラ、センサーを搭載しています。このカメラ、センサーにより走行時の周囲の映像、環境データを取得し、高精度で違和感のないモデル車が走行する映像を実現します。

 

走行するブラックバード

ーThe Millサイトより
映像で確認してみましょう。実際はブラックバードが道路を走っているのですが…

 

ブラックバードにモデル車を重ねたCG映像

ーThe Millサイトより

ブラックバードの外観に、モデル車の外観をCGで重ね、実際のモデル車が走っているかのような映像を作成できます。テレビCMや映画の撮影で新車を購入せずに、ブラックバードを活用することで低コストで撮影できるようになります。

④VRの音楽スタジオ ー「The Music Room」 by Chroma Coda

オーストラリア拠点の企業Chroma CodaのThe Music Room はVRで音楽を演奏、作曲できるVRの音楽スタジオです。

 

バーチャルドラムを演奏

ーThe Music Room  YouTubeより

VRヘッドセットをつけてバーチャルドラムを演奏します。コントローラーがバーチャルドラムのスティック代わりになります。


ーThe Music Room  YouTubeより
VRヘッドセットを通して見た映像です。

 


ーThe Music Room  YouTubeより
ドラム以外にもハープ、ギターなど様々なバーチャル楽器をVRで演奏できます。

 


ーThe Music Room  YouTubeより
VRで演奏のレコーディングも可能です。

The Music Roomを利用すれば、楽器そのものがなくても演奏ができるというのは、とても面白いですね。これまでドラマーが頭を悩ませていたドラムの騒音問題もThe Music Roomで解決できるかもしれません。コントローラーがさらに小型化していけば、いつどこでも騒音を気にせず音楽を演奏ができるそんな時代がやってくるのかもしれません。

⑤空間に絵を描ける3Dペン ー「3Doodler PRO」 by 3Doodler

香港拠点の企業3Doodlerの3Doodler PROは空間に絵を描くことができるペンです。

 

樹脂を補てん

ー3Doodler YouTubeより

3Doodler PROにABS/PLAの樹脂を補てんし、熱します。

 

ボタンを押す

ー3Doodlerサイトより

3Doodler PROの本体ボタンを押すと補てんした樹脂が押し出されます。

 

樹脂は空間で凝固

ー3Doodler YouTubeより

押し出された樹脂は、空気で瞬時に冷却され空間で凝固します。

 

自由自在に創作

ー3Doodler YouTubeより
様々な形のオブジェクトを自由自在に創作できます。

 

立体アートの製作

ー3Doodler YouTubeより

元々は、子供向けの玩具として開発されたようですが、立体アートの製作などにも活用できそうです。

 

SXSW Interactive Innovation Awards 」のファイナリストに残った65社の中でも5社を厳選してご紹介しました。選ぶ中で、興味深く思ったのがAR/VRが予想していた以上に様々な領域で活用され始めていることです。また、5社以外のすべての企業がユニークな技術を持っています。興味がある方は、こちらより65社の一覧をご覧いだけます。

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森本進也
Post Author

森本進也

ライター。1989年生まれ。IT、経営、マーケティング、金融、バイオ、医療等の領域において海外の最新トレンドを追っている。好きなメディアはTechCrunch、Business Insider、Scientific American。