米国アマゾンがイベント会場オーナー、イベント企業との提携を模索。イベントチケット販売ビジネスへの参入の動きを本格化させています。

 

現在の米国でのチケット販売、イベント企画企業最大手のLive Nationが保有するTicketMasterが市場のほとんどを独占している状態です。そのため、TicketMasterは米国のスタジアム、コンサートホールなどのイベント会場オーナー、イベント企業、イベント関係者らと協力なパートナーシップ関係にありました。

アマゾンプライムの充実化に向けて


Amazonより

 

近年のアマゾンは、年会費99ドル(※米国ドル)のアマゾンプライム会員数を増やすため会員向けサービスの拡充に力を入れています。

 

その一例ですが、アマゾンは5000万ドル(約54億円)を支払う事で2017年9月14日~12月25日に実施されるNFL(ナショナルフットボールリーグ)の試合「Thursday Night Football」のライブストリーミングをアマゾン・プライム会員向けに配信する権利を獲得しました。

 

このようにアマゾンはアマゾンプライムのサービスの充実に相当に力を入れています。チケット販売ビジネスへの参入で、アマゾンプライム会員向けに著名アーティストのコンサートチケットを限定販売するような展開も想定されます。


旧態依然としたチケット販売業界


Ticket Masterより

 

米国のチケット販売業界は旧態依然としています。基本的にイベントのチケットを購入できるのはイベント会場窓口、もしくはTicketMasterだけという状態。ただ、イベント会場窓口にチケットを購入しに行ける人は多くないでしょう。そこでTicketMasterが利用されます。

 

しかし、TikcetMasterに対して「手数料が高すぎる」と以前から不満の声が上がっていました。手数料はイベント毎に変動しますが、平均的にはチケット料金に10%ほどの手数料が加算されます。場合によっては30~50%もの手数料が加算されるケースもあります。過去には「不透明な手数料をなくして正当な料金のチケットをファンに提供したい」と考えたアーティストが、TicketMaster経由でのチケット販売を中止するという騒動も起きました。

 

TicketMaster経由でチケットを販売しない場合には、TicketMasterと提携しているイベント会場を利用できません。しかし、TicketMasterは1万2000以上のイベント会場オーナー・イベント企業との関係を持っています。そのため、TicketMasterと提携していない会場でイベントの条件に見合った会場を探すことは難しく、イベント開催自体が危ぶまれます。チケット販売業界は、老舗のTicketMasterが圧倒的な力を持っているのです。


アマゾンの強みは購入しやすさ、データの活用

前述のように、チケット販売ビジネスへの参入は容易ではありません。しかし、TicketMasterを上回るだけの利用メリットがあれば。アマゾンでチケットを販売するイベント会場オーナーやイベント企業も出てきます。アマゾンの強みは以下の2点でしょう。

 

1.チケットの購入しやすさ

アマゾンは世界最大級のECサイトであり多くの顧客がアカウントを所持しています。TicketMasterにログインせずとも、日常的に利用しているアマゾンのアカウントからチケットをスムーズに購入できるようになるのは、顧客満足度の向上にもつながります。

2.膨大な顧客データ

チケット販売にデータを活用するかどうかアマゾンは公表していません。しかし、イベント会場オーナー、イベント企業はアマゾンが蓄積している顧客データに関心を寄せています。

 

アマゾンの膨大な顧客データを活用できれば、イベント企業はパーソナライズしたプロモーションを実行できます。また、アマゾンとしてはチケットに関連した「Prime Music」の音楽をレコメンドしたり、逆に「Prime Music」の音楽から関連のライブイベントのチケットをレコメンドしたりと、アマゾンならではのビジネスを展開することも可能です。アマゾンならではのデータを活用したマーケティングには大いに期待できます。


イギリスではチケット販売だけでなくライブ事業も

アマゾンは2015年にイギリスでチケット販売を開始しています。すでにアマゾンのチケット販売数が、TicketMasterのチケット販売数を上回るイベントも出てきているようです。イギリスは米国と異なり、チケット販売が独占されていないため、アマゾンは比較的容易にチケット販売に参入できたのです。


Amazonより

 

さらに、アマゾンはアマゾンプライム会員向けのオリジナルライブイベントの開催を手がけ始めています。チケット販売もそうですがプライム会員のためのサービスの拡充に力を入れているのです。

 


Amazonより

 

現在、アマゾンは数百万ドルに及ぶスポンサー料を複数のイベント会場オーナー、イベント企業に対して支払い、チケット販売の権利獲得に向けて動いています。アマゾンでのチケット販売が始まると、顧客は従来よりチケットを格段に購入しやすくなり顧客満足度の向上が見込まれます。

 

また、ビックデータを活用したアマゾンならではのレコメンドをはじめ、新たな購買体験が提供されるかもしれません。

 

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森本進也
Post Author

森本進也

ライター。1989年生まれ。IT、経営、マーケティング、金融、バイオ、医療等の領域において海外の最新トレンドを追っている。好きなメディアはTechCrunch、Business Insider、Scientific American。