Instagram(インスタグラム)で投稿されている、#empty(エンプティー)というハッシュタグをご存知ですか?
閉館日や開館時間前の空っぽの美術館等でインスタグラマーが写真を撮り、Instagramに投稿するというイベントです。 2013年のプロジェクト開始以降、世界各地で行われており盛り上がりを見せています。ソーシャルメディアの急速な発達により、これまで企業同士の連携が多く行われてきましたが、面白い企画とあるのでとても注目を集めています。今回はそんな注目を集めている#emptyプロジェクトにフォーカスします。
1人のインスタグラマーとメトロポリンタン美術館の出会いが始まり
#emptyとは当時ニューヨークでフリーランスのレタッチャーやフォトグラファーとして活動していたDave Krugman(現在はソーシャルメディアコンサルタントとして活躍)が今から約4年前に思いついたプロジェクト。
4年前はInstagramがFacebook(フェイスブック)に買収され急成長を見せていた時ですが、彼はいち早くInstagramを利用していました。 彼はInstagramはソーシャルメディアに精通した企業にとって、有効なマーケティングメディアとなったのに、多くの企業はSNSを上手く活用できていないと感じます。実際、この頃多くの文化施設が各々のインスタグラムアカウントを作り始めましたが、滅多に画像を投稿していませんでした。彼が#emptyを思いついた理由はここにあります。
彼は、まだインスタグラムアカウントを持っていなかったメトロポリタン美術館に、「かつて印刷技術が本と執筆にもたらしたものと、Instagramが写真と芸術にもたらしているものとの比較が行なわれています」”とInstagramの有用性を熱心に綴り、手紙を送りました。 そして2013年4月、初の#emptymet(empty+metroplitanの略)イベントが行われる運びとなりました。
当日、招待されたインスタグラマーは思い思いに写真を撮影。それらの写真はメトロポリタン美術館のアカウントのタグとともに投稿されました。
彼らインスタグラマーの総フォロワー数は合計して数百万人にのぼり、普段とは少し違った美術館の様子が届けられたのです。 この企画は大成功し、彼らの写真を見た若年層の来場者が増加しました。
Krugman氏はプロジェクトについてNY Timesの記事で、“スマートフォンが写真撮影を手軽にしたことで、様々な文化施設がこれまで縁のなかった想像力と活気にあふれる若い世代と接し、彼らの力を利用することを思いついた”と発言。実際に、メトロポリタン美術館がInstagramを開始した2013年1月時点で4,000人だったフォロワー数は、現在130万人にまで急上昇しています。
広がる#emptyプロジェクト
その後#emptyは世界各地のあらゆる場所で行われました。ここではその一部をご紹介します。
- ルーブル美術館 / #emptyLouvre
2014年9月、パリファッションウィークの初日にインスタグラマーたちが早朝のルーブル美術館に集合しました。 当時WADマガジンの編集長であったMathieu Lebretonや、InstagramのコミュニティリーダーであるKristen Joy Wattsが参加しました。
- エルミタージュ美術館 / #emptyHermitage
2014年11月、ロシアはサンクトペテルブルクにあるエルミタージュ美術館にてアートディレクターである行われた#emptyHermitage。閉館後のエルミタージュ美術館にロシアの人気インスタグラマーたちがモノトーンのドレスコードに身を包み集まりました。 どの写真もインスタグラマーのファッションと美術館という空間がマッチしていて、写真自体がアートになっています。
- コパアメリカ / #emptyCopaAmerica
2015年のCopa America(コパアメリカ)の決勝戦、チリ対アルゼンチン戦にて開催。イベントにはチリで活躍している建築家やデザイナーなど様々なジャンルで活躍するインスタグラマーが招待されました。 デザイナーのAlberto Siredey氏は「最終的に私は、スタジアムをスタジアムだと捉えなくなった。そのスタジアムでは、組み直された美術的な観点から生まれた要素が、違った形で感情を伝えようとしていた。」と感想を述べています。
(Instagram Blogより引用)
日本で開催される#empty
海外では盛んに行なわれている#emptyイベントですが、日本ではまだまだ開催事例は少ないです。 日本での#empty事例をご紹介致します。
- TOKYO DESIGN WEEK 2015 / #emptyTDW
TOKYO DESIGN WEEK 2015にて行われ、日本での大規模開催はこれが始めてでした。 幅広いジャンルから様々なクリエイターやジャーナリスト、メディアが参加し、応募から選考された一般ユーザーも参加。ゲストインスタグラマーとして映像作家の菱川勢一氏や、チームラボ等を手がけるジャーナリストの林信行氏らが招待され盛り上がりを見せました。
- 日産スタジアム / #emptyNissanStadium
2016明治安田生命J1リーグ・ファーストステージ第6節の浦和レッズ戦にて横浜F・マリノスの本拠地、日産スタジアムで今年4月に行われました。スタジアムでの開催は日本初の試みとなりました。 参加者は、横浜を中心に活躍するインスタグラマーたちが招致され、InstagramのCEOのKevin Systrom氏と、CTOのMike Krieger氏も観戦に訪れ、試合終了後には選手やインスタグラマー達と交流したそうです。
まとめ
施設への来客数を増やそうとした場合、ターゲットが若い世代ならば、彼らが好みそうな内装にしたり、写真を撮りたくなるフォトスポットを設けたりする戦略が多く取られます。これは現在のInstagramによる拡散力が影響した結果と言えますが、ありきたりで単調なプロモーションになってきているのも事実です。
#emptyプロジェクトで使われる施設や会場は、以前から存在しているものばかりです。 誰もいない“空っぽ”であるからこそ見えてくる、その空間がもともと持っている魅力を発信するのに、インスタグラマーを活用するというのは面白い試みではないでしょうか。
まだまだ日本では例の少ない#emptyですが、海外では多く開催されており、開催後は大きな反響を得ています。 日本でも今後、様々な#emptyが開催され、素敵な写真とインスピレーションを届けてくれるのではないでしょうか。