夏が過ぎ、次に待ち受ける大きなイベントといえば10月31日に行われる、ハロウィン。もともとは秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事として、ケルト人が行なっていたが、現代ではアメリカ合衆国で民間行事として定着し、日本でも仮装をするイベントとしてここ数年は若者たちを中心に異様な盛り上がりを見せた。コスプレグッズやハロウィン関連グッズが大いに売れ、メディアでもハロウィンが大きく取り上げられるなど、年々市場規模も拡大していたが、昨年にはわずかながら前年よりも市場が縮小したと出ている。ハロウィンを取り巻く市場はどのように変化しているのか、今年はどんなトレンドが出てくるのか、新たなハロウィン市場を追った。

 

SNSが押し上げたハロウィン

そもそも、日本におけるハロウィン文化が浸透したきっかけは、1997年にディズニーリゾートなどが行ったイベントだ。アメリカでは子どもが仮装をし、お菓子をもらう行事だが、日本では大人も仮装(コスプレ)をして楽しむという日本流の文化が広まり、徐々にハロウィンは浸透していくものの、そういった特別なテーマパーク以外にはハロウィンが広く定着することはなかった。

しかし、2012年から2013年にかけてiPhoneをはじめとするスマートフォンが普及したことにより、ハロウィンは一気に文化として根付くこととなった。TwitterやInstagramといったSNSにハロウィンの様子をリアルタイムで投稿する人が増加したためである。SNSは拡散力や共感性が強いこともあり、若年層を中心に盛り上がりが拡大。近年は一大イベントとして定着するようになっていった。

 

最もハロウィンイベントが盛んな渋谷では、2015年頃から参加者が爆発的に増え、駅前のスクランブル交差点は交通規制が行われるほどに。

渋谷の街全体を巻き込み、各会場で様々なイベントを開催する「シブハロ」も、2017年で第4回目となった。2017年の参加者は約1万5千人と大盛況に終わった。

このイベントは、渋谷区宇多川町の特設会場の他、タワーレコード渋谷店、渋谷 DAIA、渋谷系クラブ・DJバー約20店舗と提携し、各地でイベント情報の配信やプロモーション活動が行われる。協賛企業による商品のサンプリングなども実施され、渋谷のハロウィンを更に盛り上げた。また、「シブハロオフィシャルSNS隊」と呼ばれる撮影隊が街に出動し、ハロウィンを楽しむ方々と記念撮影してSNSに投稿すると、抽選で渋谷系クラブの入場チケットが当たるというキャンペーンも行われた。このキャンペーンに参加すると、SNS投稿した方から抽選で、渋谷のクラブに無料で入れるチケットが当たるといった内容だ。

 

ハロウィンvsバレンタイン

一方、ハロウィン市場の伸び率が下がったという調査結果も出ている。

LINEリサーチが対象者約3000人に行なった調査によると、2017年にハロウィン関連で使った平均金額は4666円で、2016年の5273円に比べてダウン。大きな理由としては、昨年は衆議院選挙が10月22日に行われたためにハロウィンの情報を取り上げるメディアが昨年よりもかなり少なかったために、盛り上がりに欠けたようだ。ハロウィンのように「皆が楽しそうだから自分も何かをして参加したい」というような巻き込み要素の強いイベントは、メディアからの情報やアナウンスが消費量の増減に直結する。そのため、以前はハロウィンのプロモーションで使うことのできたメディア枠が昨年は自然と減ってしまった。ただ、昨年は今までハロウィンの馴染みの薄かった和菓子店や寿司店(くら寿司かっぱ寿司)、百貨店といった業種が限定商品を発売するなど新たな動きも見られ、大幅な経済効果減少には繋がらなかった。

 

一方、よくハロウィンと比較されるイベントであるバレンタインも同程度の市場規模を生んでいる。が、バレンタインとハロウィンの大きく異なる点はギフトの有無だ。そもそもバレンタインは、「恋人や友人にチョコレートをあげる」という文化だ。特別感を演出するために、ギフトにかける値段も普段よりはどうしても高価になる。そのため、どうしても消費する物やサービスの「単価」は上昇し、ひとりあたりの消費額は必然的に増加する。

一方で、ハロウィンは、コスチュームやお菓子、装飾品など比較的に安価で楽しめるイベントであり、高級感、高価といったキーワードは似合わない。ギフトは毎年新たに買うものだが、ハロウィンで使用する装飾品などは一度買ってしまえば何度も使えてしまうのも消費額が年々減少する理由の一つだろう。バレンタイン同様、ハロウィンでもギフトなどの毎年消費する商材を生み出せれば、今後の市場規模拡大も狙えるだろう。

 

仮装だけではない?新しいハロウィンの楽しみ方

最近のハロウィンでは楽しみ方がより多様化している。「ハロウィン=仮装」というイメージが強いが、マクロミルの調査によると、「ハロウィンの仮装をしたいか」という問いに対して、「はい」と答えたのは、10~20代の若年層でも約2割にとどまっている。ハロウィンで何をしたいかという楽しみ方に関しては、「仮装よりハロウィングッズが欲しい」との回答が多く、仮装よりも買い物を楽しみたい層の方が多いことが明らかになった。ハロウィングッズを買いたいと考える人は全体の34%と、買い物を楽しむ人が多いようだ。意外にも、ハロウィンで仮装したいと考えているのは少数派であることが分かる。

 

「仮装して街に繰り出すほどではないが、ハロウィン自体は楽しみたい」と考える層が増えているようだ。その理由は、Instagramのストーリーズに代表されるような動画配信SNSの普及だろう。リアルタイムで楽しむ様子を様々な人と瞬時に共有できることから、わざわざ街に出ていく必要性がなくなってきたようだ。そこで最近増加しているのが「おうちハロウィン」だ。レストランの個室や家ならば、周囲を気にせずに楽しむことができるし、その様子をSNSで投稿するときもクオリティを創り出すこともできる。

そんなニーズに合わせて、ハロウィン女子会プランと称してバルーンや衣装、限定フードメニューを用意するホテルも増加している。

ヒルトン東京お台場のスイーツビュッフェでは、”ビビッドかわいい”モンスタースイーツが集結。写真映えしそうなカラフルで遊び心のあるスイーツなど、ユニークでバラエティに富んだラインナップとなっている。

 

お洒落で上品なイベントを開催する動きも

長年ハロウィン文化を発信してきた渋谷のイベントにも変化が。2016年には、仮装なしでおしゃれに着飾った女性たちが夜の渋谷の街をパレードする「オフハロウィン」が開催された。これは、ハロウィン当日のマナー向上を目的に渋谷区観光協会が企画したもので、ただ仮装をして騒ぐというようなことに飽きた「ハロウィン疲れ」の人や、「楽しみたいけど仮装までは…」という人にもぴったりなイベントだ。このようにハロウィンを上質でマナーの良いイベントにしていこうという動きも盛んだ。

 

今年、USJの打ち出した「大人ハロウィーン ハロウィーン・ホラー・ナイト」の企画も興味深い。大人向けをうたっており、コスプレエレガントなハロウィーンスタイルにドレスアップして“アーティスティックで歪んだ世界”に迷い込む、今までにない体験となっている。完全没入型ホラー・メイズであなた自身が物語の一員となったり、ヴァンパイアの住処やゴーストがさまよう朽ちた船に誘われたり、とダーク・ホラーの迷宮を味わいつくす、大人のための空間となっている。華やかなラウンジやフォト・スポットもあり、「プレミアム」「ラグジュアリー」といった今までのハロウィンにはあまりなかった企画となっている。

 

一方で、最近はリアルイベントとSNSが連動した施策も多く行われている。

バカルディ ジャパンが輸入し、サッポロビール株式会社が販売する世界No.1*ラム、バカルディは、「BACARDIGRAFFITI HALLOWEEN」と題し、デジタル上で自分自身が“アートなモンスター”に生まれ変わるハロウィン体験を提供するキャンペーンを実施した。

ハロウィン当日、キャンペーン当選者とその仲間達は世界で注目される特殊メイクアーティストJIRO氏監修の特殊メイクと仮装を施され、「バカルディバット」として渋谷・道頓堀の街中に繰り出す。同時に、彼らを見つけた人が「バカルディバット」の写真をSNSへ投稿すると総額100万円もらえるオープンキャンペーンを実施した。また、この様子をSNSでシェアすることで、街中だけでなく、SNS上でもハロウィン仮装を楽しめる内容となっている。

 

また、アサヒグループ食品株式会社は、昨年ハロウィン限定パッケージ商品『ミンティア オレンジ×カシスMIX』を発売し、アプリやSNSと連動したキャンペーンを実施。

ハロウィンの写真を専用フィルタで簡単に加工できるミンティアオリジナル写真加工アプリ「MINTIACam(ミンティアカム)」を展開し、ハロウィンを盛り上げた。このアプリは、撮影した写真を、ミンティアオリジナルの専用フィルタで簡単に加工できるもので、対象のミンティア商品(レギュラー12品)のパッケージを読み込むと、使用できるフィルタデザインが増えていく仕組みとなっている。

さらに、ハロウィン写真撮影イベント「MINTIA HALLOWEEN PHOTO BOMB」も実施した。このイベントは、SHIBUYA109前イベントスペースに用意されたオリジナルハロウィンボードの前でフラッシュ撮影をすると、撮影した写真に変化があるという驚きの仕掛けだ。

先述したミンティアオリジナル写真アプリ「MINTIACam」で加工した写真や、写真撮影イベント「MINTIA HALLOWEEN PHOTO BOMB」で撮影した写真を「MINTIAHALLOWEEN」もしくは「#ミンティアハロウィン」とハッシュタグをつけ、ツイッターかインスタグラムに投稿した方の中から商品が当たるというキャンペーンも連動して行い、話題喚起を図った。

 

このように、リアルイベントとSNS・アプリ等と連動した施策を行うことで、より商品の魅力をや話題性を高めることが可能になっている。

 

ハロウィン市場が盛り上がり始めて約6年。今までの「若者だけが楽しむ」ものから、より年齢層を広げる仕掛けが広まっている。ハロウィン施策を検討している企業は、今までのハロウィン施策のターゲット層ではない層への施策を検討してみてはいかがだろうか?

 

 

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かんな
Post Author

かんな

1995年生まれ。静岡出身。首都大学東京経済経営学部に在学し、マーケティングを専攻。カメラが趣味でInstagramを中心としたSNSについて勉強中。