Pew Research Centerの研究によってアメリカのミレニアル世代が、それ以上の世代よりも公共図書館やブックモバイル(キャンピングカーのような車の中に本を積む、移動型の図書館)を利用していることがわかりました。また、Pew Research Centerの行った調査によると、過去1年間に印刷版書籍を1冊以上読書した人の割合が、ミレニアル以上の世代の人が64%であったのに対し、ミレニアル世代は75%もいます。

 

スマホが普及し、いつでもどこでも知りたい情報を検索で知れる、また、電子書籍が普及した現在、なぜアメリカのミレニアル世代はこれほど図書館を好むのでしょうか?


地域主体のアメリカ図書館ならでは

元々、アメリカの公共図書館は、市民からの働きかけによって設置されてきたという歴史的な背景があります。その名残から、現在でもアメリカの公共図書館の設置は地方自治体もしくは、学校区や行政区などが独自の判断において行っています。

 

加えて、アメリカには図書館に関する法律「図書館サービス・技術方(Library Services Technology Act)」が存在します。そこでは、図書館サービスは「図書館来館者だけでなく、特別なサービスを必要とする人(老人や施設収容や、身体障害者、ホームレス、英語を話すことができない移民者)」などへ施すものとされています。


アクロン・サミット郡公共図書館より

 

これらの歴史的背景、政治的背景を持つアメリカの公共図書館は、人々が触れ合う場所という認識を持たれることが多くあります。そのため、アメリカの図書館では語学学習や本に関するものだけに留まらないイベントが多数開催されています。具体的なものとして挙げられるのは、学校教育を受けられないホームレスの若者に対して提供するSTEM(Science、Technology、Engineering and Mathematics)学習プログラムや、映像デザイン・ロボット工学・コンピュータープログラミング・3Dプリンタなど、最新技術を体験してもらうワークショップです。


キトサップ地域図書館より

 

また、若者のホームレスに対しては、社会福祉事業者を招き、自身の抱える悩みについての相談会を開いたり、若者であるホームレスが職に就いたり教育を受けるためにどうすればいいのかというような情報交換会などが開かれています。


ミレニアルズは図書館のオンライン化を嫌っている

ミレニアルズは実際にどのような目的で図書館に足を運んでいるのでしょうか?ミレニアルズは図書館をどのような場所であると捉えているのでしょうか。

 

Pew Research Centerの行った「実際に図書館で何をしていますか?」というアンケートに対してのミレニアルズの回答の多くは次のようなものです。「興味のあるトピックについての調べ物」、「座席での読書やメディアの利用」、「図書館員(司書)との交流」、「勉強のため、あるいはぶらぶらと時間を過ごす」など。

 

また、「公共図書館に期待すること」というアンケートに対してのミレニアルズの回答は、「学校図書館との連携」、「無料のリテラシープログラムの実施」、「より快適なスペース作り」などです。

 

加えて、「図書館が絶対に実施すべきでないこと」というアンケートに対しては「図書館をオンラインに移行する」、「図書館のサービスを自動化する」と回答しています。


カンザス大学図書館より

 

アンケート結果から、世界中の図書館が共通して持つ、印刷書籍を読む、印刷書籍で調べ物をするという利用も当然見られました。しかし、それよりも図書館の“空間”がミレニアルズに人気の鍵となっています。

 

「図書館が絶対に実施すべきでないこと」というアンケートへの回答を見ても、図書館をオンラインに移行するということについて、ミレニアルズは疑問視し、懸念しています。

 

現在はインターネットが普及し、検索をかければ探し物が見つかる時代です。その中で、ただ利便性だけを重視し紙媒体の書籍を排除したり、本についての知識を持つ図書館員との交流の場をなくしたりすることは、ミレニアルズにとって好ましくないことのようです。


日本の図書館はどうすべきなのか

様々なデータが電子的に処理されるようになり、様々な施設の設備が自動化されていく今の時代において、図書館を存続させ、図書館員を確保し、さらに図書館へ人を集めるのは容易なことではないでしょう。

 

しかし、アメリカでは若者が図書館を好み、必要としている事実が見て取れます。アメリカと日本では、他人とのコミュニケーションの積極性という点大きく差がありますが、日本の図書館作りは、アメリカの図書館に習えることが多くありそうです。

 

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竹林広
Post Author

竹林広

1996年生まれのフリーライター。京都出身。慶應義塾大学文学部に在学し、人間科学を専攻。フリーライターの父を持ち、父の働く姿を見てライター業に興味を持つ。趣味は温泉と寺社仏閣巡り。