2016.9.29

リアル店舗でのセールスやプロモーションといえば、店頭での声かけや、ポスターなどの広告、あるいはショーウィンドウを素敵に飾ることなどがあげられます。自社のブランドを知らない、街を歩いている人々にお店の中に入ってもらうためには、ショーウィンドウで何かを仕掛ける必要があります。

今回は、ショーウィンドウを活用して、来店促進を図る、ユーザーとコミュニケーションを図った先進事例をご紹介します。

ショーウィンドウからブランドストーリーを発信ーHiut Denim Co.(ヒウトデニム)

イギリスは西ウェールズのCardiganという小さな町にあるジーンズブランド、Hiut Denim Co.は、ロンドンのセレクトショップRivet&Hideのショーウィンドウにて、ブランドのストーリーや製品の詳細を伝えるプロモーションを行いました。

ショップウィンドウResizedImage600339-Screen-Shot-2014-09-25-at-11.55.00

WGSNより

ショーウィンドウの前を人が通るとセンサーが反応し、“ブランドの歴史についてもっと知りたければウィンドウをタッチして。“と話しかけます。窓には電導性インクで塗られたコンテンツごとのステッカーが貼ってあり、それらをタッチすると対応した電球が光り、ブランドの歴史について音声が流れる、という仕組みです。Hiut Denimの創業者、David Hieatt氏は「今回の企画は、私たちのブランドがデニムブランドとしてのポジションを確立することに貢献してくれた」と語っています。

思わずSNSに上げたくなる写真が撮れるーJonathan Trumbull(ジョナサン・トランブル)

紳士服ブランドのJonathan Trumbull(ジョナサン・トランブル)は、クリスマス期間に「Face in the Snow」と名付けた顔認識機能を搭載したデジタルサイネージを店頭に設置しました。これは顧客とブランドの交流を図ることでエンゲージメントを高め、クリスマス期間の売り上げ増加を狙ったものです。

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Youtube
より

サイネージには雪が降っている映像が流れており、立ち止まった人々はまるで自分が雪の中にいるような写真を撮ることができます。撮影すると、サイネージに4桁のコードと特設サイトのURLが「写真を見たかったらサイトに訪問してね」の文字とともに表示されます。

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Jonathan Trumbull&Hatters Facebookページ
より

特設サイトにコードを打ち込むとJonathan&TrumbullのFacebookギャラリーに繋がります。ユーザーはここから写真をダウンロードし、自身のSNSに投稿することができます。このプロジェクトでは3週間で679人が写真を撮影し、FacebookやTwitterに写真が多く投稿されました。

JonathanTrumbellの経営ディレクターのDavid Kingsley氏は「このプロジェクトによって客足が増え、クリスマス期間の売り上げも例年より増加した」と述べています。

スクリーン内のおじさんが話しかけてくるーAstra(アストラ)

ドイツのビールブランドAstra(アストラ)は、女性をターゲットにしたプロモーションを行いました。これは男性と比べてビールをあまり飲まないとされる女性に、もっとビールを飲んでもらうことを目的としており、女性にだけ好感的な反応をするデジタルサイネージをバーの前に設置しました。
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Youtubeより

搭載されたカメラによって性別、年齢が分析され、70種類のパターンから適した映像が流れます。女性には「一緒にビール飲まない?」と親しげに話しかける一方で、男性には「ここには男性用のものはないよ!」と素っ気なく返します。

また子供には「ビールは16歳から!」と注意をするシーンも。まるで中のおじさんと会話しているかのような面白おかしい様子は、多くのメディアやSNSで拡散され、バーの前には行列ができるほどになりました。女性をターゲティングしたインタラクティブなコミュニケーションが非常に面白い企画です。

タッチするとクーポンがもらえる購買施策ーAinz&Tulpe(アインズ&トルペ)

新宿駅東口前に昨年夏にオープンしたAins&Tulpe(アインズ&トルペ)では、「LOOKS」と名付けられた幅11mものデジタルサイネージが設置されています。「LOOKS」では、広告や天気情報などの他に、ショップで取り扱っている化粧品を使用したメイクルックを表示しています。
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Vimeoより

サイネージ越しに、気になったメイクルックをタッチすると、商品の割引クーポンと、無料メイク体験チケットが発行されます。サイネージに搭載された顔認識センサーが、画面をタッチした人の出身国を特定し、その人の母国語でクーポンを発行するため、外国人観光客も楽しめる仕組みとなっています。

このデジタルサイネージは日本円で約6.2億円以上の広告価値があると算出されました。また、この取り組みによって来客数が40%増加、メディアインプレッションも50億に上り、効果は絶大と言えるでしょう。また、革新的なこのサービスは海外のメディアでも多く取り上げられ、注目を集めました。

ショーウィンドウのガラスがデジタルサイネージに—ZARA(ザラ)

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Butter Boomより

香港の中心地、クイーンズロードのZARA(ザラ)では、ショップウィンドウにX-glass LEDと呼ばれる巨大な透明スクリーンを設置し、新作の服を着たモデルたちの映像を流しています。ZARAといえば全面ガラス張りで店内の様子が見やすく、開放的を与えることでお客さんをお店に入りやすくする店舗デザインが特徴的です。こちらのデジタルサイネージはどんどん映像が切り替わり、背景が透けるようになる瞬間もあるため、圧迫感を与えずにZARAの店舗デザインに馴染むようになっています。
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Youtubeより

一つのウィンドウで飾れるマネキンの数には限界があることや、動いている人間が着ている様子を見る方が服のディテールが予想しやすい点など、従来のショップウィンドウより拡張したコンテンツを配信することが可能です。また幅2.5m、高さ8mという大きさで、人通りの多い香港のメインストリートでもしっかり注目を集めることに成功しています。

また、このような透明なデジタルサイネージは、日本でもいくつかの企業が開発を行っています。

こちらはパナソニックが開発している透明スクリーンです。既存のガラスと置き換えが可能なので、特別なスペースもいらず、すぐに導入することが可能です。ショーウィンドウ内の服をモデルが着こなす映像が流れることで、着用イメージが湧きやすいというメリットがあります。

さいごに

日本でも都心では、店頭にデジタルサイネージを設置した店舗を見かけるようになりました。しかし、今回ご紹介したようなプラスαの要素を持ったものはまだ少ないように感じます。ご紹介した5つの事例はほとんど海外のものですが、日本でもインタラクティブな仕掛けが増えれば、ウィンドウショッピングも楽しくなりそうですね!

Text:Karin Satomi

Written by
COMPASS編集部
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