2017年夏、米国内における映画の総興行収入は前年と比べ、14.6%減少となった。ミレニアル世代においてはNetflixなどの動画配信サービスが人気を得ており、若者のテレビ離れが話題となっている。映画もその例外ではないようだ。

 

しかし、そのような背景の中、米国においてミレニアルズから多大な支持を集めた映画があった。それが「スパイダーマン:ホームカミング」だ。2017年6月28日に初公開された当作品は、最終的に世界全体で、8億7,900万ドル(約1,000億円)の興行収入記録した。

 

そして、マーケティングデータ分析会社Movioの調査によると、米国内における当作品の観客は、4人に1人がミニレアル世代の男性であることがわかった。映画界全体の興行収入が伸び悩む中、「スパイダーマン:ホームカミング」は一体なぜこれほど若者に支持されたのだろうか。

 

等身大かつリアルであることが なにより重要

今夏に公開された「スパイダーマン:ホームカミング」は、映画の第6作目の作品だ。シリーズ3作目が過去最高興行収入(世界全体で8億9,000万ドル、約1,010億円)を記録した後、スパイダーマンシリーズの興行収入は下降の一途をたどる。しかし、今作は3作目とほぼ変わらない興行収入を記録した。

 

スパイダーマンシリーズは、全ての作品で同一の主人公が登場。スパイダーマンの正体は、高校生の青年であり、その設定は全作品で共通している。悪に立ち向かう正義の姿だけでなく、普通の学校生活を送り、恋人と交際をし、様々なことに苦悩する姿が、ミレニアル世代にとって非常に共感を呼ぶ。

 

そのような共感は、過去の作品の中にもあっただろう。その中でも、今作が特にミレニアルズから共感を呼んだのは、主人公を演じる俳優の年齢の若さだった。過去の作品で主人公を務めた俳優はいずれも出演時30歳前後。高校生らしさを等身大で演出するのは難しい。しかし、今作の主人公を演じるのは20歳(撮影時)。過去の作品と比べて一番高校生に近く、まだティーンとしての面影を残したリアルな演技があった。


今作で主人公を務めたトム・ホランド(撮影時20歳) Cinema Café,netより


撮影時も
Instagramで舞台裏を届けていた

彼がミレニアルズから共感を呼んだのは、その若さだけが理由ではない。Instagramでは約430万人のフォロワーを持ち、積極的に撮影現場の風景や舞台裏を配信していた。作品告知のためにポスター写真などを活用するのではなく、リアルな撮影現場を投稿していたことで、ファンとのコミュニケーションの熱度をあげていったのだ。

Watching playback with the boss man. @jnwtts #spidermanhomecoming

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ミレニアルズはデジタルネイティブとして育った世代であり、SNSで人と繋がることを他の世代より強く重視している。主演俳優の配信するInstagram投稿を日々閲覧し、作品との距離も縮めていった。

 

おバカな笑いや派手な描写は 支持されない

「スパイダーマン:ホームカミング」は、ファンと等身大の姿や、主演俳優によるInstagram投稿がミレニアルズによって、ヒットを収めた。ここからもミレニアルズは「共感」をとても重要視していることがわかるが、それを裏付けるのが、ミレニアルズにとって、おバカな笑いを誘うコメディ映画が全くウケなくなっているということだ。

 

今夏に米国で公開されたコメディ映画として、「The House」や「Rough Night」などがある。「The House」は、子供の学費を捻出するために自宅をカジノに変身させ、そこで騒ぐ様子が描かれた作品。また「Rough Night」は、結婚を控えた女性が女友達とクラブではしゃぎ、コテージに男性ストリッパーを呼ぶシーンなどが描かれる。どちらもおバカな笑いを誘うコメディ映画であるが、両作品はともに、興行成績は振るわなかった。2017年度上半期の興行収入ランキングでは50位圏外。カジノで騒ぎ大儲けする、クラブで酔っ払い、ストリッパーを呼ぶ、このような姿はミレニアルズから共感を得ず、ウケないのだ。

 

公益社団法人経済同友会の調査でも、ミレニアルズの育った時代は経済環境の厳しい時代だったと報告されている。派手な姿の描写はミレニアルズに共感されないのだ。「スパイダーマン:ホームカミング」もスーパーヒーローという、現実にはありえない設定である。しかし、普段はごく平凡な高校生であり、恋に悩み、友人・家族関係に悩む姿は、ミレニアルズにとっては身近な内容だ。

 

今後の映画業界は、どのようになっていくのだろうか。冒頭でもあげたように、映画界全体での総興行収入は大幅に減ってきている。ミレニアルズが、Netflixなどの動画配信サービスを支持していることは大きいだろう。しかし今回ピックアップしたように、多くのミレニアルズを動かした映画があるのもまた事実だ。ミレニアルズを巻き込む、映画作りは米国において課題とも言えるだろう。

 

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竹林広
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竹林広

1996年生まれのフリーライター。京都出身。慶應義塾大学文学部に在学し、人間科学を専攻。フリーライターの父を持ち、父の働く姿を見てライター業に興味を持つ。趣味は温泉と寺社仏閣巡り。