2017年10月24日、コワーキングスペースのWeWork(ウィーワーク)が、ニューヨーク拠点の老舗高級デパートLord&Taylor(ロード・アンド・テイラー)のニューヨーク旗艦店を8億5,000万ドル(965億円)で買収した。

 

ロード・アンド・テイラーは、2018年のホリデーシーズンまで通常営業を行う。その後、売り場面積を4分の1以下に縮小し、ビルの下層階をWeWorkから賃貸する形で営業を続ける。残りのスペースにはWeWorkのニューヨーク本社と、コワーキングスペースが入る予定だ。今回の買収には、WeWork独自の新たなエコシステムを構築する狙いがある。


売り上げが低迷する米国小売業界

ロード・アンド・テイラーは、1826年創業の米国のデパートチェーン。米国で最も古いデパートの1つで、今回買収されるニューヨークの旗艦店は、1914年の2月にオープンした。

 

現在米国では、ECサイトの普及により大手デパートを含め、小売店舗の売り上げが低迷している。小売店舗の閉店が相次いでいる中、老舗デパートのロード・アンド・テイラーもその例外ではなかった。


革新的なコワーキングスペースWeWorkとは


WeWorkより

 

一方、WeWorkは2010年設立以降、順調に拡大。2017年11月現在、世界21国に244か所以上のコワーキングスペースを持つ。2018年には、日本にもコワーキングスペースを展開する予定だ。

 

WeWorkは、マイクロソフト、ゼネラル・エレクトリックなどの大企業から、スタートアップやフリーランスに至るまで、幅広く利用されている。


WeWorkより

 

また、WeWorkが行っているのは単なるコワーキングスペースの提供だけではない。充実した設備内容に加え、“コミュニティ”を重視したコワーキングスペース作りに注力している。

 

WeWorkでは、仕事後の時間に、利用者に向けて交流イベントや啓蒙イベントを頻繁に開催している。また、各拠点にコミュニティマネージャーを設置。彼らが、利用者同士の交流を促し、仲介役となる。


WeWorkより

 

さらに、WeWorkには利用者専用のSNSが存在する。専用のSNSを使うことにより、同じオフィスを利用する人同士だけでなく、他のオフィスに通う利用者ともつながりを持てる。WeWorkは、オフラインとオンラインにおいて、コミュニティ作りに取り組んでいる。


狙いは新たなエコシステムを構築すること

老舗デパートのロード・アンド・テイラーは、老舗高級デパートというイメージを刷新し、ミレニアルズを顧客層として獲得していくことが大きな課題となっている。

 

WeWorkの利用者にはテック企業関連者も多く、ミレニアルズをはじめとした若者が多く存在する。今回の買収により、ロード・アンド・テイラーは、WeWorkの若い利用者を、顧客として獲得できると期待している。


WeWork YouTubeより

 

WeWorkにおいては、今回の買収でブランド力の向上を狙う。米国で由緒ある高級老舗デパート内に拠点を持つことは、ブランディングとしての効果を持つ。また、ロード・アンド・テイラーの立地は抜群であり、WeWorkのコワーキングスペースへの集客効果も見込めるのだ。

 

今回の買収は、今後他デパートと組み、コワーキングスペースを展開していくための布石ともなっている。

 

WeWorkのCEOであるAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏は、大都市に住む人々は、人とのつながりを持てる場所を探している。その中で小売がそれに貢献しない手はない。」といった内容を話している。


WeWork YouTubeより

 

WeWorkは、2016年に部屋のレンタルサービスWeLive(ウィーライブ)を開始。直近ではフィットネスジムを開設したり、プログラミングスクールFlatiron School(フラットアイロン・スクール)の買収なども行っている。生産、消費、共有、コミュニティなど、人間の生活にとって必要なすべてを包み込んだエコシステムの構築に向けて本格的に動き始めている。

 

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森本進也
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森本進也

ライター。1989年生まれ。IT、経営、マーケティング、金融、バイオ、医療等の領域において海外の最新トレンドを追っている。好きなメディアはTechCrunch、Business Insider、Scientific American。