2016年8月にInstagramが新たに実装した、24時間で自動的に投稿が消えるサービス「Instagram Stories(インスタグラム ストーリーズ)。最近では広告の試験運用が開始するなど、個人だけでなく企業もInstagram Storiesを活用するようになってきています。

毎日、さまざまな画像や動画が投稿される中、とあるアカウントの投稿が話題を集めました。それはアディダス ジャパンのInstagramアカウント「@adidastokyo」が投稿した、3Dテクノロジーを駆使したシューズ「3D Runner(スリーディー ランナー)」の限定50足の販売キャンペーンです。

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投稿が24時間で消えるため、「常にチェックしておかないと……」という危機感の醸成が功を奏し、販売店舗には多くのファンが詰めかけ、あっという間に売り切れました。なぜ、Instagram Storiesを使って販売場所の告知を行うようにしたのか。その狙いを、Tokyoニュースルームの朝原クリストファーさん、成田 伶奈さん、川松健太郎さんに伺いました。

コアファンに情報を届けるためInstagram Storiesを

まずはじめに、「adidasTOKYO」とはどういったアカウントなのでしょうか?

朝原そもそも、adidasTOKYOはパイロットプログラムだったんですよ。2020年に向けて、「SPEED(スピード)」、「CITIES(シティ)」、「OPEN SOURCE(オープンソース)」という 3つのキーワードを軸にした戦略を発表していたこともあり、本社から「“都市にフォーカス”したソーシャルアカウントを持ってみないか?」と言われて。

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朝原クリストファーさん

朝原それでadidasが東京で何をやっているのか、常に情報を発信していくadidasTOKYOというInstagramのアカウントを作ることにしたんです。各国のアカウントはあるのですが、都市にフォーカスしたアカウントはニューヨークと東京のみとなっています。

 

今回のキャンペーンを行おうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

成田3D Runnerはニューヨーク、ロンドン、東京でしか販売しない、世界的にも希少価値の高い限定商品でした。こういった限定の靴こそ本当のファンの人たちに買ってもらいたい。そう思ったので、adidasTOKYOをフォローしてくれているコアファンの人たちにしか情報が届かないようなキャンペーンをすることにしました。

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adidasTOKYOのInstagramアカウント


限定50足の靴を販売するという大切な情報をFacebook、Twitterを使わず、なぜInstagram Stories上で完結させたのでしょうか?

成田限定感が演出できるかな、と思ったからです。Facebook、Twitterで情報を出すというのはいつもやっていて。Instagram Storiesのみでの情報公開は今までやってこなかったので、より限定感が伝わるかなと。

 

朝原それに加えて、もう一つの理由が通常の投稿にこだわっていたからです。adidasTOKYOはシンプルにブランド訴求の目的でアカウントを立ち上げているので、あまり「この日、この場所で売ります」という告知はしたくないんです。だから3D Runnerの販売も24時間で自動的に投稿が消える、タイムラインのクリエイティブに影響を与えないということで、Instagram Storiesを活用しました。

 

川松Facebook、Twitterはリンクが貼れてしまうので投稿したら販促感が強くなってしまう。でもInstagramだけは販促というより、ユーザーとのコミュニケーションのために運用しているアカウントなので、ブランディングを大切にしている。「adidasって何か面白いことやってるな」と思ってもらうためのものなので、Instagram Stories上で完結させました。

 

4日間で2,000人のフォロワーが増加

ちなみにInstagram Storiesは使われてました?

川松はい。イベントの始まりから終わりまで、ストーリー展開でリアルタイムで伝えるためにインスタストーリーを使っていました。実際に使ってみて、普段のタイムラインへの投稿よりもInstagram Storiesの方が見られているという実感はありました。

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川松健太郎さん

 

だからこそ、今回Instagram Storiesを活用したキャンペーンを仕掛けたと。

成田そうですね。それ加えて、今回は“3Dプリンターを使って作られた限定50足の靴”を訴求するために、普通に投稿ではなく、Instagram Storiesで仕掛けを用意することで注目を集めたかったんです。あとは24時間で消えるということで、常にチェックしておかないと情報を見逃してしまう雰囲気を醸成できるのかな、と。

 

川松いつもはWebの抽選販売だけで終わってしまうのですが、それだけだとつまらないじゃないですか。せっかく東京限定で販売するということで、ちょっとした遊び心を持って情報を流したいと思い、最新ツールであるInstagram Storiesを使ってみることにしました。

 

このキャンペーンを知ったとき、告知の方法がすごくユニークだと思いました。

成田とにかくInstagramのアカウントに人を集めなければ、と思っていて。まず手始めに、「こういった靴が発売されます。販売方法の詳細はInstagram Storiesでお知らせします」と情報をリリースしてみたんです。そうしたら、Instagramのアカウントをチェックしてもらえるようになりましたね。それまではInstagram Storiesの平均ビュー数も2000くらいだったんですけど、一気に5000くらいまで増えて、フォロワーも最終的には4日間のキャンペーン期間で2000人以上は増えたと思います。

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成田伶奈さん

 

そ、そんなに…!すごいですね!

朝原ただ、その一方で批判も少なからずあって。「東京にいる人しか買えないじゃないか」、「そんなに暇じゃない」みたいなコメントは思ったよりも届きましたね。

我々としては批判されたことも含め勉強になりましたが、少なからず期待感を作れたのは良かったと思っています。やっぱり多くの人がどうでもいいやと思ったり、期待がなかったりしたら、反応すらないじゃないですか。ある意味で、盛り上がれたのではないか、と。

 

SNSにしかできないコミュニケーションを

今回、Instagram Storiesを活用して良かった点はありますか?

川松adidasはSNS運用の戦略として“be most personal brand(1対1で語りかけるようなコミュニケーションをする)”をグローバルで掲げていて。これまでは新商品の紹介など広告っぽい投稿がメインだったのですが、今回の取り組みを通して消費者と直接コミュニケーションをとれたり、リアルタイムに消費者の反応が伺ったりすることができたのは良かったです。

 

成田adidasTOKYOをチェックしておけばすごく重要な情報が知れるかもしれない、というのを認識してもらえたのは今後の運用を考えても効果的だったと思います。

 

なるほど。その他にキャンペーンを振り返ってみて何か印象的な出来事はありましたか?

朝原キャンペーンの途中で一旦、さらに注目を集めるために、Instagram Storiesを見て1番早く来た人には無料で3D Runnerをプレゼントする、という企画を実施したんです。あれはすごくドキドキしましたね。

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朝原この取り組みはadidasNYCがやっていたことをヒントにしたんです。実際、30分ぐらい待ってみたら、数人から「まだいますか?」、「今、新宿にいますが間に合いますか?」とダイレクトメッセージが来て。「それは来てからのお楽しみだよ」と返信するなど、コミュニケーションを楽しんでいたら、「adidasTOKYOさんですか?」って恐る恐る話しかけてくれる人が来たんですよ。

最初は不安だったのですが、スニーカーが好きそうなお兄さんだったから良かったです。adidasTOKYOのアカウントの目的でもある、東京のリアルな情報を発信することもできて、良い取り組みになったのかなと思います。

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実際に手に渡った方の様子も配信

 

ありがとうございます。最後に今後仕掛けてみようと思っていることなど、具体的な展望があれば教えてください。

川松今後、オープンソースなクリエーターとコラボして、東京を舞台に動画作っていきたいなと思っています。あと、来年はFIFAワールドカップ™もあり、さらに2020年には東京で世界的なスポーツイベントがある。もっと日本全体のスポーツへの関心を高めていけるように、スポーツに関わるライブ放送やadidasにしかできないアスリートを活用したソーシャル限定のコンテンツを作っていきたいと思います。

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成田私は、ソーシャルでなければ出来ないことをやりたいなと思っていて。最近流行ってきている縦型の動画やソーシャルに最適化した動画など、短いけれどちょっと面白い動画をたくさん作り、それをもとにコミュニケーションを活性化させたいなと思います。

あとは現在チームメンバーの人数も限られていて、あまり手が回っていないのですが、もっと1対1のコミュニケーションに力を入れていきたい。Most personal brandになるためにコミュニケーションをとり、絆を深めていけたらいいなと思っています。

 

2016年、話題を集めたadidasのプロモーション。“24時間で消える”というInstagram Storiesの特性を活かし、限定感を醸し出したことが成功の要因だったのかもしれません。また、今回話を聞いてみて、“ユーザーとのコミュニケーション”を大切にしていることも印象的でした。昨今増えつつある、企業のInstagram Storiesの活用。果たしてどのように活用するのがいいのか、COMPASSでは今後も企業の活用事例を追っていきたいと思います。

 

Interview photo:ENO SHOHKI

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新國 翔大
Post Author

新國 翔大

1991年生まれ。埼玉県出身。U-NOTE、サムライトでライター・編集者としての経験を積み、現在はBASEに所属。ショッピングメディア「BASE Mag」の運営をしつつ、フリーのライターとして活動している。