街で見かけるプロモーションや屋外広告に目を奪われたことはないでしょうか。Twitter、InstagramなどSNSでその様子を見たことがある人もいるはずです。環境になじんでいる広告を指す、「アンビエント広告」で、カンヌライオンやOneShow、クリオ賞、アドフェストなど全ての賞で金賞受賞し、第一線を走り続けているのが、株式会社メディアコンシェルジュの大谷昭徳氏です。今回は、街中で人を惹き付けるための仕掛け作りやコミュニケーションの極意について、お話を伺いました。

 

1コマ漫画を街につくりだす

―大谷さんがやられているお仕事はプロモーションやイベント制作ではなく、アンビエント広告と言ったらいいのでしょうか?

大谷:そうですね。アンビエントっていうのは環境って意味で、そこの環境を広告にするってことですね。基本的に写真を撮られることを目的としていて、だからその写真の中に情報がないといけない。

大谷:ニューヨークとかロサンゼルスだと、とても大きい広告があってそれだけで目立つのですが、東京の条例では広告の大きさが制限されていて、大きさで目立つ広告は作りにくい。だから、大きさだけではなく、アイデアの力で驚きを作り出すのがアンビエント広告であり、弊社の仕事です。

 

要は写真1枚の中に全てのメッセージを詰め込んでいて、4コマ漫画じゃなくて1コマ漫画のようなイメージでしょうか。多分、これを追求して目指している人って少ないと思います。

大谷:これはサッカー日本代表のジャージ発表のときなんですけど。午後2時に渋谷のとある会場で発表があって、発表するまでは裸の中村俊輔が、発表と同時にユニフォームを着るというスタンツ広告です。メディアの人たちも発表に行く時に裸の状態を見て、記者会見場から出てきたらジャージを着ているので驚いてくれて、たくさん撮影してもらえましたね。

 

※スタンツ広告…トリック広告やギミック広告と同義語で、奇手を用いて人を驚かせる類の広告のこと

 

―効果としてはどうだったんでしょう?

大谷:結果として、渋谷は人で大変なことになって。ただ話題として広げるためにはテレビとか新聞にこだわる必要はないという話なんですよね。広告を被写体化・フォトジェニックにすることで、撮影した人は誰かにその写真を見せる。それがどんどん広がっていくイメージを、この時は2002年だったのですが思っていました。

 

―広告の被写体化って面白いですね。

大谷:この頃はTwitterもFacebookもInstagramも無い。でもこれだけの人がガラケーで写真を撮ってて、恐らくそれを「写メ」とかで広げてくれていたんじゃないでしょうか。

大谷:サッカー関連だとこれもそう。実際に人をくくりつけてサッカーさせてます。

大谷:渋谷の109の隣でやったんです。そのときのプロジェクトとかを画像検索とかTwitterで検索したときに、きちんと写真が出て来る状況を目指しています。例えばイベントだと写真を撮る場所が用意してあって、そこでインスタグラマーとかがロゴ、ハッシュタグなんかで投稿するじゃないですか。今で言うと「○○ちゃんとイベントに行ってきたよ!」とかっていう投稿をしてもらって、さり気なく企業のロゴとかが入っているイメージですかね。でも僕は言葉無しで、街中で写真を撮ってもらったときに、その写真1枚の中に伝えたい情報を詰め込むわけです。その方がアンビエント広告としては正しいと思っています。

 

2度見してしまう「違和感」を創出

―写真に撮りたくなるようなものは、どういう風に発想しているんですか?

大谷:僕が良く言うのは「違和感」ですね。要するに非日常を作るってことです。でも実はテクニックがあって、絶対安全だけど見た目ヒヤヒヤするようなものとか。ちゃんと危なくないように作っているうえで、思わず見ちゃうような状況を作るようにしています。

 

「なんだこれ、こんなものここにあったっけ」っていう驚きがあって2度見してもらうんですよね。大きく作られていたり、すごく精巧に作られていたり、なにかしらギミックがあって体験出来るようになっていたり。


綾鷹のプロモーションでは超巨大なこたつが出現


映画「シュレック」の記者会見前では、本番の時間までシュレックが電話をしていたり、トイレにいるなどの細かい演出も

 

―そうした考えを頭においても、なかなか大谷さんのようなユーモアのあるアイディアは思いつけない気がします。

大谷:いやいや、そんなことはないですよ。ただ写真を撮った時に全部情報が入っているか、というところまで考えている人がそんなに居ないかもしれない。CMだったら15-30秒で考えるし、グラフィックだったら紙面の中で考えますからね。どちらかと言うと僕はスタジオじゃなくてライブなので、一般の人が写真を撮ってトリミングしてSNSに載せるところまで計算しています。

 

地震があって電気を使わない、自粛ムードの中でやったのがこれですね。電気を使わないで日影を作るコカ・コーラZEROベンチ。影がコカ・コーラZEROになってるんですよ。

―これすごいですね!写真に撮りたくなりますね。

大谷:ボタンを押すとミストが出る仕掛けもやりました。見たことないもの、やったことがないことって見たことがない理由があって思いつかなかったか、思いついてもできなかったかのどちらかなんですよ。

 

あと、これはファンタの看板なんですけど、学校の近くに立てて登校時間になるとシャボン玉を出すっていう仕組みです、同時に香りも出るんですけど。

大谷:お客様相談室には、何時からシャボン玉がでるのかとか、いつまでやるのかとか、子供が見とれて学校に遅れそうだったとか、たくさん反響がありました。今だったら、反響はTwitterで追えるんですけど、当時は電話で反響を感じていました。

 

いたずらこそアンビエント広告

―企画するときに気をつけていることってなんですか?

大谷:やっぱり世の中に設置するものが多いから、リスクは十分に配慮しています。特に物理的なリスクは絶対あっちゃいけないから、細心の注意を払うように。ただ公共の場所という難しさはあるので、思い切った企画を思いついてもストップすることもあるし、逆にリスクを潰せるなら思い切ってやってみることもあります。

―今後の展望、やっていきたいことなどありますか?

大谷:基本的に頂いた仕事で埋まっていて、その目の前の仕事をどうしていくかってことばっかり考えていますね。ただ、あんまり芸能人を使ってPRイベントして、みたいなことはしたくないですね。それはそれで良いとは思うんですが、僕のこだわりとしてやっぱりメッセージが一発で分かるような、言葉が分からなくても伝わるようなものを作っていきたいですね。

 

まあ面白ければなんでもいいわけじゃなくて、そのブランドとかサービスの持っているUSP(Unique Selling Proposition)を意識してですね。商品が持っている強み、売り、流行りとかそういうところを抽出して、少しだけ分かりやすく表現してあげるようなイメージです。

 

僕の仕事ってある人が見たら、いたずらに近いような印象を与えたりするみたいなんですけど。いたずらこそアンビエントだと思っていて、その環境だったり、空間だったりを面白いものにしちゃう。そういうことは今後も続けていきたいですね。


新宿東宝ビル屋上のゴジラにイソジンをもたせた、イソジンブランドリニューアル時のアンビエント広告

 

―本日はありがとうございました!

 

Interviewer , Editor:Rina Ishii
Photographer:Noboru Miyamoto

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渡邊志門
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渡邊志門

構成作家、編集・ライターです。 将来が見えませんが、北斗七星は見えます。