写真:BAKE提供

焼きたてチーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」で知られるBAKE(ベイク)は、袋もパッケージもいつもカワイイ。店舗デザインも洗練されている。もちろん、食べても美味しい。いずれにせよ、いつどこで見てもクールなクリエイティブが存在感を放っている。客が求めるデザインの的を決して外さないBAKEのクリエイティブを担うチーフクリエイティブディレクターの貞清誠治さん、THE PARFAIT STANDなどを担当するディレクターの井手口直也さんに話を聞いた。

チーフクリエイティブディレクターの貞清誠治さん(左)とクリエイティブ・ディレクターの井手口直也さん。(編集部撮影)

――そもそも、なぜBAKEに?

貞清フリーランスで仕事をしているとき、クライアントの一人にBAKEを立ち上げた長沼真太郎がいて、そこから一緒にやってきたという感じ。元々、美大でインテリアデザインを勉強していました。生粋のデザイナー畑というよりは、ちょっと雑草畑。制作会社にいたこともあれば、アパレルのインハウスにいたこともある。図面を引いたり、グラフィックを作ったり、雑多にやっていた。BAKEがいざ店舗でビジネスを開始するというところから入った。

 

――チーフクリエイティブディレクターの役割を教えてください。

貞清 グラフィック、ウェブ、店舗、インテリア、パッケージなど、クリエイティブに関わるものはすべてチェックします。僕の下には、各ブランド、プロジェクトごとにディレクターがいて、そのメンバーを統括するのが仕事です。

 

――フード産業以外でもクリエティブ・ディレクターはできると思いますが。

貞清 経営者が有名なデザイナーに仕事を頼むけど、経営者とデザイナーの溝が深すぎて、結局、いいものができないことに、若いときにすごく疑問を感じて。そこを埋められるような仕事をいずれしたいなと思っていた。今、40歳なんですけど、若い頃、デザイナーに発注する側、つまりビジネスサイドに興味を持って、飲食ビジネスを勉強しました。アパレルの店舗設計も経験しつつ、クリエイティブに対して飲食ビジネスでいろいろアプローチして仕事ができないかなと思っていました。でも、ビジネスのことを知らないなと思って。意見を言う前に知らないと信用してもらえない。なので、現場に入って一通り飲食ビジネスを勉強しました。発言権を持つために学んだという感じですね。

 

――ビジネスに興味を持ったきっかけは?

貞清 ユニクロがフリースをヒットさせたときのブランディングが衝撃だった。社長の柳井さんがフリースに着目して、リサーチからローンチまで3年くらいかかっている。普通そんなことはしない。1年あったら、アウトプットもう出せよという話。でもそうではなくて、1年企業リサーチして、1年社内でいろんなディスカッションをして、最後の1年ぐらいでアウトプットに向けて走っていくという。出口と入口がとても考えられていて、これはすごいなと。自分がデザイナーとして有名になっていきたいという夢はありつつ、そういうことにも興味があった。

 

――ビジネスとデザインをつなげるのがクリエティブ・ディレクターの枠割ということですか。

貞清 ブランディングの根幹にクリエイターがいるとプロジェクトも回っていくが、おおよそそうではない。社長のトップダウンでやるとなったときに、かっこいいものがいいとか、儲かればいいとか、いろんな考え方がある。でも、よくわからない中途半端なものができてしまうと、「あのデザイナーがダメだったから売れない」となる。結局、デザインの良し悪しでビジネスを決められる。もう少しコミュニケーションが豊かだったら、もっといい仕事ができたのではないかな、というのが常にある。ブランディングって制作上のコミュニケーションがシンプルであればあるほど強い。

 

――ユニクロのブランディングに衝撃を受けたにもかかわらず、アパレルではなくて飲食ビジネスを選んだのはなぜですか。

貞清 飲食事業の店舗を設計していたとき、クライアントの社長さんから「君が作った店は作品で、なんか違うんだよ」と言われ、「それなら全部やらせてくれ」と言ったのが始まり。そこにどっぷり浸かって、企画、採用、メニュー開発、店舗運営まで何でもやりました。

 

――貞清さんのキャリアそのものが、BAKEのクリエイティブを体現してますね。

貞清 飲食ビジネスを経験した後に、アッシュ・ペー・フランスで働いたのが大きいと思う。アッシュ・ペーというと、キャリアが一気におしゃれになる(笑)。周りに感度高い人がたくさんいた。人脈も含め、クリエイションのテンションを一回世の中のトップシーンのようなところに戻したいなと思って。でも、やっぱり違う。やっぱりアパレルではないなと。

 

――井手口さんはなぜBAKEに?

井手口最初は中村勇吾さんに憧れて、ウェブの世界に入った。新卒で入ったのが制作会社だったんですけど、アウトプットして終わりということが多くて。自分が愛せるブランドを一緒に育てていきたいという思いが大きくなってきて、自分がちゃんと美味しいと思った食、身近な中で東京でやっている会社でBAKEがあったので、2年前にBAKEにジョインさせてもらった。新ブランドを立ち上げるときには、ポップやポスターの制作、年間のマーケティング施策まで担当します。今は、THE PARFAIT STANDとCROQUANT CHOU ZAKUZAKUでディレクターを務めています。

 

――今はデザイナーではなく、ディレクターとしてクリエイティブ全般に関わっています。元々、ディレクター志望だったのですか。

井手口僕がグラフィック・デザイナーになるときに、佐藤可士和さんが独立してサムライを立ち上げた。デザイナーがただ一つアウトプットを作るだけではなくて、アートディレクターとして全体の世界観を作っていくというスタイルを提示してくれた。デザイナーの定義を拡張してくれた時代だったと思う。

貞清 わかる。なんか新しい波がきてた。クリエイティブディレクターという言葉自体も当時、そんなになくて。

井手口当時、大御所しかいなかった中で、可士和さんは若手として頭角を現してきた。コミュニケーションとアウトプットが全て一貫しているのが、とてもかっこいいなということで、僕もブランディングにとても興味を持った。

 

――店舗にしろ、パッケージにしろ、ウェブにしろ、デザインに落とし込む際には、どういったことに気をつけているのか。

貞清 例えば、カッコいい店でカッコ悪いグラフィックがあるのが自分はとても嫌。そういう感じで、「こういう店だったら、こういうグラフィックがいいよね」というのを気をつけてはきた。そういう中でも、東京駅構内にあるPRESS BUTTER SANDはすごく理詰めで作っている。

 

――具体的にはどのあたりが?

貞清PRESS BUTTER SANDは、はさみ焼きといって、クッキーを焼くのに鉄を鋳造している型を使う。日本のものづくりの背景には鉄にまつわるものが多いと思う。そういうこともあって、パッケージをグレーにした。店舗のイメージもそう。白にビビッドなオレンジを使ってますけど、オレンジは鉄が溶けたときの色。基本的には町工場の本当に雑多な感じを演出したくてやった。「パッケージのここでグレーを使うのだったら、店内もこうした方がいいよね」という感じで、みんなで話しつつちゃんとバランスが合うように進めました。

 

――ブランドによってキーカラーがあります。これはどうやって決めているのですか。

井手口基本的にどのお菓子もプロダクトアウトなんです。最初にこのお菓子を売りたいというのがあって、それをどう売るのかというところからが僕らの仕事。そのときに商品が持っている背景や、一番押し出したいものをキーワードに色を決めていきます。僕が担当しているTHE PARFAIT STANDの場合、店を出す場所が原宿ってこともあって、緑が深い明治神宮、最先端のニューウェーブ、ってのをキーワードに「緑にしよう」と決めたり。

2018年3月、JR原宿駅・竹下口の券売機だったスペースにオープンしたテイクアウトパフェ専門店「THE PARFAIT STAND」(BAKE提供)。

――先にテナントが決まっていて、そこから着想を得ることもあるのですか。

貞清 ほぼ最初にテナントは決まっている。

 

――そこから色やデザインを考えるということですか。

貞清 例えば、ブランドのキーカラーが白だとして、店を出す場所の隣に白い店があると、そのままでは戦えない。そういう意味では、結局は場所ありきでかなり調整をかける。

井手口場所によってターゲット層がかなり変わってくる。この商品とこの場所にこれを売るとしたらどういう色だと勝てるのか、というのは自ずと決まってくる。そこをすごく考えながら決めていく。

貞清 個性的なブランドを出すことにこだわりを持てば持つほど、結構理屈じみてしまうもの。出だしで一発一発勝てないと、ブランドとか言ってられない。まず見てもらわないとブランディングも何もない。なので、一店一店のデザインが変わった理由がここ。BAKEって全然デザイン違うけど、それは勝ちたいがゆえ。

 

――ブランディングの観点から見た目を統一するというよりは、リアリズムに徹してやっていたと。

貞清 でも、軸は変わらないと思う。あと、パッケージも抽象的なものが多い。具象感がない。そういうところのアイデンティティは一緒。

 

――BAKEのブランドは、一つ一つがCIのように見える。これが全部同じ会社だと思っていないひともきっといると思います。

貞清 それ、めっちゃうれしいです。

井手口それ、狙ってます。

――デザインは社内で作っているのですか。それとも外注しているのですか。

井手口ウェブだと、制作会社に出す前に、社内にいるウェブディレクターと話しながらデザインとかを決めています。

貞清 インテリアもウェブも、いつもデザインを頼みたいひとを探してる。

 

――意識している企業、デザイナー、クリエイターっていますか。

貞清 同業で意識したことがほぼない。うちのメンバーで盛り上がるのは、ファッションの話ばかり。アパレルのブランディングにみんなめちゃくちゃ影響を受けていることが多くて。それをお菓子でなんかできないかなとはいつも思っている。

井手口それ、すごいありますね。

貞清 お菓子になると、結構表現が狭くなってしまうので。

井手口お菓子って、具象的なタルトだったらタルトが置いてあるようなパッケージにしがちじゃないですか。もっと先にあるワクワクを感じるためにも、別の分野からどんどん情報を集めていることが多いですね。

貞清 「食」って結構素朴じゃないですか。派手な広告ばかりやれるわけじゃない。

 

――お菓子のデザインはどうしているのですか。

貞清 ブランドを担当するディレクター、デザイナーが商品の出だしからやるというフェーズが多い。

「THE PARFAIT STAND」担当チームによって生み出されたデザイン。(BAKE提供)

――クリエイションやデザインにおけるKPIのようなものはあるのですか。

貞清 KPI難しいですね。結局、ウェブ上でローンチしたときにバズったとか、リアルな声で確かめているという感じ。

井手口ちょこちょこ店舗視察行って、お客さんがちゃんとどう反応してくれるのかというのは、お互い共有して。そこでうまくいったねみたいな話は結構する。

 

――BAKEっていつも写真きれいですよね。

井手口ほぼほぼ自前で撮ってます。カメラマンにシャッターは切ってもらうが、そのセッティングは自分たちでやっています。床に何を敷くとか、どんな小物を置くとか。世界観を決めるのは結構自分たち。

 

――クリエイティブに関わる仕事はどうやって進めているのですか。

貞清 今、1ブランドに1ディレクターをアサインしている。当然、向いている、向いていない、というのがある。うちのメンバーって、デザイン事務所上がりですごい力はあるから、最大限のその能力を発揮してもらいたいなと。アサインが間違っていないと、仕事がスムーズにいく。

 

――クリエイティブ・チームのトップとして何に気を使っていますか。

貞清 うちの会社がやっているブランドということではなくて、そのブランドに陶酔して、どっぷり向き合ってほしい。その中で、ちょっとでも他にないものをやろうと。普通にオシャレといわれる領域じゃない言葉をみんな追い求めています。軽くオシャレなことをやったりすると、「置きにいったね」と結構ディスられる。せっかくうち来たのに、それやんなくていいでしょと。

 

――それがインハウスで仕事できる強みでもありますよね。

貞清 社内でクリエイティブのことを一番知っているのは僕たちに決裁権がある。こっちとこっちどっちがいいと言われたときに、僕らに決裁権がある。そういう意味では攻めろと。ギリギリまで攻めろと。

井手口別に「BAKEっぽくしよう」というのはないです。

貞清 おかげさまで優秀なひとが入ってきたので、今うちのディレクター、結構最強かなと思っている。面接するときがすごくシビア。器用なタイプはできるだけ取らないようにしています。一癖あるひとに興味を持つようにしている。癖のあるポートフォリオだと、僕はグッときている。だって、そのメンバーと心中したいじゃないですか。

(つづく)

 

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COMPASS編集部