レンズ付きフィルムカメラ「写ルンです」やインスタントカメラ「チェキ」など、様々なカメラを販売してきた富士フイルム。まさに写真業界のリーディングカンパニーとして、大きなトレンドを作り出してきたといっても過言ではありません。

そんな同社は2015年、「贈る・飾る・残す」という写真プリントが持つ本来の価値を“サプライズ”を通して若い世代へ広めるべく、「写プライズ」キャンペーンを開始。また、2016年8月にLINEの公式アカウントを開設し、2016年12月からはトーク画面からプリント注文ができるようになりました。

今回、COMPASSでは写プライズの取り組みに携わるメンバーを直撃。LINEへの対応を開始した経緯や若者のサプライズ文化をどう捉えているのか、お話を伺ってきました。

 

モノからコトの提案へ

ーまず、「写プライズ」キャンペーンが始まった経緯について詳しく教えてください。

:「写プライズ」キャンペーンは2015年3月にWeb限定のドキュメンタリームービーを作成して始まったものですが、その裏には時代の変化が大きく関係しています。

スマートフォンが普及し、気軽に写真を撮影することができるようになりました。そのような中で、「スマートフォンからプリントできますよ」とPRを積極的にしていたのですが、なかなか若者には響かず……。スマートフォンで撮影した大量の画像を、プリントビジネスに結び付けることに苦労していました。そんな現状をどうやって打破していくべきか。色々な施策を考え抜いた末に出た答えが、“コト”の提案だったんです。

広瀬すずさんが出演するドキュメンタリームービー

 

ーコトの提案ですか?

:我々は原宿に「WONDER PHOTO SHOP」という直営写真店を2014年2月にオープンしているのですが、1年くらい運営していく中で、若者の間に“写真を友達にプレゼントする”需要があることが見えてきて。

何かキャッチーなフレーズと共に写真をプレゼントするという“コト”の提案をすれば、スマートフォンからプリントしてもらえるのではないか、と考えたんです。

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宣伝部 原雄二郎さん

 

ープリントできることではなく、プレゼントすることを全面に打ち出すようにしたんですね。

:その通りです。「写真をプリントする」という“モノ”の提案ではなく、「写真を使って誰かを喜ばせよう」という“コト”の提案をすることに大きく方針を切り替えました。プレゼントするために最適なシャッフルプリントなどのプリントサービスを使って、写真をプリントすることで、友達、恋人、先生、家族へサプライズプレゼントを贈ろう!とPRしました。

若者の間に根付く「サプライズ文化」

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営業推進部 フォトイメージング戦略企画部 ラボ商品グループ リーダー 星野貴浩さん

 

星野:原宿の直営写真店で見えてきた“写真を友達にプレゼントする”需要を裏付けるように、ユーザー動向としてリア充を楽しむ若い女性たちが“サプライズ中毒”になっていることが分かってきたんです。

撮影した画像をSNSでシェアする「現代風の写真の楽しみ方」は残しつつ、そこに「サプライズ」という要素をうまく組み合わせればイケるんじゃないか。全国の写真店、カメラ店を巻き込む形で写プライズキャンペーンはスタートしました。

 

ー サプライズ文化は昔からあったと思うのですが、現在どのように変化してきているのでしょうか?

:サプライズが日常化している。今では特別な日ではなくても、いつでもサプライズパーティーをやっています。実際、SNSで“サプライズ”と検索してみると、かなりの頻度で投稿されていて。サプライズが、すごく気軽なものになってきていると思いました。

 

宮本:SNSが普及したことによって、サプライズ“する側”も“される側”も写真を投稿することによって、いいね!をもらう。そんな承認欲求を満たす意味もあって、サプライズが日常化していったのかなと思います。

 

LINEを活用し始めた背景にあるもの

ー LINEのトーク画面から注文できる「写プライズBOX」とはどのようなものですか?

星野:写プライズキャンペーンの効果により、売上は増加していたのですが、本来のターゲットである若者からの新規注文の獲得は限定的でして、若者はそもそも写真店の存在を知らないし、スマートフォンからプリントするためのサービスも知らない……。

もう少しユーザーの日常に寄り添うために、若い人たちが日頃使っている“LINE”というプラットフォーム上でプリント注文をできるようにしました。

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ー これは自分の家に届くのでしょうか?

星野:そうです。もちろん指定した住所へのお届けも可能ですが、注文したものがそのまま指定した住所に届いてしまうより、“自分の手から相手に贈る”というぬくもりを大事にしたかったので、自分の家に届けて、ひと手間かけてもらうことを促しています。その分、LINEを活用することでプリント注文の手間を省いた、という感じです。

 

ー なるほど。LINEを活用する裏にはどのような狙いがあったのでしょうか?

:LINEのアカウントを開設するにあたって、写真をプリントしたことがない世代にプリントの楽しさを伝えて優良顧客に育てていく。そして自分のスマホからその場でプリント注文させるという狙いがありました。LINEは幅広い世代が使っているので、将来的には若者だけでなく主婦層も取り込める。これはLINEならではの強みだと思っています。

ブロックされなければ、ダイレクトに情報を届けられる

ー 現在、様々なSNSがあると思うのですが、御社にとってLINEというツールの位置づけを教えてください。

伊東:企業にとっても、すごくリアルタイムなコミュニケーションツールだと思っていて、これまでは広告配信からリアクションまでの期間がそれなりに長かったのですが、LINEは1〜2時間以内に効果がわかる。これは運用してみて、かなり驚いたところですね。

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e戦略推進室 宮本あすかさん

 

宮本:SNSの活用という点で話すと、Facebookの場合、アルゴリズムによって配信されたり、配信されなかったりがあるのですが、LINEはブロックされない限り、確実にユーザーへ情報を届けることができる。“直接”届けるという点においては、他のツールと異なると思っています。

 

ー スタンプだけダウンロードしてブロックしてしまうという話はよく耳にします。ブロックされないために、どのようなことを具体的にされてるんですか?

宮本:若者の中には写真をプリントすることを知らない人もいると思うので、写真をプリントするのって楽しそうと思ってもらえる情報を配信したり、広瀬すずさんを使ったコンテンツでコミュニケーションをとったりしています。

 

:8月30日に公式アカウントがスタートしたのですが、まずは広瀬すずさんのスタンプを配信し、友だちの数を増やすことにしました。現在は190万人くらい獲得できています

その後、12月にプリント注文サービスを始めました。もちろん会社としては初の取り組みだったので、今でもブロックされないために配信するメッセージのクリエイティブやタイミングなど試行錯誤しています。

商品ラインナップを増やし、ユーザーごとに最適な情報を

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イメージング事業部 マーケティンググループ 伊東直哉さん

 

最後に、今後の展開を教えてください。

伊東:今後、バレンタインや卒業式、母の日といったイベントがあるので、そこに合わせてみんなが「写プライズ」したいと思えるような商品ラインナップを増やしていきたいですね。

 

宮本:現在は全員に同じ情報を配信しているのですが、今後はユーザーの属性にあわせて最適な情報を届けられるようにしたいです。そうすれば、ユーザーの目的に合った写プライズを提案していけるんじゃないか、と思っています。

 

:例えば、「写真をプレゼントしよう」と言っても若い女性と主婦では、誰に何をするかは大きく違うと思うので、最適なクリエイティブを出せるようにしていきたいですね。撮影するだけでなく、プリントして形に残してこその写真だと思っているので、写プライズキャンペーンを通して、その良さをもっともっと伝えていければと思います。

 

ーお忙しい中、お時間ありがとうございました!

 

2016年12月にLINEからプリント注文ができるサービスを開始した写プライズキャンペーン。取材後、LINE公式アカウントと友だちになり、注文フローを試してみたのですが、選択していくだけですごく簡単でした。若年層はもちろんのこと、ガラケーからスマホに機種変更し、プリントの仕方が分からない父親・母親世代にとっても便利なサービスなのではないでしょうか。

 

Interview photo:ENO SHOHKI

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新國 翔大
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新國 翔大

1991年生まれ。埼玉県出身。U-NOTE、サムライトでライター・編集者としての経験を積み、現在はBASEに所属。ショッピングメディア「BASE Mag」の運営をしつつ、フリーのライターとして活動している。