こんにちは、石井リナです。
VR、AR、AIなど、自分たちの身の回りでも、技術の進歩を感じるタイミングが増えたのではないでしょうか。Future Standardというスタートアップ企業もその一端を担う集団です。Future Standardでは、カメラから取得した映像を映像解析技術を使ってデータ化することで、世の中の見える化を加速させるという事業に取り組んでいます。今回は、Future Standardの最高分析責任者である金田さんに、過去の導入事例や、今後実現できる世界について、お話をお伺いしてきました。
世界の見える化を加速させる
石井リナ:まず、貴社がやられている事業についてお伺いさせて下さい。
金田さん:僕達がやっていることは「世界の見える化を加速させる」ということです。例えば、Webの世界ではアクセス解析というものが当たり前になっていて、どれだけの人がサイトを訪問して、何人が購買に至ったのかといったデータが全て「見える」ようになっているかと思います。新しい技術を使って、現実世界のあらゆる領域においても、そのような仕組みを広げていきたいと思っています。
石井リナ:具体的にはどのようなことでしょうか?
金田さん:今まで計測できていなかったものが計測できるようになったり、今まで見えていなかったものが見えるようになったりする世界が、我々の実現したい未来です。具体的には、飲食店の従業員のオペレーションの映像をデータ化して、上手な人と下手な人の違いを見つけるといったことも実現できると思っています。
石井リナ:その表現は面白いですね。上手な人と下手な人の違いが分かるようになるとはどういうことでしょうか?
金田さん:例えばですが、料理の上手いシェフと下手なシェフがいたとして、料理の上手いシェフと下手なシェフの映像を、映像解析の技術を使ってタグ付けし、自動で切り出すといったことができます。その映像を比較することで、どの様に従業員を教育すれば良いなども見えてくると思うんです。
石井リナ:実際にはどのような仕組みで実現可能なのでしょうか?
金田さん:Raspberry Piという小型のコンピューターに、市販のUSBカメラを繋いで、我々が開発しているソフトウェアをインストールすることで計測は出来てしまいます。
石井リナ:そんなに小さいんですね!
金田さん:そうなんです。昔だと高額だったものが、現在だとそれぞれの部品が格安になってきているので、弊社で提供するサービスも価格を抑えて出来るようになりました。それにより、今までなかった新たな需要が生まれてくると考えています。例えば、ウィンドウディスプレイなどを見ている人の情報が知りたいけど、数百万かかるとなると、どこも導入しないと思うんですが、数万円だったら計測したいというニーズは高いのではと思っています。弊社のサービスは数万円台から提供が可能なので、導入障壁はぐっと下がったと思います。
石井リナ:価格帯もさがれば導入も検討しやすくなりますね。この仕組みを使うと、企業はどのようなデータが取得でき、何が分かるのでしょうか。
金田さん:大まかには、店舗の場合ですと、来店分析・行列人数・顧客導線が分かりますし、街の場合、通行人数、 通行車両数、移動方向などが分かります。
石井リナ:ショップなどで導入した場合、どの様な情報が分かるのでしょうか?
金田さん:顔で認識するので、性別、年齢、何秒立ち止まっているのか、どのような表情をしているのか、といった情報を抽出することが出来るので、従業員の配置や、売り場の改善に役立てることができます。
石井リナ:そのデータの分量やどこまで出すかによって、サービス額が変わってくるということでしょうか?
金田さん:そうですね。今は1社1社要望を聞きながらカスタマイズして、トライアル的に導入している部分もあるので、ご相談頂ければと思っています。
広告価値を証明するために導入するケースが多い
石井リナ:導入される企業はどのような企業が多いのでしょうか。
金田さん:個人ショップなどの相談は少なく、百貨店や街頭広告などを持っている企業などからの相談が多いですね。
石井リナ:どのような活用方法が多いのでしょうか?
金田さん:百貨店の場合、ウィンドウディスプレイを各ブランドに広告として貸し出しているんですね。なので、そのウィンドウがどれほど見られているのか、リーチ出来るのかという所を計測し、価値換算するというケースも多いです。
石井リナ:広告主に正しい価値を伝えるために導入されるということですね。
金田さん:そうですね。街頭広告なども、マス広告の様にどれほど見られているか、今まで分からなかったので、きちんと測りたいというニーズがあります。
石井リナ:もしかしたら、広告価値がかなり高いということを証明できれば、広告費を値上げすることも出来ますもんね。
金田さん:そうなんです。他に、面白い事例では、ある不動産関連企業さんからのご要望だったのですが、ゴミ捨て場に定期的にマナー違反をしたゴミを捨てる人がいるというお話がありまして。人が見張る人件費より、僕達のサービスを導入する方が安価で出来るということだったので、導入して頂きました。僕達の提供しているサービスは人を認知して撮影を始めるので、防犯カメラの様にじっと再生を見ないといけないということもないんです。
石井リナ:そうした「守り」の活用事例もあるんですね!
仰々しい想いはない、「TechDriven」が全て
石井リナ:そもそもこの事業をスタートしたきっかけは何だったんでしょうか?
金田さん:崇高な想いなどはないのですが(笑)、僕達は経営陣も含めて殆どの人間が手を動かせるエンジニアなんですね。なので「TechDriven」というスタンスでビジネスに向き合っています。
石井リナ:いいですね、スキルフルな集団で素敵です。
金田さん:元々カメラが低価格化していた所にビジネスポイントがあるのではないかというところからスタートしています。僕自身は、長らくデータの分析をしてきた人間として、データ化されていないことをデータ化することに魅力を感じていますね。
石井リナ:今後向かう方向はどういう所なのでしょうか?
金田さん:弊社では「プラットフォーム戦略」というのを掲げています。スマートフォンや監視カメラなど、映像ソースは何でも良く、そのデータを我々のプラットフォームを使うことで、画像解析技術を簡単に使って貰えるようにしたいなと考えています。以下のようなイメージです。
石井リナ:映像データを簡単に解析できるようになるというのは凄いですよね。
金田さん:そうですね、映像は映像だけでは何にもならないので、解析することで価値を生み出していきたいと思っています。
石井リナ:TechDrivenな、みなさんで、是非新しい市場の開拓をしていってほしいなと思います!本日はありがとうございました!
メンバーの殆どがエンジニアだというFuture Standard。事業立ち上げの背景には何があるのでしょうか?という質問にも、「あまり崇高な想いはありません、ただTechDrivenなので」とさらっとお話されたのが、彼らの全ての様に感じました。見えなかったものをデータ化し、見える化する、というビジョンを掲げる彼らが、今後どのように新しい市場を切り開くのでしょうか。私も、1マーケターとしてワクワクしながら、見つめていきたい思います。
Photo:ENO SHOHKI