こんにちは、編集長の石井リナです。
イベントというと、ブランドやメーカーが一般消費者に向けて実施することが多くあります。しかし今では、メディアが読者に対して、イベントを開催することも珍しくありません。カウンターカルチャーマガジン「HEAPS」からスピンオフした、ウェブメディア「Be inspired!」はミレニアル世代の読者に対して、社会問題を啓蒙するイベントを数多く実施しています。今回はBe inspired!編集長/ HEAPSコミュニティマネージャーを務めるジュンさんに、ウェブメディアがイベントを実施する意義や、ミレニアル世代に対してのコミュニケーションの取り方についてお話をお伺いしてきました。
※ミレニアル世代…1980年~2000年の間に生まれた若者のこと。
ミレニアル世代のための、社会問題を解決するクリティティブメソッドを配信するWebメディア。
時代と社会の“決まり文句”にとらわれない。 カウンター&サブカルチャー専門のマガジン、拠点はNY。世界各地の個人・コミュニティのユニークな取り組み、ムーブメントをいち早く配信中。 世界のマイノリティたちの生き様を届ける。
キャッチーなクリエイティブは社会問題に向き合うキッカケにすぎない
石井リナ: 先日もイベントを実施されていましたが、どの様なイベントを実施されたのでしょうか?
ジュンさん:「ゲリラシネマ」というタイトルで、新宿NEWoManの屋上で映画を見るイベントを実施し80名程が集まりました。ゲリラシネマ自体は2回目なのですが、今回のテーマは「フードウェイスト(食品廃棄)」だったので、「TASTE THE WASTE(もったいない!)」というドキュメンタリー映画を鑑賞しました。
石井リナ: イベントのコンセプトはありますか?
ジュンさん:ゲリラシネマは社会問題を「知って、考えて、行動する」ということをコンセプトにしています。なので、イベントでフードウェイストの問題を知ってもらって、翌日には1人でも多くの人が、フードウェイストを少なくできる様に「行動」してほしいと思っています。初回のゲリラシネマのテーマは「児童労働」でした。例えばですけど、次はLGBTQをテーマにして、参加者がレインボーパレードに参加するなど、そうしたところまでやりたいなと思っています。
石井リナ: 実際に、本人に行動してもらうところまでイベントで行うというのは面白いですよね。イベントのイラストが、「フードウェイスト」という重いイメージとは程遠い、キャッチーなイラストだと思うのですが、何か意図があるのでしょうか?
ジュンさん:今回のイラストは、カルチャーシーンの若者に大人気のイラストレーターAimi Odawaraさんにお願いしたんです。前回はAimi Odawaraさんだけでなく、faceさんというイラストレーターの方にも協力していただきました。
ジュンさん:「Be inspired!」のターゲットは、ミレニアル世代と言われる若者です。ミレニアル世代はクリエイティブがかっこよくないとまず興味を持たないという側面もあります。興味を持ってもらうための手段として、こうした方たちのお力を借りるということもしています。
石井リナ: 確かに、社会問題と向き合うための屋外映画鑑賞とは思えないほど、ポップで、オシャレな印象ですよね。
ジュンさん:僕達のメディアでは、過激なタイトルや写真を使うこともあるんですけど、溢れる情報の中で手を止めてもらうためには、そういう手法も厭わないです。過激だから気になって記事を見てみたというのでも、今回のイラストがカッコイイからイベントに興味を持ったというのでも構わないんです。結果、社会問題に向き合うきっかけになればそれで良いと思っています。
石井リナ: 過激な表現も、カッコいいクリエイティブも、全てきっかけにすぎないということですね。
ジュンさん:そうですね。そうしたきっかけをより多くしていきたいと思っています。Be inspired!の記事やイベントに触れ、どんな社会問題でもいいので、若者が自分ごととして捉え、意識を変えて生活することでしか、社会は変わらないと思うので。
仲間が増えることがオフラインコミュニティのメリット
石井リナ: そもそもウェブメディアが、イベントを通してコミュニティを作る理由は何なんでしょうか?
ジュンさん:「HEAPS」も「Be inspired!」も、ミレニアルの中でもニッチなマーケットに対して記事を配信しています。3年程メディアを運営してきて、オンライン上にコアなファンによるコミュニティは出来上がってきました。オフラインの場でもコミュニティを強固にしていきたいという想いがあります。また、HEAPSのスタッフもそうなんですが、ミレニアル世代って、「社会を変える」とか大きなミッションへ挑戦する機会に選ばれ、そこに貢献する「使命感」や「特別感」を感じている世代だと思うんですよね。そこで、実際に社会にインパクトを与える“アクション”の取れるコミュニティを作ろうとHEAPSは考えたんです。今はイベントのみですが、今後色々なことをオフラインで仕掛けていけたらと思っています。
石井リナ: ミレニアル世代は、「社会に対して使命感が強い」というのは自分自身を思い返しても納得します。また、オフラインでイベントを実施すると、実際の読者の方々の確認にもなりますよね。
ジュンさん:そうですね、僕達がターゲットとしている世代の人たちをきちんと集客出来ているのか毎回気にしていますね。
石井リナ: オンラインコミュニティと比較して、オフラインコミュニティのメリットはどのようなところにありますか?
ジュンさん:オフラインでイベントをすると、参加者の方々が声をかけて下さるんですよね。例えば慶應大学に通っていて社会を変えようと思っている大学生が「Be inspired!の大ファンです!」と声をかけてくれたりするんです。実際に同じ考えを持った仲間が増えていくのが、オフラインコミュニティの良さだと思います。
ミレニアル世代は「マス」を信用しない
石井リナ: ミレニアル世代をターゲットに、メディア運営されているとのことでしたが、ミレニアル世代に対して、どのような印象を持たれていますか?
ジュンさん:「ミレニアル世代はエイリアン」とも言われていますが、僕がメディア運営をしていて思うのは、マスメディアや大衆の意見を信用しないという傾向が強いなと感じます。だからこそ、自分の周りにいる人たちを信じるし、コミュニティを大切にしている印象があります。
石井リナ: そういう人たちに対して、何かを伝える、マーケティングをするとなったときに、重要なことはなんだと思いますか?
ジュンさん:冒頭にも言った様に、ミレニアル世代はクリエイティブのカッコよさを重視するので、その感覚が分かる人間がマーケティングするということが重要ではないでしょうか。その点で、HEAPSのスタッフは全員ミレニアル世代なので、今後「強み」になると思います。
石井リナ: 確かに、感覚が違う人間たちが、何かを仕掛けても、当人たちに届かなそうですよね。 本日はありがとうございました!
カッコいいクリエイティブや、過激なタイトルを使うなど、ミレニアル世代に向けて、社会問題に関心を持ってもらうため、手法を厭わず、発信し続けている姿が印象的でした。 また、彼が話すように、オンラインコミュニティより、オフラインコミュニティの方がリアルでのコミュニケーションが発生するため、結びつきが強くなるという一面があります。雑誌社などがイベントを開催すること珍しくありませんでしたが、ウェブメディアが台頭してきた2016年のいま、ウェブメディアもリアルコミュニティを作ることを真剣に考える必要があるかもしれません。
Interview photo:ENO SHOHKI