2017.6.22

Facebookのタイムラインに流れてくる動画の数々。ここ数年で料理系や美容系を中心に、分散型動画メディアの領域が大きなトレンドにーー。

 

そうした状況の中、日本の文化や伝統工芸を発信する動画メディアも立ち上がっています。その代表格メディアが「Japan Made(ジャパンメイド)」。「”Japan made”のモノ、そしてクオリティを世界に発信する」をコンセプトに、職人や匠の手によって生み出された工芸品の魅力を丁寧に伝えています。

立ち上げは昨年の2016年9月ながら、すでにFacebookページは18万いいね超。各動画のコメント欄を見れば分かりますが、海外のユーザーから熱い支持を得ています。どのようにして18万いいねを獲得していったのか、国外のユーザーに情報発信をする際に、どのような動画がFacebook上では支持されるのか、株式会社グルーバーJapanMade事業責任者の河野 涼さんにお話を伺いました。

 

良いものを作っている。でも、魅力を伝える方法がなかった

ー メディアを立ち上げることにした、きっかけは何だったのでしょうか?

河野:日本国内には世界に誇れる技術力を持った職人さんがたくさんいます。彼らは素晴らしいモノを生み出しているのですが、魅力を伝える表現機会がとても少ない。「良いモノを作れば売れる」という時代ではなくなっているとも感じます。

 

昔はそういう時代だったかもしれませんが、今はきちんと魅力を伝えなければ、伝統工芸品の存在すら知ってもらえない。元々和のモノや日本が好きだったので、“良いモノを作っているけど、あまり知られていない……”という問題を解決したいと思ったんです。

また、2020年にオリンピックも控えており、海外からの日本への興味関心度は更に大きくなっていくと考えていました。「世界中の人々に日本のモノの良さを伝える」、その方法として、浮かんできたアイデアが“動画”でした。ノンバーバルかつ拡散されやすいので、広く伝えるのに最適だと考えました。また、モノの背景やストーリーにフォーカスし、動画を通して魅力を伝えていけば、単純消費以上の価値を感じられるのではないか。そう思い、Japan Madeを立ち上げました。

 

ー Facebookページは18万いいねを獲得していますが、やっぱり海外の人が多いですか?

河野:そうですね。98%が海外のユーザーです。割合で言うと、台湾が最も多く、その次にアメリカが多くなっています。残りはそれほど差がないのですが、想像以上にアジアと南米からのいいねが多いですね。

 

動画に反応しているユーザーの割合は、当然台湾、アメリカが多いのですが、ブラジルでの再生回数も多い。これは個人的な見解ですが、ブラジルは世界最大の日系人居住地なので、日本に好意的なのかな、と思っています。ただ、実際にメディアを運営してみて、どこの国が最も反応するかどうかは動画の中身によって、結構変わるなという印象です。

 

ーなるほど。ちなみに、反応が良い動画というのは……?

河野:職人技が豪快だったり、染める技術が繊細だったり、視覚的に訴える動画の反応が良いです。逆に革の財布や鞄などの動画は、“日本っぽさ”を感じにくいのか、あまり反応が良くありません。ほとんどの人が、日本のクラフトマンシップを感じに来てるのかな、と。

 

そういう意味ではブランディングがうまくいっていて、「Japan Madeを訪れれば、日本の職人技が見れる」というイメージづけができているのかな、と思います。

 

手元に寄る、カット数は多め。アルゴリズムも意識した動画作り

ー実際に動画を見て、すごくクオリティが高いなと思いました。動画を作る際、どのような工夫をされているんですか?

河野:Facebookの特性に合わせて、チューニングしています。最初の3秒間が再生されれば、再生回数にカウントされるので、その3秒間で完成イメージや1番の見せ所を持ってくるように工夫したり、動画は1分以内で完結するようにしています。

 

あと、撮影方法は基本的に“寄り”ですね。手元の技や精巧さを表現した方が、ユーザーの離脱率は低くなるので、手元に寄って撮影するようにしています。

ー 確かに「最初の3秒が大事」という話はよく聞きます。

河野:カット数の話をすると、1.5〜2秒くらいで1カットにすることを心がけています。すべての動画がそうなっているわけではありませんが、再生回数が多い動画は総じてそれくらいのカット割が多いですね。十分条件ではないですが、必要条件ではあると考えています。

 

最近、Facebookのアルゴリズムがアップデートし、動画の視聴時間が長い方が再生回数は伸びやすくなったんです。そのため、最初の3秒で飽きさせないことにすることも大事なのですが、その後、テンポ良くカットが移り変わることで飽きないようにさせる。動画を見る際のUX(ユーザーエクスペリエンス)も意識しています。あとはユーザーとのコミュニケーションもすごく大切にしていますね。

 

18万いいねの裏にある、徹底したユーザーコミュニケーション

ー Japan MadeのFacebookページを見ると、確かにコメント欄が活発です。

河野:そうですね。動画をシェアしてくれたときは「ありがとう」とコメントをしていて、ダイレクトメッセージもらったときは相手からの返信がなくなるまで返しています。英語は何とか対応できるのですが、それ以外の言語の方からのコメントはGoogle 翻訳を使って対応しました。けっこう大変でしたね(笑)。

そうしたら、ある日、ユーザーから「すごく良い動画でJapan Madeは好きだけど、翻訳がおかしい時があるのはもったいないから、私が翻訳してあげる」という連絡が来まして。最近、公開している動画の多くは、その子が翻訳してくれているんです。すごく有り難かったですね。あとは、最近ユーザーアンケートも試みました。アンケートフォームを使って「なぜJapan Made見てくれているのか?」「どういう動画が見たいか?」といった質問をしています。全部で100人以上の方が回答してくました。「伝統工芸品が好きだからJapan Madeを見ている」という人が顕著でしたね

 

私は日本人ですし、海外経験もほぼないのでどうしてもユーザーインサイトを突き詰めきれない。だからこそ、「Japan Madeは皆さんと一緒に作るメディアです」と伝え、ユーザーの本当の声を集めるようにしています。

 

ー 最近、ライブ配信も行っていますよね。ライブ動画を始めようと思った狙いは何なのでしょうか?

河野:Facebookがライブ配信に力を入れ始めた、という理由もありますが、大きく2つの狙いがあります。ひとつはリーチ数が伸ばせる良い機会だと思ったから。もうひとつは、ライブ配信によってオリジナルコンテンツが持つ強みを活かせると思ったからです。

 

Japan Madeのコンテンツは基本的に自分たちが足を運び、職人さんに直接お会いして、動画を撮っています。編集されたクオリティの高い動画アップすることもそうですが、現場でしか味わえない臨場感やリアリティを伝えることができるのは、やっぱりライブ配信だと思っています。その強みを活かしたかったからこそ、ライブ配信を始めました。反応もよく、和紙の製作工程のLIVE配信は276万回も再生されました。

ー今後はライブ配信に力を入れていくのでしょうか?

河野:個人的にライブの役割は、編集動画のCMようなものだと思っています。今のところ、編集動画を楽しみにしてもらうための仕掛けのひとつ。仮にライブ配信を始めたことで、編集動画に対してのリアクションが薄くなったら、ライブ動画の割合も増やしていこうかな、と考えています。

 

ー最後に今後の展望を教えてください。

河野:大きく2つのことを考えています。まずひとつ目は、インバウンド的な観点で、自治体さんやメーカーさんに地場産業や伝統工芸をスポンサードして頂き、ブランディングを目的として動画広告をやっていきたい。

 

もうひとつはコマースですね。職人さんが最も困っているのは販路。ユーザーから「どこで買えば良いのか?」という問い合わせもたくさん来るので、伝統工芸品の“海外販売”という面を支援していきたいな、と思っています。

 ーありがとうございます!

 

 

海外から人気を得ている、分散型動画メディア「Japan Made」。動画のクオリティはもちろんのこと、ユーザーファーストの考えを持ち、徹底してコミュニケーションし続けていったからこそ、18万いいねを獲得し、高いエンゲージメントを誇っているのではないでしょうか。Facebookにおける動画運用、LIVEの考え方など、日々新しい取り組みにチャレンジするメディアです。

 

 

▼場所提供

幻幻庵/GEN GEN AN
ストリートな雰囲気が漂う、渋谷に店を構えるお茶屋

住所/東京都渋谷区宇田川町4-9 昭和ビル1F

営業時間/月〜木 11:00〜23:00、金〜日 11:00〜24:00
URL/www.gengenan.net

 

Written by
新國 翔大
1991年生まれ。埼玉県出身。U-NOTE、サムライトでライター・編集者としての経験を積み、現在はBASEに所属。ショッピングメディア「BASE Mag」の運営をしつつ、フリーのライターとして活動している。
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新國 翔大
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