スマートフォンにおける新たな出版の形として、LINE(ライン)が提案するスマホメディア「LINE MOOK」(ライン ムック)というサービスが開始されました。LINE MOOKは、ファッション誌やカルチャー誌、業界専門誌などの雑誌が取り上げる趣味・嗜好性の高い情報を中心に扱い、スマホに特化したビジュアル重視の縦型コンテンツとなっています。

上記などのメディアを総称しLINE MOOKと呼ぶ

 

LINEがなぜLINE MOOKを開始したのか、その背景や目的には何があるのか、また、読まれる縦型コンテンツの作り方まで、LINE株式会社メディア事業部 副事業部長 桜川 和樹さんにお話を伺いました。

 

コンテンツを作る人が疲弊しないモデルを作りたい

ーLINE MOOKを始められた背景を教えてください。

桜川:近年、電子書籍が一般化してきた中で、スマートフォンでも雑誌が読めるようになってきました。しかし、多くは紙の見開きのものをそのまま電子媒体に置き換えているだけなので、スマートフォンで見る際にページを行ったり来たりするのが煩わしいと感じることもありますよね。

そこで、雑誌が扱ってきたジャンルのコンテンツや情報をなんとかスマートフォンで見せる方法はないのかなと考えたところが始まりです。まったく新しいチャレンジなので、自分たちでもまず作ってみることが大事だと考え、3媒体を企画・運営しています。

 

ーLINEとしてメディア事業を行う目的というのは何になるのでしょうか?マネタイズすることなのか、多くのメディアに参画してもらい、メディアのプラットフォーム目指すのかというと、いかがでしょうか?

桜川:どっちもあります。広告が主流のネットメディアは、1ページ0.◯円の世界。ここで戦っていこうと思うとやはりページビュー数が必要になるんですよね。総合ニュースのようなマス向けのメディアはいいんですが、雑誌のようなセグメントメディアで爆発的にページビューを生み出すのは難しいものがある。そのせいでメディアが続いていかない、コンテンツを作る人たちが疲弊しているというのを実感していました。そのため、コンテンツを作る人たちにとってきちんと収益になっていくものを作っていかないと意味はないと思っているんです。

 

メディアというのはどうしてもマス受けする情報を載せざるを得ない部分があるんですよね。多くの人に見てもらえるコンテンツじゃないと、現状の広告モデルではお金を稼げないので。インターネットは人の可能性や多様性を広げることができるはずだったのに、気づくとどこも同じような情報を発信している。なので、そういう部分も変えていきたいなと。

 

—そうした想いの背景には何があるのでしょうか?

桜川:私は前職でリクルートのR25式モバイルという、ガラケーサイト運営に携わっていました。R25がヒットした要因はコンテンツの質だけではなく、リクルートが当時持っていた首都圏における流通網を駆使した側面も大きい。

何かを作っても誰にも見られなければ存在しないのと同じなので、どのようにしてコンテンツが届いていくのかという流通経路がすごく重要です。特にマス向けではないコンテンツを届けることは、豊富なユーザー基盤をもつLINEのプラットフォームだからできると思っています。

 

SNSが普及したからこそ、濃厚なコンテンツを

ーLINE MOOKを知ったのは「Toss!」(トス)でした。友人に面白いメディアがあるよと教えてもらったんです。


桜川:
そうですね、そういう口コミを狙っているところはあります。本当にそのコンテンツの世界観が好きな人が集まってきてくれるようなメディアになっていきたいので。

 

そこに載っている情報、世界観、ブランドが好きなファンの方、より能動的に世の中に対してアクションを取ろうというモチベーションが高い人たちに集まってもらいたいんですよね。

 

ーマガジンハウスと手を組まれたのも、そうした意図が強いのでしょうか?

桜川:ソーシャルメディアが浸透してきたことによって、手軽でわかりやすい情報の消費が増えました。その結果、インスタントな情報に対するリテラシーが上がったというか、それだけじゃ物足りなくなっているような気がします。

 

時代とともに、手軽に消費できるコンテンツより濃厚なコンテンツを消費したいというニーズも高まってきているのではないかと。マガジンハウスさんがやられていることって、それぞれの媒体ごとにカラーが結構明確ですよね。“雑誌の性格が強い”という言い方ができるかもしれないんですけど。

 

強いブランドは、大衆受けはしないジャンルだとしても、そのジャンルが好きな人にとっては高い熱量を生み出せる存在です。そういう意味で、マガジンハウスさんはとてもいいパートナーだと思っています。

 

読了率80%を誇るコンテンツも

ー縦型で、なおかつクリエイティブもかっこよくて、LINE MOOKはスマホ世代にとって親和性の高いメディアですよね。

桜川:ありがとうございます。当初いくつか試案を作ったんですが、HTMLで作られた世界観だとどこか無機質になってしまうのが悩みで。なので思い切って全部画像で作ることにしました。一枚絵で作る方がスマートフォンという端末の形状に合っていて、デザイナーもデザインの幅を広げられると思っています。

 

ー先行して配信されていた3メディアでは、読了率が80%近くあったというお話も聞きました。どのような作り方をすると良いのでしょうか?

桜川:単調な見せ方にならないことを意識しています。ちゃんと展開を考えないとすぐに人が離れていってしまうので、ただコンテンツを羅列するのではなく、続きが読みたいと思うようなデザインと構成にできるかがポイントです。内部ではテレビ的に作ろうと言っています。例えばチャンネルを維持してもらえるようなCMへの入り方や、次の回を見てもらうためのドラマの終わり方ってあるじゃないですか。同様に、続きが気になるような作り方がちゃんとできているかというのは大事だなと。これがうまくいくと読了率が高くなる傾向にあります。

 

ーユーザーからの反響はいかがですか?

桜川:例えば「Toss!」はインスタをヘビーに使っているような人をターゲットにしているので、そこでは結構語られることは多いですね。コンテンツに出てくださった方も、こういう媒体に出ましたよと宣伝してくれることが比較的多くて、その方を好きな方が新たにファンになってくださることはありますね。

 

LINEにとって壮大なチャレンジである

ー現在、LINE MOOKのメディアを読む方法は、自分でID検索をするか、LINE NEWS(ライン ニュース)内の公式アカウント一覧ページから飛ぶしかないですよね?ユーザーにとって見つけるのが難しいですよね。

桜川:これには理由がありまして。サービスには、サービスを知る段階と、使ってみようかなと試してみる段階と、続けて使ってみようかなという3つの段階があると思っています。

読了率が80%のものもあるんですが、何十スクロールするような長い記事でも50%以上の方がきちんと読了してくださるための技術は、まだまだ磨いてる途中の段階なんです。ここで無理に集客をしてしまうと、ユーザー離れにつながるリスクもある。LINEはブロック機能がありますし。そうなると二度と戻ってきてくれないので、技術をもう少し磨いてからでないと集客はやれないかなと考えています。

 

ーなるほど。今後は集客だけでなくて、コンテンツメーカーへのコンサルタントなども視野に入れられているのでしょうか。

桜川:そうですね。今マガジンハウスさんとも、コンテンツを磨くためのコンサル的なお話もさせてもらっているので、今後パートナーさんが増えることがあれば、もちろんありえます。

 

ー今後はどのような展開をされるのですか?

桜川:マガジンハウスさんと一緒に広告をどう作っていくかといったお話も出ていますが、広告以外にも課金や物販などの可能性もあるかもしれません。LINE MOOKは、LINEにとって壮大なチャレンジですが、LINEだからこそできる部分も大きいですし、今後はより一層ユーザーにマッチするコンテンツ作りに励んでいこうと思っています。

 

ーありがとうございました!

 

Interviewer , Editor:Rina Ishii
Photographer:Shohki Eno

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竹林広
Post Author

竹林広

1996年生まれのフリーライター。京都出身。慶應義塾大学文学部に在学し、人間科学を専攻。フリーライターの父を持ち、父の働く姿を見てライター業に興味を持つ。趣味は温泉と寺社仏閣巡り。