時代を彩るアイコンに会い、ミレニアル世代の実態に迫る企画「#ミレニアルズ解剖」。今回はシェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルの提案し、内閣官房シェアリングエコノミー伝道師にも任命されている石山アンジュさん。都内のシェアハウスに住み、実家もシェアハウスを運営するなど、まさにシェア文化が身近にあった彼女。

 

会社に勤めながらも副業制度を活かし、様々な活動に積極的にチャレンジしている石山さんの生い立ちや価値観、シェアリングエコノミーの未来についてお聞きしました。

石山アンジュ

1989年生まれ。一般社団法人シェアリングエコノミー協会事務局渉外部長、クラウドワークス経営企画の傍ら、世界各国のシェアサービスを体験し「シェアガール」の肩書で海外・日本でメディア連載を持ちながら、シェアリングエコノミーを通じた新しいライフスタイルを提案するシェアリングエコノミー伝道師。2017年3月内閣官房シェアリングエコノミー伝道師に任命。ほか総務省地域情報化アドバイザー、厚生労働省 委員も務める。

 

自分を不自由にしていることに気付き始めている世代

—シェアリングエコノミーの活動をすることになったきっかけを教えてください。

石山アンジュ最初に入社したリクルートでは人材領域の大手企業の法人営業をしていたんですけど、なかなか理不尽だったり不本意だと感じることに直面する機会が多かったんです。日本を代表するような大企業のお仕事をさせていただく中で「社会の歪み」のような違和感や課題意識を感じたことでした。

 

景気の状況を無視した新卒一括採用というシステムや、大企業の組織であるがゆえの構造的な不が、一社員に本質的ではない影響を及ぼしているような、課題を感じていました。そういう不可抗力なものに対して、もっと個人が企業と対等で、個人が主体的に自分の働き方、生き方において自由に選択できる世の中にしていく必要があると思ったんです。

 

—活動のモチベーションになっている部分は他にありますか?

石山アンジュこの活動にコミットしているのは、個人が本質的に豊かさを感じられる社会を作りたいというモチベーションが大きいですね。私たちの世代って、たくさん仕事をしてお金を稼いで、良い家、良い車を手に入れて生活単価を上げていくのが幸福だった時代と違うじゃないですか。いつしか生活単価を上げるために一生懸命働き続けて、逆に自分を不自由にしていることに少しずつ気づき始めている世代というか。

 

さらに東北大震災で、ついにそれだけでは何にもならないことを突きつけられた。もっと個人が自由に自分の意思で選択した人生を歩んで、人と繋がり、みんなで生きていくことが幸せなのではないかと思い始めていると思います。これまでの常識に縛られながら一生懸命働いて、それが無くなったら不幸せになってしまうみたいな考え方ではなく、シェアリングエコノミーを通じて個人の選択肢と機会がたくさんある社会ができれば、きっと幸せの価値観も1つではなくなると思います。

 

—前から、そういった領域に対する興味はあったんですか?

石山アンジュそれはかなり昔からありました。両親が自営業でデザイナーと作家なので、両親の影響が大きかったと思いますね。父は30歳で会社を辞めてからブラジルに移住して、日本に帰ってきてからは本・雑誌を書いたり、サンバ歌手をやったり、シェアハウスを経営したりとすごく自由でした。ブラジル人の友人とかを家に泊めてパーティーをしたり、そんな環境で育ったので色々な生き方とか、全くの他人と関わるということに対しての違和感とかは無かったですね。

—今でこそ尊敬できるお父さんだと思うのですが、嫌だなとか思ったことはないですか?

石山アンジュありましたよ! 授業参観にチンピラみたいなアロハシャツ着て来たりとか(笑)。12歳で両親が離婚をしたのですが、15歳くらいの時にちょっと本格的に悩んだこともあって、両親が離婚してなんで自分だけこんな環境なんだろうって思ったんですけど。その時に初めて自分の常識の軸について考えるきっかけになって、色眼鏡を外して人を見ようっていうような価値観に変わったんです。

 

それからはとても楽になったし、両親をそれぞれ尊敬できるようになった。同時に自分のミッションは社会を変えることだなと思って、そこに対してモチベーションを向けられるようになりました。今の仕事とは関係ないですけど、将来的には親の離婚とか社会の枠組みとか、常識に囚われてしまって悩んでいる10代を救うような活動もしていきたいなと思っています。

 

—離婚の件数も増えていますし、ネガティブな側面だけではないですもんね。

石山アンジュそうなんですよ。これからの幸せは、自分を縛っている常識を変えることがベースになってくると思っていて。置かれている環境自体を変えることは、すごく難しいし自分だけの力でどうにかするには限界がある。だからこそ自分を縛っている価値観は何か、改めて自分の考え方や物事の捉え方について考えてみることでよりハッピーになれるんじゃないかな。

 

ルールや法律も柔軟にアップデートしなければならない

—今のお仕事とか活動はどのようなバランスですか?

石山アンジュ2つの会社の社員をしながら、個人で仕事をしている感じです。基本的に月曜から金曜は2つの会社の社員をしながら、早朝とか夜、あとは土日で個人の活動や社会活動をしています。時間の調整や給料をもらう仕事と個人の活動のバランスは難しかったり、まさに一人「働き方改革」中です。

 

—2つの会社はガイアックスとクラウドワークスですよね。

石山アンジュそうです、クラウドワークスでは渉外の仕事が主で、業界団体や行政とのとのリレーションを築くような役割です。クラウドソーシングや、個人が働くことが当たり前になることを、国全体が応援してくれるように持っていく、と言ったら分かりやすいですかね。

 

シェアリングエコノミーに関しても、まだまだ日本では社会的に「個人間でのビジネスは危ない」ってイメージがあるので、そのルールメイキングや、世論形成をしていけるように動いています。

—日本でのシェアリングエコノミーの普及は、やっぱり遅れているんですか?

石山アンジュ日本はかなり後進国です。海外だと2008年頃から広がり始めているのですが、日本だと2016年にやっとスタートしたという感じで。海外ではUberみたいな個人がドライバーになるライドシェアサービスはもちろん、自分の家で他人を招いて一緒に食事をするサービスや、作った料理を地域の人にお裾分けすることができるシェアサービスとか、そういったものが2010年付近から普通に普及しているんです。

 

日本でも少しずつシェアサービスは出てきていますけど、例えば自分の家に他人を招いて有償で料理を提供することは、特別な免許が必要だったり、食品衛生法に引っかかってしまったり、いろいろなジャンルで法律の壁があったりして中々浸透していかないのが現状ですね。そういった部分を1つずつ変えていかないと大きな流れにはならないな、と思います。

 

—日本がそこまで遅い理由はどこにあるのでしょうか?

石山アンジュ幾つか理由はあると思いますが、まず日本人の国民性もあると思います。ある調査では、世界と比較すると日本はシェアサービスの利用意向度が著しく低いんです。その最もの理由はトラブルに対する懸念。個人からサービスを受けるという文化に慣れていないし、そもそも他人と気軽に関わること自体に慣れていないのかもしれませんね。例えば、旅行だからっていきなり他人の部屋に泊まるとかって、なかなか文化的に厳しいのかなと思います。

石山アンジュあとは法律の問題。海外のいくつかの国では法律って世の中の変化に対して柔軟にアップデートし、問題が発生した時点で方向転換したりするんですけど、日本はとにかく動きが遅いです。日本も制度、ルール、法律をアップデートしていかないといけないんですが、なかなか難しい。若い世代の政治や政策に対する関心もそれほど高くない。誰のせいというよりは様々なことが関連しあって、結果的にスピードが遅くなってしまっているんだと思います。

 

ひとつの手段としてのシェアリングエコノミー

—これからのシェアリングエコノミーで、期待しているサービスを教えて下さい。

石山アンジュモノのシェアや、移動手段としてのシェアにおいては、シェアサービスを活用したほうが明らかに利便性は高いので自動的に広がっていくと思っています。個人的にはその一歩先、より個人と個人が直接対面してサービスを享受し合うようなサービスに期待をしています。近所のお家のご飯を食べてお金を払うことが普通になっていくとか、ペットを飼っている人が地域内で繋がっていき、旅行する際に気軽に預け合うみたいなところまで行って欲しい。そういう人と人とがリアルに対面するようなサービスこそシェアリングエコノミーの1番の可能性のある分野だと思うので、同時に期待している分野ですね。

 

—シェアリングエコノミーという分野が目指すところってどういうイメージになるんでしょう?

石山アンジュ個人がサービスの提供者になって、個人がサービスとして受け取るわけですから、個人と個人での交流が生まれるわけですよね。例えば民泊だったら、居住型の民泊サービスの場合、その人の家でご飯を食べたり、実際に一晩過ごして、とても深い仲になっていたりするんです。海外に行くたびに民泊サービスを利用して、知らない間に世界中に友達ができている。そういう友達や、コミュニティーの繋がりが、これからの個人の生活における資産になっていくと私は思っています。例えば、ある日、大震災が起きても、頼れる人、泊まれる家、助け合えるコミュニティがあり安心できる状態を創ることのできる可能性があるというか。ですから、それを形成していくひとつの手段としてシェアリングエコノミーを普及していきたいんです。

 

シェアリングエコノミーを通じて、最終的にはこれからの時代にあった「幸せ」の基準をつくりたいとも思っています。それはひとつの形ではなく、当然人ごとに違う形になると思うのですが、より多様な暮らし方や働き方のバリエーションがある状態を創り、単一的なロールモデルや常識に縛られ、不自由さを感じている人を解放したい。シェアリングエコノミーは、生活や働き方の仕方の選択肢を増やし、人との繋がりを広げ、みんなで助け合い、生きていくコミュニティを創ることができると信じているので、多くの人が、生活の中で本質的な豊かさを感じることのできるのではないかと思っています。

 

—これからの目標を教えてください。

石山アンジュ自分の活動のモチベーションとして、個人が本質的な豊かさを感じられるような社会を作りたいというのがあります。日本の人口減少やグローバル競争が進んでいる中で、これまでと同じような経済的豊かさを追い求めることは難しいと考えています。その中で、ハードの面では、働く手段、生活の手段そのものの選択肢自体を増やし、あらゆる制約をなくしていくこと。ソフトの面では過剰生産・過剰消費という体質から脱却し、人との繋がりや交流を通して本質的な豊かさを感じることのできる価値観へ転換すること。この両方に対してアプローチしていくべきだと思っています。

 

あとは働いている中で、ルールをつくる側の政治・行政とサービスをつくる民間側の架け橋になりたいと強く思うようになりました。一歩先の未来に、みんなが求めていることを、今取り組む、実現する土台をつくることができる社会を作るために、官民の架け橋となる人がもっと必要だと考えています。それはロビイスト的な活動かもしれないし、もしかしたら政治家をしながら起業家という新しい選択肢もあるかもしれません。

 

 

Interviewer , Editor:Rina Ishii
Writer:Shimon Watanabe
Photographer:Mariko kobayashi

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渡邊志門
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渡邊志門

構成作家、編集・ライターです。 将来が見えませんが、北斗七星は見えます。