2018.7.2

紗蘭やmimmamなど、ティーンから絶大な支持を得るモデルが所属するN.D.Promotion。原宿系・青文字系のモデルを中心にマネジメントを行い、SNS総フォロワー100万を越えるインフルエンサーネットワークを持つ。モデルたちのスカウトは、社長の金丸雄一氏が自らSNS上でするという。インフルエンサーやYoutuberなど、タレントの形が多種多様な現代で必要とされるエージェンシーのあり方とは。社長の金丸雄一氏に聞いた。

 

起業当時の主力メディアはアメブロ

ーーSNS上でスカウトをする手法に代表されるように、モデル・タレントのマネジメント会社として、従来の会社とは違う特徴を持っています。そもそも、どういう経緯で立ち上げられたのですか?

ファッション系のサークル『Nom de plume』を大学生で立ち上げたのがきっかけです。当時スナップを撮るのが流行っていて、スナップサイトが沢山あったので、その活動を学生団体で始めました。ファッションショーを企画して、ブランドから衣装提供をしてもらったり、それに出てくれるモデルを探したり。多いときだと1000人規模でやっていって。その後、僕が大学4年になったタイミングで、僕自身は別の道を目指してたのですが、就職するよりも自分で何とかしようと卒業後、起業しました。サークルの実績で一番知見があったのがファッションや原宿系だったので、それをまずは一人で会社化してって流れですね。

 

ーー最初はどういった事業を?

当時はアメブロが全盛の時代でした。僕がスナップをしてたときから人気が出そうな子がちょこちょこいたので、その子たちにオフィシャルでアメブロを開設します、みたいなサービスをやっていて。並行してキャスティング業をしていたんですが、みんな売れてきたら大手の事務所に入っちゃって、主力な子がどんどんいなくなっちゃったんですね。そうなってくると続けててもあまり継続性がないなと思い、いっそ自社でやろうという流れでマネジメントの事業を始めました。まだスマートフォンも普及しはじめたタイミングで、当時はインフルエンサーという言葉もない時代だったので、今でこそそういった事務所は多いですが、当時周りからはそれが事業になるとは思われていなかったですね。

 

ーーインフルエンサーマーケティングの先駆けだったんですね。最初に有名になった所属モデルは、双子モデルのmimmam。「可愛すぎる双子モデル」として原宿系のティーンに大人気になりましたよね。どういう経緯で発掘したんですか?

双子モデルのmimmam(提供:N.D.Promotion)

mimmamがイメージモデルを務めるプリクラ機(提供:N.D.Promotion)

自社でやっている女子中高生向けのコミュニティサイトに載せるために、アメブロでコーディネートを発信している女の子たちに、「そのコーディネート可愛いんでうちのサイトに転載してもいいですか?」みたいな連絡をひたすらやっていたんです。そしたらブランド名の検索によく出てくる女の子がいて。毎日継続的に良いコーデを載せているのにPVがめちゃくちゃ少なくて。持続力もあってセンスも良くて面白いなと思って1回原宿に来てもらったのがmimmamの妹のmimでした。

面談のときに、「実は私双子でお姉ちゃんがいるんです」っていう話になり、2人でやったほうが絶対売れるよって話をして。それが最初のきっかけですね。『双子コーデ』というのがここから主流になっていくのですがまさにここが原点なんだと思ってます。

 

ーーその後、Zipperの専属モデルになり、女子中高生の認知度があがっていくんですね。

双子で活動すると決めたタイミングでZiipperの専属モデルも決まり、という流れでした。mimmamを発掘した頃からTwitterがどんどん出てきて。それによって業界の風向きはかなり変わってきましたね。mimmamはそれまで200人しかフォロワーがいなかったのに、Zipperの紙面に出始めたら1ヶ月平均で8千人とか1万人とかTwitterのフォロワーが増えたんです。画像を投稿すると毎回3000-5000平均くらいでRT(リツート)がされていて。ブログだとPV数でしか測れない指標が、Twitterのフォロワー数やRT、お気に入りはより分かりやすく知名度と人気の指標になるのだと思い、時代の流れが変わっていく感覚がありました。なにやらすごいことが起きているぞって当時は思ってましたね。

 

スカウト優先、インフルエンスはあとからつける

ーーその後、Popteenなどで活躍する紗蘭さんが出てきます。彼女は雑誌もですし、テレビでも活躍するマルチタレントですよね。他のインフルエンサーやモデルとは異なり、活動の幅も広い。紗蘭さんを発掘したのは、どういう経緯だったんですか?

雑誌やテレビで活躍する紗蘭(提供:N.D.Promotion)

紗蘭のCD付きスタイルブック「さらっちだよ!」(提供:N.D.Promotion)

Twitterで声をかけたのがきっかけですね。当時は鍵アカで、フォロワーは300人くらい。プロフィール画像を見て、直感で「この子スカウトしたい」と思ってフォローしてフォローを返してくれたのでメッセして、という感じです。

 

ーー一昔前(ひとむかしまえ)だと原宿の竹下通りでスカウトする、というイメージですが、スカウトは基本SNSなんですか?

そうですね。スカウトって街中でやっても、その子の好きなものとか、SNSの使い方が上手いとか、見えないですよね。容姿の良い悪いは売れる要素ではあまり重要じゃないと思っています。せっかくいい子がいてもそこから繋がる確率が低いし、昼間に外に出て探すというのも労力を使う。SNSなら、夜中でも探せるし、本人の趣味嗜好もわかって早いです。今はメジャーな探し方だと思いますが、僕がやり始めたときはSNSでスカウトしてるって言ったら「え〜」って言われていました(笑)。

 

ーー紗蘭さんは300人しかフォロワーがいない状態からどうやって伸ばしていったのですか?

最初、SNSのやり方をひたすら覚えるっていうのと、伸びてる先輩モデルとどんどんSNS上で絡めて、認知度をあげてフォロワーを増やすというのをやっていました。うちの所属の子は最初、スタッフがSNSの使い方を徹底的にレクチャーするんです。何時にこの写真あげようとか写真一枚一枚見てこれはいいこれはダメとか、この角度じゃなくてこの写真にしようとかこういうハッシュタグつけようとか、そういうのを細かく指示してますね。髪の分け目とか、髪色服のテイストとかも必要に応じて変えてもらいます。最初はマンツーマンで指導して、徐々に自分たちでやってもらう。そうやってセルフブランディング力を鍛えていますね。ファッション誌とかに出ているとこういった地の力をつけてもらえたりするのですが、今はそれがなくなったので事務所側で雑誌の編集者がモデルを育てるような動きをやってあげる必要が出てきました。

紗蘭は現在23万人を超えるフォロワーがいる(2018年7月2日時点)(紗蘭Twitterより)

 

ファンを作るためのSNS、プレゼンのためのテレビ。その心は?

ーー昨今はYoutuberやインフルエンサー事務所などもどんどん増えています。今の流れはどう捉えていますか?

現代は相当、個の時代ですよね。事務所がごり押しして売れる子って今の時代はほぼいない。セルフプロデュース力が一番大切です。反面、事務所に入らなくても活躍して伸びている子もいるわけで、セルフプロデュース能力である程度やっていける時代。ちょっと前の時代だったら、事務所に入るだけで仕事が来るって感覚のタレントもいたかもしれないし、事務所も人気なタレントに頼っていれば仕事がくるような時代でもあった。でも、これからはどんどんとお互いが一緒になって切磋琢磨しないといけない関係性になっていくと思います。

 

ーーそのためには信頼だったり、事務所としての特徴も欠かせないですね。

最近弊社で育成している高1の莉子って子がいるんですが、彼女はこの一ヶ月で12000人フォロワーが伸びました。もちろん彼女の努力もそうですし、そこにプラスアルファで事務所も手助けしていかないと本人のモチベーションにもならない。せっかく本人が頑張っていい投稿をしても、それを拡散してくれる何かがないと結局フォロワーは増えないし、見つけてもらえない。色んなメディアさんで取り上げられてもらえるような仕組みを作ったり、彼女に合ったコミュニティに紹介したり、雑誌だったりのリレーションを作ったり。日々のSNSのやり方をレクチャーやフィードバックするのもそうですし、弊社の媒体で特集したりTwitterでツイートしてたりとかをしてますね。

 

ーー若い子の中にテレビに出るタレントになりたいって子は多いですか?

いることはいますが、やっぱりテレビには出なくてもいいやって思ってる子も増えてきてる事実はあります。テレビがきっかけでSNSを見てくれてファンになってくれるのはうれしいですが、テレビでは個人の趣味嗜好を深堀してくれることって少ない。うちの所属の子たちは、自分たちの世界観を持っている子なのでテレビに出て人気になる、というよりはSNSで目にして好きになってくれるという方が合っています。とはいえ、タレント自身の知名度を高めるためにはテレビの存在は欠かせないのですが……。

 

ーーというと?

TwitterやYoutube、TikTokなどは若い子が作って若い子たちの熱気がすごいものですが、テレビは大人たちが作っているし、それを見る層もクライアントだったり、仕事を作り出す側の人たちが中心で。若い子たちの熱狂とは別として、「この子たちが若者代表なんだ」って大人に知ってもらうためのテレビという存在は、これからより強くなっていくのではないかと思います。広く客観的に情報を伝達する手段というか。マスメディアとしてのあるべき形だと思います。本当のファンを作る場所はSNSで、プレゼンテーションの場所としてのテレビというすみ分けです。

 

ーー本当に強いインフルエンス力をつけるコンテンツを産むには、SNSもテレビも両方見せ方を変えながら発信していく必要があるということですよね。N.D.Promotionとして今後やっていきたいことは?

日本のタレント事務所は、契約関係、プロモーション、営業、身の回りの世話すべてをパッケージにした総合芸能事務所みたいな形が多くて。先程の話で出てきたセルフプロデュース力がもともとある子だったりに対してはプロモーション面はそこまで気にしなくていいなら大人しかできない部分だけを受け持つとか、よりフレキシブルな会社でありたいですね。芸能事務所という枠組みではなく、タレントたちと一緒にお互いのやりたいことを法人という形で叶えていくのが理想ですね。今までのタレント事務所のやり方を変えていけるモデルになっていきたいとは思いますね。

Written by
前田 沙穂
2019年1月からCOMPASSの全ての記事の企画・編集を行う。フリーライター&アートディレクター。マーケティング,ガールズカルチャー,サブカルチャーを軸に企画・ライティングや、女性アイドルやアーティストのクリエイティブディレクションなどを行う。https://twitter.com/sahohohoho
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