2017.6.12

売上高に占めるEC比率を40%から50%に高めるー。

人気セレクトショップの「nano・universe(以下、ナノ・ユニバース)」が今年2月、ECサイトに注力していくことを発表しました。

 

ECサイトのコンテンツ拡充を目的に、最近、インタラクティブ動画作成サービス「Spotful(スポットフル)」を活用した“触れる動画”を公開。動画を見ながら直感的にショッピングを楽しめるようにするなど、オンラインでの新たな購買体験を提供しています。


ナノ・ユニバースのspotful動画

なぜ、ナノ・ユニバースはインタラクティブ動画を活用し始めたのか。また、どのようにしてEC比率を50%まで高めようとしているのか。今回、株式会社ナノ・ユニバース 経営企画本部 WEB戦略部長 越智将平さん、経営企画本部 WEB戦略部 映像チームの片岡弘貴さんに話を伺ってきました。


どれだけ売上に貢献しているか、が通常の動画では把握できなかった

ー “触れる動画”を作ろうと思った、きっかけは何だったのでしょうか?

越智もともと社内では、「コンテンツのトレンドが写真から動画へ移っていく」という考えがあり、3年くらい前に動画チームを立ち上げ、ずっと動画コンテンツをつくり続けていたんです。実際に動画を作っていく中で、表現力は素晴らしいと思う一方で、通常の商品ページと比べて実績が分かりづらい、という課題がありました。ECサイトの売上に対して、動画がどれくらい寄与しているかが全然わからなかったんです。

越智「どうしようか…」と考えていたときに、Spotfulを運営する株式会社g&hの松山仁さんと出会って。実際に話を聞いてみたら、自分たちが作成した動画に簡単に購買ボタンを設置でき、商品ページにつなげられる。「これを導入すれば、動画がどれだけ売上に貢献しているかわかるようになる」と思い、Spotfulを活用して“触れる動画”を作ることにしました。

 

ー 動画を作るにあたって、どのような部分にこだわりましたか?

片岡動画の構成自体を“触れる動画”ありきで考えていたので、演出や空間の取り方など、Spotfulの特徴を最大限活かした仕上がりになっていると思います。

 

越智機能は素晴らしかったのですが、それに頼りすぎないようにしました。我々もブランドイメージにはこだわりを持っていまして、カッコいい動画を作ったのに購買ボタンが突然入ってしまってユーザーの邪魔になり、イメージが悪くなってしまう。機能は活用しつつも、動画の内容自体が購買動線をうまく表現できるように演出は、すごくこだわりましたね。


触れる動画”を公開して見えた、横動画の可能性

ー 実際に動画を拝見して、「今までにありそうでなかったな」という感想を抱いたのですが、ユーザーの反応はいかがでしたか?

越智すごく反応がありました。今回の動画には高単価の商品が多くあったので、動画経由での購買数を指標にしていなかったのですが、思った以上に商品が売れて、売上を作れたのは良かったと思います。

左)片岡弘貴さん 右)越智将平さん

 

ただ、一番良かったなと思うのは、表現性ですね。ここ数年で“動画”という単語をたくさん聞くようになりましたが、まだまだ課題も多くあって。尺やインターフェースの問題から最後まで動画を見てもらえない……。そうした中、今回活用したインタラクティブ動画は、スマートフォンの上の領域で動画を再生しておきながら、下の領域を使って商品の説明ができる。これは動画の新しいカタチだな、と感じました。

 

最近、スマートフォンの特性に合わせて“縦動画”も増えてきていますが、このインターフェースが使えるのであれば、横動画もまだまだ活用の余地があることを再認識しました。

 

ー 先ほど購買数を指標にしていないと仰っていましたが、ブランドの認知やブランドイメージの向上が“触れる動画”の目的だったと?

片岡そうですね。その目的もありつつ、スマートフォンで動画を見るにあたって満たされてなかった部分を“触れる動画”で補っていく。動画の新しいカタチに挑戦した取り組みでもあったと思います。

 

ー ZOZOTOWNが普及したことで、ブランドを認知しないまま洋服を買う機会が増えてきている中で、今回のような取り組みはブランド認知にすごくつながってくるなと思いました。

越智その通りで、ユーザーからすれば洋服を購入するのはZOZOTOWNで十分なんですよ。複数のアイテムが比較でき、利便性も高いので。

ただし、世の中にはブランドを好きでいてくれるユーザーが一定数いて。その人たちに対して、ZOZOTOWNでは味わえない何かを提供していかなければ、自分たちでECサイトを持つ意味はないと思うので、ナノ・ユニバースだからこそ味わえる体験を提供していけるようにしたいと思います。


売上ファーストに陥らず、個性ある見せ方・伝え方をしていく

ー 御社は売上高に占めるEC比率を50%に高めることを目標されていますが、現状での課題感などは何かあるのでしょうか?

越智ファッションEC業界はこれまでモール型ECサイトのおかげで成長を続けてきたのですが、最近になって多くのアパレル企業が自社ECサイトを持つようになってきました。ただ、この流れは危険な一面もあって、多くの企業が自社ECサイトに注力していったら、すぐに飽和して、自社ECサイトで買う意味がなくなってしまう。

越智だからこそ、我々が抱いている現状の課題は単純にECサイトでの売上を上げるかではなく、“どういう方法”で売上を上げていくか。

今回の動画も然り、他にもいろんな取り組みを行なっていますが、ナノ・ユニバースならではの個性ある見せ方、伝え方を追求していかなければいけないな、と思っています。

 

ー 最後に、今後の展望を教えて下さい。

越智現在、次の動画のアイデアを考えていて。定期配信にしていければいいな、と思っています。ただ、動画だけにこだわらず、積極的に新しいことに取り組んでいきたいですね。

 

ー ありがとうございます!今後の取り組みも楽しみにしています!

 

 

“触れる動画”を公開するなど、EC比率50%を目指し、新たなことに取り組んでいるナノ・ユニバース。実際に話を聞いていて印象的だったのが、単純なECの売上を考えるのではなく、個性ある見せ方によってECの売上を上げようとしていること。情報が溢れている今の時代だからこそ、自社の強みを見極め、それを武器に顧客にアプローチしていく。この考えが、顧客から選ばれる存在になるためには欠かせないのではないでしょうか。

 

Interview photo:ENO SHOHKI

Written by
新國 翔大
1991年生まれ。埼玉県出身。U-NOTE、サムライトでライター・編集者としての経験を積み、現在はBASEに所属。ショッピングメディア「BASE Mag」の運営をしつつ、フリーのライターとして活動している。
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新國 翔大
1991年生まれ。埼玉県出身。U-NOTE、サムライトでライター・編集者としての経験を積み、現在はBASEに所属。ショッピングメディア「BASE Mag」の運営をしつつ、フリーのライターとして活動している。
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