2017.4.20

2017年3月、とあるVRムービーが世間を賑わせました。そのVRムービーとは、「男女の本音VR」。なんと、男女の視点を交互に行き来しながら、恋愛やコンドームに対する考え方の違いが体感できます。

このVRムービーの開発を手がけたのは、コンドーム国内シェアNo.1を誇るオカモト株式会社です。2015年12月にオカモトが日本における性感染症や望まぬ妊娠を予防すべくチュートリアルの徳井義実氏を所長に迎え、「日本人に、もっとコンドームを。」をミッションとする「LOVERS研究所」を設立しました。

 

同研究所は、これまで相手のことを思う「ペアコンドーム」やコンドーム着用時にスマホが連動して音や光でムードを盛り上げる「コンドムーディー」など、日本のコンドーム着用率を向上させるためのプロモーションを行ってきましたが、なぜ今回VRムービーを手がけることにしたのでしょうか?その裏にある狙いを今回、オカモト株式会社 医療生活用品マーケティング室 マーケティング課の和田翔雅さんに話を伺ってきました。


コンドームの装着における、男女の本音を感じてほしかった

ー「男女の本音VR」を実際に拝見して、すごく面白いプロモーションだなと思いました。なぜ、このようなプロモーションを行おうと思ったのでしょうか

和田:昨今、性感染症(STD)やエイズにかかる20代が増えてきていたり、高止まりしていたりしていて。そうした事実を踏まえて、我々としては性感染症やエイズを予防していくための情報をもっと発信し、コンドーム自体に関心を持ってもらわなければいけない、と思ったんです。それで2015年12月にチュートリアルの徳井義実さんを所長に招き、「LOVERS研究所」を立ち上げました。

 

一体、どんなことをやっているのを話しますと、コンドームの着用率を向上させるために仮説を立てては検証する、といったことを実施しています。例えば、恋愛に積極的でない草食系男子を熱い気持ちにさせる為に、恐竜の交尾映像を制作してアプローチしたり、コンドーム装着時のムードを盛り上げる「コンドムーディー」といったプロジェクトを手がけてきました。

 

今回、男女の本音VRを開発しようと思った背景には、コンドームの装着に対して男女それぞれでお互いの本音が実は分かっていないのではないか、という仮説がありました。実際にヒアリングを行ってみると、初めての相手に対して「コンドームを着けたい」「コンドームを着けて」といった本音を言い出しづらい、と感じている人が多くいたんです。

 

そういうことであれば、2016年に大ヒットした映画のように男女が入れ替わって、お互いの気持ちを知ることができれば、問題は解決できるのではないか。そう思い、男女の本音VRを開発することにしました。

 

ーなぜ、VR技術を活用しようと思ったのでしょうか?

和田:VR技術に対する関心が高かったこともありますが、何よりVRならではの没入感、実際に映像に入り込んでいく感覚を味わえるのが大きかったですね。普通の動画を発信しただけでは、単に面白い動画だったで終わってしまうと思うのですが、没入感のある動画を発信することで自分ごと化できる。だからこそ、今回はVR技術を使ってみることにしました。

 

ーこだわったポイントは具体的にどこでしょうか?

和田:動画のクオリティですね。男女が入れ替わる、ということで目線がしっかり切り替わるように普通の映像を撮るよりも2倍、時間をかけて撮影しています。演者さんもすごく大変だったと思うのですが、そこまでこだわったからこそ、すごく没入感のある映像に仕上がったのかな、と思っています。

 

少し補足すると、揺れなどでVR酔いしないように少し特殊なカメラを使って撮影をしていて、技術的にも完成度の高い映像になっています。


首元にカメラを設置して撮影している様子

 

ー実際に公開して、どんな反応がありましたか?

和田:これまでのプロモーションと比較すると、女性の反応が多かったような気がしています。コンドームは男性よりの商材だと思われてしまいがちなのですが、今回、男女の本音が分かるようにしたことで女性からも「それ分かる」「この動画面白い」といったポジティブな反応が多くありましたね。


面白いだけのプロモーションでは意味がない

ーLOVERS研究所が過去に手がけられているプロモーションも、面白いものが多いですよね。

和田:ありがとうございます。これまでにも「オカモトタウン」や「オカモトスクール」といった情報発信を行うサイトは持っていたのですが、それだけではコンドームに関心を持ってもらえないだろう。と。

 

その点を踏まえて、LOVERS研究所はなるべくソーシャルでバズるような飛び道具的なコンテンツを発信し、注目を集めたいとは思っています。ただし、バズれば全てOKというわけではなく、それぞれのプロモーションの裏側には「コンドームの着用率を上げたい」というメッセージを入れるようにしています。 

やっぱり世の中的には、コンドームの装着を言い出すのに抵抗感を持っている人が多いので、こうしたプロモーションを通して、コンドームの装着を言い出すことに対する恐怖心をなくしていければいいな、と。そうすればコンドームの装着に対する抵抗感がなくなっていく気がしています。

 

だからこそ、単純に面白いプロモーションをやっているだけでは全然ダメで。VRなどの最新技術を取り入れることで話題になりそうなスイッチは用意しておくことはもちろんですが、それだけでなくコンドームの重要性を感じられるようなストーリー用意しておくことも大事ですね。

 

ーとはいえ、コンドームのプロモーションって難しい部分もありますよね。

和田:そうですね。日本では「コンドーム=アダルトグッズ」と捉えている人も多くて。こうしたイメージをもたれているので、オカモトゼロワンがLOVERS研究所を立ち上げてプロモーションを行う、と言うと変な期待を持つ人がいるんです。

 

そこで変に期待に応えてしまうようなプロモーションをしてしまっては、「結局、コンドーム業界って、そういう会社が多いんだよ」と思われてしまう。それはトップメーカーとして不本意なので、変ないやらしさがないよう配慮してプロモーションを行っています。

 

業界として、どうあるべきか常に考え続けていきたいですし、コンドームは決してアダルトグッズではなく、日用品の1つとして生かされている製品だということは訴えていきたいですね。こうしたプロモーションを通して、少しずつコンドーム業界に対する見方が変わってくれればいいなと思っています。


ウェブに限らず、リアルと連動したプロモーションも

ーLOVERS研究所として、今後こういう取り組みをしていきたいなど今後の展望がありましたら、教えてください。

和田:コンドームの役割は性感染症の予防と避妊にあるので、そこの機能がきちんと伝わるようなメッセージを時代の流れに沿いながら、発信していければいいな、と思っています。具体的には、みなさんが「これは一流だな」と思うような、王道感のあるメッセージを作れたらいいですね。

 

ーなるほど。今後も話題性のあるプロモーションを行っていくのでしょうか?

和田:そこはもう考え方次第ですね。これまではバズを意識し、話題となるようなプロモーションを行ってきましたが、それだけを続けていては一過性で終わってしまう。バズにもさまざまな切り口があると思っているので、今後のプロモーションに関してはいろんな方法が出てくるのかな、と思っています。

 

2次元にとどまらせているだけではダメなんですよね。単純にVRムービーを作って、それで終わりではなく、最終的には現実世界の中で我々のメッセージが伝わらなければ、プロモーション価値がなくなってしまう。これまでは面白さ重視でプロモーションをやってきていますが、少しずつリアルとの連動も考えたプロモーションに着手していきたいですね。

 

ーありがとうございます!今回のプロモーションの裏側が知れて良かったです。今後の取り組み楽しみにしています!

 

コンドームの着用率向上を目指し、さまざまなプロモーションを行なっているLOVERS研究所。プロモーション自体はどれも面白いものばかりなのですが、その裏にはコンドームの着用に対する抵抗感の解消、コンドーム業界のトップメーカーとしての矜持など、すごくこだわりを持たれているのが印象的でした。

 

 

Interviewer , Editor:Rina Ishii

Photographer:ENO SHOKI

Written by
新國 翔大
1991年生まれ。埼玉県出身。U-NOTE、サムライトでライター・編集者としての経験を積み、現在はBASEに所属。ショッピングメディア「BASE Mag」の運営をしつつ、フリーのライターとして活動している。
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