2017年3月12日〜15日にかけて、米テキサス州オースティンで開催された「サウス・バイ・サウスウエスト・トレードショー(以下、SXSW)」に未来の東京ファッションやVR、IoTをテーマにしたブースを出展したり、VOYAGE GROUPと共同でVRショッピング「VR PARCO」をオープンしたり、テクノロジーの活用に注力している株式会社パルコ。

 

また、同社が運営するショッピングセンター「PARCO」は、ショップスタッフが運営する店頭運営型EC「カエルパルコ」や、スマホを通じた新しい「個」客接点=アプリ「POCKET PARCO」など、オムニチャネル戦略も推し進めています。

 

パルコがテクノロジーの活用に注力することにした背景には何があったのか?そして、将来的に店舗をどうしていきたいのか? 今回、株式会社パルコ 執行役 グループICT戦略室担当の林直孝さんに話を伺ってきました。

 

「デジタル化が遅れている……」という危機感がテクノロジー活用の発端に

ー林さんが所属されている「グループICT戦略室」というのは、どのような部署なのでしょうか?

:Webサイトのリニューアル化やアプリの開発、店舗内のWi-Fiの設置など、店舗のテクノロジー化を推進して、テナントと顧客の接点を増やす取り組みを行っている“Webマーケティング部”と基幹系の情報システムを担当する“IT推進室”の2つが統合し、2017年3月に立ち上がった部署です。具体的には、ショッピングセンター「PARCO」だけでなく、グループ会社を含めた全体の戦略的なICT活用をミッションに、さまざまな取り組みを行っています。

ー2つの部署を統合することになった背景には何があったのでしょうか?

:ご存知かもしれないですが、ショッピングセンターはデジタル化の波に乗り遅れていて……。テクノロジーを上手く取り込めていなかったんです。ただ、これからの時代、今のままではダメだろう、と。それで、まず2013年にデジタルマーケティングを専門で行う「Webコミュニケーション部を立ち上げたんです。

 

その部署では、競合他社に先駆けLINE公式アカウントを開設したり、各店舗の個別のSNSアカウントを作成したり、いかにスマホネイティブな世代の人たちと接点を創出し、PARCOに興味を持ってもらえるか。デジタル化の取り組みにチャレンジしていきました。

 

また、2014年度〜2016年度の中期経営計画の戦略のひとつに「独自のICT戦略」が掲げられ、Web/マーケティング部とIT推進室の2つの部署に分かれ、さまざまな取り組みも実施してきて。今後、さらにスピード感を持ってデジタル化を進めていくには、統合した方が情報共有しやすい、ということで統合してグループICT戦略室になりました。

 

ー2013年にWebコミュニケーション部が立ち上がり、2014年から2016年にかけては独自のICT戦略が掲げられ……。具体的にどういった取り組みを行ったのでしょうか?

:PARCOのWebサイトには各テナントが情報発信を行うショップブログがあるのですが、当時ガラケー仕様だったこともあり、ショップブログを活用しているPARCOとそうでないPARCOに分かれてしまっていたんです。

 

ただ、ショップブログを活用しているPARCOに話を聞いてみると、集客につながっているテナントが多くなっているとのことだったので、これは共通のプラットフォームとして、スマートフォンに最適な形で情報発信ができるようにした方がいいな、と。

:それでPARCOのWebサイトをスマートフォンに適した形にリニューアルし、スマートフォン上で顧客とコミュニケーションをとれるようにしたんです。その結果、スマートフォンでブログを見て来店する流れが出来上がったのですが、今度はテナントや顧客から「ブログ経由で商品を購入できるようにしたい」という声があがってきたので、次にショップスタッフが運営する店頭運営型EC「カエルパルコ」をスタートしました。

 

こうしてスマートフォン上での新しい購買体験の土壌を作りつつ、2015年3月には公式アプリ「POCKET PARCO」をリリースし、来店前から来店後まで、いつでも顧客をサポートできるようにしたんです。具体的には、PARCO各店舗Webサイトと連携して、全国のショップからオススメの情報を発信しており、ユーザーは気になった商品のクリッピング、店頭でのチェックイン、ショッピング、更にショッピング後のサービス評価などによりポイントを獲得できます。これにより、今までは難しかった購買前後のデータ収集ができるようになるなど、オムニチャネル化を推し進めていきました。


公式アプリPOCKET PARCO

 

パルコがSXSWに出展したワケ

ーなるほど。最近はVRの活用に積極的に取り組んでいる印象がありますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

:ICTを活用した取り組みを進めていく中で、2016年に注力していく領域を決めまして。それがVR、AI、IoT、ロボットの4つだったんです。

 

VRについては、2016年3月12日に渋谷PARCOで行った世界的デザイン集団「TOMATO」の結成25周年記念エキシビジョン「THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION”O”」で、Underworldの招待制シークレットライブを渋谷PARCO Part 3の屋上で開催したんです。それと同時に渋谷PARCO Part 1内スタジオ「2.5D」でライブをVRで体験できるようにしてみたら、「VRってすごいな」と。

 

:この技術をショッピングで活用する方法はないかと思い、VR事業を手がける会社とお会いする中で、偶然、ファッションVRショッピングサービス「STYLY」を手がけるPsychic VR Labと出会いまして。当時、ちょうどパルコの自主編集ショップ「By PARCO MEETSCAL STORE」が未来の東京ファッションをテーマにしたポップアップショップを企画していたので、そこに彼らが持つVR技術を活用し、“20年後の未来の東京のファッション”が表現できたら面白いんじゃないか、と思い、企画を走らせていきました。

 


VR技術協力:Psychic VR Lab

 

ーSXSWにも出展されていたものですね。

:そうです。未来の東京のファッションをテーマにしたポップアップショップ「2037年トーキョーcollection – TOKYO 解放区×PARCO -」を4月から開催する前に、どういったものになるのか実際に試しておきたかったことに加え、海外の人の反応を見たかったのでSXSWに出展することにしました。


SXSWでのブースの様子

 

ーSXSWに出展してみて、反応はいかがでしたか?

:ファッション×VRに対する期待感の強さを感じました。良いところは良い、ダメなところはダメ、と正直な意見をくれるのはすごく有り難かったですね。

 

AI、IoT、ロボットに関しては、どういった取り組みを行ってきたのでしょうか?

:AIに関してはアプリに活用することでレコメンドの精度を向上させたり、IoTに関してはさまざまなセンサーによってデータを獲得し、より適切なタイミングでお客様に向けて情報を提供できるようにしたり、といったことをやってきました。また、ロボットについてはフロア案内の実証実験もスタートしています。

 

テクノロジーの活用で、いかに接客を拡張していけるか

ーなぜ、ここまでテクノロジーの活用を推し進めていけるのでしょうか?企業規模も大きくなると、なかなか難しいと思うのですが……。

:パルコの社員はみんな新しいものが大好きなので、 VR、AI、IoT、ロボットといったワードが出てきたとき、どうしたら売り場に持ち込めるか、を考えているんです。だからこそ、スピード感を持って進めることができている、と思っています。

:ただし、闇雲になんでもかんでも取り入れようとするのではなく、「接客を拡張する」というコンセプトはブラさないようにしています。

 

接客といえば、これまで決められた場所、決められた時間でしか行えなかったのですが、テクノロジーの発展によって変わった。だからこそ、カエルパルコやPOCKET PARCOを提供してきましたし、VR、AI、IoT、ロボットといったテクノロジーによって接客を拡張していければ、と思っていますね。

 

ー最後に今後の展望がありましたら、教えてください。

:2013年からスタートしたオムニチャネル化の取り組みですが、正直、まだまだやれることはあるなと思っています。顧客データをもとに、よりパーソナライズされた情報や特典を提供することで、ショッピングを便利なものにしていきたいです。

 

また、VR、AI、IoT、ロボットに関しては自社だけでなく、いろんな企業と一緒になって取り組んでいき、新たな購買体験の実現を目指していきたい、と思っています。そういう意味では、2019年秋に再オープンする渋谷PARCOに、取り組みの成果が表れると思いますので、ぜひ楽しみにしていただければ、と思います。

 

ーありがとうございます。今後の取り組みも楽しみにしています!

 

オムニチャネル化に始まり、VR、AI、IoT、ロボットといった最先端のテクノロジーも積極的に活用しているパルコ。話を聞いていて、「社員みんなが新しいものが好き」といった言葉が印象的で、実際に社員が集まってセンサーデバイスを作ったりするIoT部という同好会もあるそうです。「接客を拡張する」という信念のもと、常に新しくできることを探しているからこそ、パルコは時代の波に飲まれることなく、進化し続けているのではないでしょうか。

 

Photographer:Shohki Eno

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新國 翔大
Post Author

新國 翔大

1991年生まれ。埼玉県出身。U-NOTE、サムライトでライター・編集者としての経験を積み、現在はBASEに所属。ショッピングメディア「BASE Mag」の運営をしつつ、フリーのライターとして活動している。