イベントマーケティング・SNSマーケティングの情報を発信するWebメディア「COMPASS」(コンパス)が主催するイベント「COMPASS Secret Salon」。その第3回目が2017年7月6日に開催されました。

 

「現代の中高生に向けたコミュニケーションとは」と題した第2部のトークセッションには、ティーンに絶大な人気を誇る雑誌『Popteen』編集長の森茂穂氏が登壇。編集長就任後、同誌をわずか1年で約4万5千部の実売アップに導いた“若者文化を紐解くコツ”を今後のトレンド予測とともにお話いただきました。モデレーターはCOMPASS編集長 石井リナが務めました。

 

スピーカー:Popteen編集長  森茂穂

モデレーター:COMPASS編集長  石井リナ

 

『Popteen』V字回復のカギは「個性があってカワイイ」

石井そもそも論から話をはじめさせていただきたいのですが、『Popteen』の編集長に就任される以前のキャリアを教えていただけますか?

 

現在は休刊していますが、ギャル誌『Happie nuts』の編集長を務めていました。発行元の会社が倒産してしまいフリーになっていたときに、同誌の売上を回復させた手腕を評価していただき『Popteen』の編集長に就任した運びです。

 

石井編集長就任当時、『Popteen』も売上が芳しくなかったとお伺いしています。

 

ギャルブームの終焉とともに売上が衰退している時期でした。当時は手探りで「10代に刺さるコンテンツは何だろう」と考え、じっくり答えを探していました。外部からは“V字回復”といわれていますが、徐々に売上を回復していき、今で丸3年経ったところです。

 

石井「V字回復」のきっかけについてお伺いしてもよろしいですか?

 

『Popteen』を“カウンターカルチャーの雑誌”と位置付けたことです。私が編集長に就任した2014年頃は、ギャルブームの全盛期が過ぎたとき。ギャルブームを牽引していたのは、「派手なメイクをすることで私も可愛くなれる」という風潮でした。しかし、その後来るアイドルブームによって人気が衰退しました。

AKB48がその代表です。秋元康さんは否定していますが、世間的には「クラスで3番目に可愛い女の子が国民的スターになる」というロジックが成立していましたよね。要するに、ナチュラルに可愛いことが若い女の子のツボを押さえるように思考がシフトしていたんです。『Popteen』はその逆をいこうと思いました。

 

石井たとえば、原宿カルチャーであったり?

 

そうですね。いわゆる「普通の可愛い」ではなく、「個性があって可愛い」ものを探しました。その代表が奇抜なファッションや独特の価値観を持つ原宿カルチャーです。それまでは渋谷が流行の発信地でしたが、街を見渡すとターゲットにしていた年齢層が少ないと思ったんです。ただ、原宿には制服で遊んでいる女の子が非常に多かった。雑誌として打ち出したい文化と時代性が合っていると感じたんです。そして、原宿で輝きを放っていたのが藤田ニコルでした。

 

少数派を恐れない世代である

石井現在は藤田ニコルさんに加え、ゆらゆらさんやみちょぱさんも積極的に打ち出していますよね。3人の総称は「ゆらちょぱるん」と言われていますが、一昔前であれば、出ている雑誌が違うほど、それぞれ大きく個性が異なります。なぜこの3人を起用しているのでしょうか?

©角川春樹事務所
左)ゆらゆら 中央)にこるん 右)みちょぱ 3人を総称して「ゆらちょぱるん」と言う

 

 大げさな話ではなく、今は24時間SNSにつながっている時代です。SNSには可愛い女の子たちがたくさんいて、各々が自分の信じる「可愛い」を常時発信しています。なので、以前のように一つだけの価値観を押していくことに限界があると思ったんです。

 

僕らの世代は、自分と同じような格好をしていたり、自分と趣味嗜好の似ている人たちとリアルでつながるしかありませんでした。クラスの中で「少数派の好き」を持っている人は、なかなかそれを発言できなかったと思います。でも今は、SNSを通じて同じ趣味を持つ人をとつながり合うことができる世の中です。誰に何を言われても、ブレずに自分の価値観を持つ子が増えたと思います。

 

そこで原宿に軸足を置きつつ、ニコルに加えそれぞれカラーの違う2人を起用し、読者を増やしていこうと。多様な価値観を打ち出すことで、共感を得ようと考えたのです。

 

石井売上を第一に考えた末の戦略ですか?

 

いえ、編集長に就任した頃から『Popteen』はモデル一人ひとりがオリジナルを発信していくのが大事だと思っていました。先日ニコルが卒業を発表しましたが、モデルだけの卒業式を開いたんです。そのときにニコルが「『Popteen』はみんなで作る雑誌で、みんなの可愛いが詰まっている。これからも自由にのびのび頑張ってね」と後輩たちに伝えていて、僕が作ってきた『Popteen』をストレートに表現していると感じて嬉しくなりました。

 

なぜ中高生にとってInstagramは難しいのか

石井先ほどSNSについてお話がありましたが、スマホやSNSは若者にどのような変化をもたらしたと思いますか?

 

同じ趣味を持つ人を見つけられるので、そこにコミュニティができますよね。価値観に正解はないと知ったことで、たとえ少数派でも恐れなくなったと思います。価値観の違う「可愛い」でも否定せず、個性として「可愛い」と捉える傾向はありますね。

 

石井同じSNSであっても、世代によって主に使われるものは異なります。『Popteen』の読者である中高生の女の子が主に使うSNSはTwitterです。「Instagramは難しい」とよく聞くのですが、その理由は何なのでしょうか?

たとえばゆらゆらは自分の世界観をすごく大事にしているんですね。自分で納得したものしかアップしません。自分の信じる価値観を明確に分かっている彼女でさえ、1日に1回アップできればいい感覚なので、普通の子はなかなかInstagramにアップしたくなるような画像を見つけられないのではないでしょうか。

 

石井なるほど。そうしたSNSを用いて中高生の消費行動を探ることも多いと思いますが、リアルな場でも実践されていることはありますか?

 

竹下通りの出入り口で、ずっと女の子を見ていますね。読者ターゲットになりそうな子が多く、ずっと見ているとなんとなくトレンドの変化が見えるんです。カラフルなスポーツバッグが人気かと思えば、今度はシックなミニバッグが人気になったり。そう思っていたら、再びスポーツバッグの人気が再燃するけど、今度はブラックカラーになっていたこともありました。バッグ一つとってもトレンドを予測するツールになると思います。

 

石井やはり中高生のトレンドサイクルは早いんですね。

 

これは中高生に限った話ではないと思います。「世の中」と括ってしまえば大雑把かもしれませんが、たとえばアプリを考えてみてください。一時期夢中になったアプリでも、すでにスマホからアンインストールしていたりするはずです。逆パターンもあります。僕が『Popteen』に参画した頃、「メルカリ」を利用しているユーザーは周りにそこまでいませんでした。でも、気づけばほとんどの人が使っています。それほどまでにトレンドは読みづらく、ユーザーを掴むのが難しい時代なんだと思います。

 

重要なのは「見た目」と「物語」

石井リアルなトレンドを最前線で見ていらっしゃると思います。今、女の子たちの間でトレンドになっていることはありますか?

 

韓国のメイクやファッションなどが人気です。ただ、夏を過ぎた頃から徐々にその人気も落ち着くのではないかと思っています。

 

石井それはどうしてでしょう?

 

K-POPは『Popteen』としては2年以上前から扱っているテーマなんです。現状がピークなので、もうそろそろ熱が冷める頃。あくまで勘ですが、今後は“90年代のLAガール”がブームになると予想しています。

 

石井“LAガール”は、私の世代(平成2年生まれ)周りで流行っている気がします。

 

少し上の年代で流行っているものが、そのまま下の世代に取って代わることはよくあります。また、一気に浸透するのもティーンの特徴です。ニコルが分かりやすい例で、人気になった途端に何をしてもウケるんです。

石井現代の中高生には独特の文化がありますよね。なかなか彼女たちとコミュニケーションを取るのは難しいかと思いますが、企業としてはどのようなアプローチを行えばいいのでしょうか?

 

答えはシンプルで、「可愛いパッケージ」にすればいいんです。たとえ優れた商品でも、似たような商品をより安価で販売する企業も数多くあります。そうなると、中高生は「より可愛くて、より安い商品」を選びます。商品を少し進化させるよりは、パッケージを大きく変える方が有効な手段です。

 

また、「今までになかったもの」「自分の欲求を叶えてくれるもの」は中高生の心を一瞬で掴みます。以前、『Popteen』で人気アーティストのAAAを特集して大成功しました。歌詞を文字ってタイトリングするなど、ファンにしか分からない仕掛けを施したんです。すると、熱心なファンたちが反応してくれました。同時期にAAAを特集した雑誌が幾つかありましたが、どれも似たり寄ったり。つまり、コアなファンを満足させる特集はどこにもなかったんです。その中で、『Popteen』はコアなファンの目線にもできるかぎり合わせて誌面作りをした。コアなファンはそのことを誇りに思っていて、いわゆる“にわか”と自分たちを一括りにされることを嫌いますから、「自分にしか分からない表現」に満足し、なおかつそれをアピールしたくてSNS上で拡散してくれました。

 

石井他にも様々な手法があると思いますが、森さんが考えるもっとも大切なキーワードは何でしょう?

 

「物語」ですね。これもニコルの話になりますが、全然人気になる前から「表紙を飾りたい」とTwitterで呟いていたんです。すると、ニコルのファンたちが団結して応援するんです。ニコルの想いがファンの熱狂を惹起し、表紙を飾るまでの物語が生まれます。そのゴールが『Popteen』だったんですよね。

 

石井「物語」がファンを増やしていくキーワードであり、それによって『Popteen』も売上を伸ばしたと。ファン同士がコミュニティを作るきっかけを与えるのは重要そうですね。

 

おっしゃる通りです。今まではクラスのように限られたコミュニティしかありませんでしたが、SNSによってオープンなコミュニティが生まれるようになりました。

SNS上にコミュニティができれば、その数や熱意に後押しされるようにファンは増えていきます。そういう意味で、「友達に話したくなる」のは大事だと思います。若い世代は「私が見つけた」という感覚が好きなので。

 

石井 たしかにそうですよね。本日はありがとうございました!

 

 

Photo:Mariko Kobayashi

 

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オバラミツフミ
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オバラミツフミ

秋田県湯沢市出身。趣味は商店街を歩くことと喫茶店を巡ること。 obaramitsufumi@gmail.com