年々ウェブ上の情報数は増え続けていますが、人間の需要できる情報量は一定と言います。情報が飽和している現在、本当に人々に届けられる人やコンテンツにはどのような共通項があるのか、QREATOR AGENT(クリエイターエージェント)代表取締役の佐藤 詳悟さんにお話をお伺いしてきました。よしもとクリエイティブエージェンシーでナインティナインやロンドンブーツ1号2号のマネジメントを経て、現在はQREATOR AGENTで数多くの文化人や、クリエイターのプロヂュースを手掛けるトッププロデューサーの1人です。

 

面白いニュースを戦略的に届ける

ー佐藤さんは元々よしもとクリエイティブ・エージェンシーでお笑い芸人さん達のプロデュースをしていたと伺いました。具体的にどのようなことをしていたのでしょうか?

佐藤:よしもとでは6年ほど、ロンドンブーツ1号2号さんやハリセンボンさん、COWCOWさんなどのプロデュースをしていました。ロバート秋山さんの「クリエイターズファイル」って知っていますか?チャンネル登録数も14万まで行きましたが、そちらの立ち上げを手伝ったりしていました。

 

ー「クリエイターズファイル」はなぜ流行ったのでしょうか?

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佐藤:最初にコルクの三枝さんからhontoで何か新しいコンテンツを一緒にというお話をいただき、秋山さんと何かやりましょうという話になり。秋山さんにやりたいことを聞いた時、思わず笑ってしまって。そんな面白いことをただただやり続けていたら、流行っていましたね。ここまで話題になるまで、1年ぐらいはかかったんじゃないかなと思います。

 

ー前からやられていたんですね。シリーズの動画はSNSですごくバズっていましたが、インターネット上でバズるコンテンツの特徴は何でしょう?

佐藤:端的に、そのニュースや情報が本当に面白い(興味深い)かどうかですよね。福岡の道路が陥没して大きな穴が空いたことはSNSでもかなり目にしましたけど、あの事故はあれだけ大きな穴が開いていたから話題になったわけですよね。あれが1m程度の穴だったら、危険な事故だけどそれほど大きなニュースにはなっていないはず。やっぱり初見で、興味深いと思うか?それが大事だと思います。

 

ーQREATOR AGENTでは、「QREATORS」(クリエイターズ)というメディアも運営されていますよね。

佐藤:先の事例は事故なので例外ですけど、自分たちで面白い記事ネタを仕込むときはその1~2個をしっかり作り込んで、それを公開するとやっぱり反応は良いです。クリエイターエージェントでは、月に作る記事は10本以下ですが、そのすべてが500~1000シェアされていますね。

 

ー1本に対してかなりのエネルギーを使って作られているんですね。当然それらを広く届ける作業も必要だと思います。

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佐藤:面白いものを作っても届けなければ意味がありません。そのニュースを広く届けるには、SNSでコアファンを多く抱えている人たちに拡散してもらうことも大事ですね。コアなファンがついていれば、そこから加速して、世の中に広がっていきやすい。だから、まずはその本人が面白いと思うものを丁寧に一緒に作って、広げていくことを意識しています。

 

ー影響力という点では、テレビもまだまだ、力のあるメディアですよね。

佐藤:国内ではテレビは人を知らせるためには最強のメディアだと思いますが、そう簡単に露出できるものではありません。そういう時に、ウェブ上で話題になっていると、それが話のネタになり、テレビに取り上げられるという構図ができてきていますよね。落合陽一さんや、Popteen編集長の森さんなど、数名がテレビに出るようになって、結果その人たちの本業に何かしらのプラスになっていく。個人に紐づく仲間やファンの人たちに対しては、特に何も苦労せずにSNSを通して、情報を発信できる時代です。SNSがあるからこそウェブ発のタレント(マスに受け入れられる人)が生まれてきたんだと思います。

 

フォロワーの質をどう目利きするか

ーSNSが広く使われるようになってきて、新しいモデルやタレントを見つけるのが楽になったのはありますか?

佐藤:たしかに楽にはなりましたが、逆に増えすぎて難しくもなっています。実力があるのにSNSのフォロワーが少ないから世の中に出ていかない場合もあるので。

 

ー実力があるのだけど、フォロワーが少ないからスポンサーがつけづらいと話すクリエイターも多いですよね。そんな彼らもフォロワーを増やす努力をしているようです。

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佐藤:フォロワー数は大事ですが、それがゴールではないと思います。モデルさんはその容姿でお客さんを楽しませ、シンガーはその歌でお客さんを楽しませるのがゴールだと思います。まずその人のやるべきことを極めることが大事かなと思います。その世界で凄い人だと思われるほうが、長期的に考えれば絶対個性は活きるし、結果的にフォロワーも増えると思うんです。「フォロワーを増やさないと」という雑念が入ってしまうと、フォロワーを増やすために歌を歌うとか、モデルをやるとなってしまったら、全く個性がなくなってしまいます。自分のしたいことにたいして実直に向き合わないといけません。

 

ー起用する側はどんな心がけが必要でしょうか?

佐藤:フォロワーを増やそうとして増えた人と、別に増やそうとは思ってないけど結果として作品が良いから増えた人は、きちんと目利きすべきかなと。10万人フォロワーと1万人フォロワーって、一見すると10万人のフォロワーの方が良いと思うけど、今後はそのフォロワーの質が問われるんじゃないかと。

 

ーそうなれば良いと思う一方で、現実的にフォロワーの質を問えるようになるまで時間がかかると思うのですが、いかがでしょうか?

佐藤:やはり、フォロワー数はあくまで参考程度で、そのフォロワーがなぜ増えたのかを注目すべきだと思います。 アーティストで、歌が良くて増えている場合、そのフォロワーたちはアーティストにとってもすごく良いフォロワー、つまりそのアーティストの長期的なファンですよね。

 

ー仕事上関係も深いかと想いますが、キングコング西野さんのようにSNS上でコアなファンがたくさんいる方と、そうではない方たちの差もそうしたところにあるのでしょうか?

佐藤:まさしく。西野さんの場合、常にSNSでもリアルでも人を楽しませ続けている。次は、あんなことしている!言っている!やっちゃっている!など。まさに存在が芸人ですね。

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佐藤:やっぱりそういう人たちは実際に会ってみて「面白い人だなー」って心から思います。フォロワーを増やそうとしているわけではなくて、面白いことをやっている結果、フォロワー数が増えていってますよね。フォロワー数を意図的に増やそうとすると、現実と捻じ曲がってしまうので。それって本質じゃない、本物じゃないから架空になってしまう。フォロワー数だけを参考にしているクライアントも気づかなきゃいけないですよね。

 

口コミで広がるものこそ、本質である

ーこれまで色々な方のプロデュースをされてきたと思うのですが、うまくSNSと絡めてプロデュースできた事例などありますか?

佐藤:小学校の先生なんだけど、沼田先生とかかな。numata_qa
Qreators より

すごく面白いんですよ。ほんの些細なことでも工夫して生徒を飽きさせず、楽しませようとする授業をして、生徒たちが積極的に意見を言える環境を作っている方で。沼田先生は自分がしてきたことをウソをつかずにそのまま記事にしたところ、9万ぐらいシェアされて、テレビに出て出版社から本の話がきて、今度4冊目が発売されます。彼の夢だった、本を出すことが叶ったんですよ。SNSで人生変わりましたよね。本当に良いものはこうやって評価されるべきだと感じました。

 

ー面白いものを広く届けるときに、大切なことはなんでしょう?

佐藤:プロデューサーの立場であれば、2つあります。1つ目は、最も「面白い!」を俯瞰で考えることだと思います。僕の「面白い!」が世の中の「面白い!」と一致していなければなりません。2つ目は、「面白い!」をできる限り多くの人に届ける方法を考え、実行することだと思います。一番良い届け方は、シンプルですがやはり口コミです。

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佐藤:言ってしまえば、原始時代から人間なんて、本当に良いものはみんなで口コミで良いって伝わっていたはずだと思うんです。原始時代の口コミが、今はLINEやTwitter、facebookという形になっているだけだと。考えるべきは、そういう所にどう入れるか?ということで、とにかく一般の人たちの日常の話題になることです。そのためにはテレビに出ることなのか、ラジオに出ることなのか、WEB記事に出ることなのか、それぞれものによって違うと思いますが、アイディアを考え尽くし、種をまかない限りは、話題にはなりませんよね。

 

純粋に、世の中をもっと面白く

ー様々な方々のプロデュースをされてきた佐藤さんの、今後の目標や夢など教えて下さい。

佐藤:僕は単純に、面白い人に興味があるんです。そういう人たちって、大体何かが欠けている人が多くて、その欠けている部分を自分が補えたらなって。クリエイターエージェントとしてはなるべく面白い人達が集まって来て、面白いプロデューサーがくっついて、その人たちを世の中に発信していけば、世の中ってもっと面白くなるんじゃないかと思っているんです。夢はエージェントとメディアを両方持つことですが、それを手段として、本当に面白い人達のことをより早く世の中に伝えることができればと思っています。

 

ーメディアやエージェントの両者をもって、良いサイクルを生み出すということですね。本日はありがとうございました!

 

 

まさにここ最近、インフルエンサーを使ったSNSマーケティングで問われているのが、フォロワーの質。素晴らしいクリエイター達の、面白いものを愚直に作り上げている姿を間近で見ている佐藤さんだからこそ説得力のある話でした。フォロワー数で評価されるのではなく、まずは自分自身の作り上げた作品で評価されることこそが、多くのクリエイターやアーティストにとって重要です。加えて、それらを評価する企業やユーザーも備えておきたい視点ではないでしょうか。まやかしの影響力にごまかされず、本当に面白いモノを作っているひとを見極める力が、私達にも問われています。

 

Interview photo:ENO SHOHKI

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石原 龍太郎
Post Author

石原 龍太郎

1992年生まれ。編集者・ライターとして音楽やファッションなど、カルチャー領域を中心に雑誌やウェブメディアで執筆。守備範囲は広めです。