ソニーは、2017年4月8日(土)、渋谷モディ(東京都渋谷区)に、新しい情報発信拠点“Sony Square Shibuya Project”をオープンしました。
ソニーグループの製品、テクノロジー、コンテンツを掛け合わせることによって、ユニークかつ新たなソニーの魅力を伝えることを目指して開設されたスペースです。1〜2か月ごとに更新されるテーマに基づいた企画展示を行っており、定期的に展示内容は変更されます。
製品のデモンストレーションにとどまらず、インタラクティブでユニークな体験型のコンテンツを多数用意し、渋谷の街を訪れる人の好奇心を刺激する体験を提供しています。
ソニーの技術を体験できるイベントとは
Sony Square Shibuya Projectのテーマは1〜2ヶ月で更新されます。2017年7月14日(金)〜8月31日(木)は、映画「スパイダーマン:ホームカミング」とのコラボ企画を体験することができます。展示内容は、「スパイダーマン飛行体験」、「スーパースローボックス」(※7月29日(土)からは「『スパイダーマン:ホームカミング』VR」)、「撮影小物・アートワーク展示」など臨場感のある体験を楽しむことができます。
「スパイダーマン飛行体験」では、目の前のスクリーンにスパイダーマンの視点で、映画の舞台となる街が映し出され、映像に合わせて椅子が動くことで、まるでスパイダーマンになったかのような体験をすることができます。
「スーパースローボックス」は、通常の約32倍、1秒960コマの「スーパースローモーション」動画が撮影できるようになったXperia™ XZ Premiumを使った撮影ブースです。こちらはスパイダーマンの映画とコラボしながら、ソニーの製品を体験することができます。また、ブースで撮影した動画はその場で持ち帰ることができます。
https://twitter.com/SonySquareSP/status/887192179898073088
今回、ソニー株式会社 ブランド戦略部 統括部長 森 繁樹さんにSony Square Shibuya Projectの概要や背景、さらにはソニーの考えるオフラインでのユーザーとの繋がりとはどのようなものであるかについてお話を伺いました。
発信できないとフラストレーションが溜まるのではないか
—Sony Square Shibuya Projectを行うに至った背景を教えてください。
森:ただ商品を並べて、機能説明をする一般的なショールームとは異なり、ソニーの技術やサービス、コンテンツといったものを組み合わせたユニークな体験をできる展示をして、ご来場いただいた皆さまとエンゲージメントしていくという狙いがあります。また、エンゲージしていく中で、来場者と我々が仲間になっていける場をつくっていくことを目的にしています。
—体験型のコンテンツをたくさん用意されていますよね。
森:展示をするにあたって、ただ様々なコンテンツを並べているだけではいけないと思っていました。実際に手にとって触れてみないと、なかなかそのコンテンツの良さは伝わらないものです。触ってみて初めてわかることもたくさんあると思っているので、体験型のコンテンツを重要視しています。
—実際に体験した人がSNSで共有したくなるようなコンテンツもありますよね。
森:我々がオフラインの場を設けようと思った理由の1つに、若い人や発信力の高い人、またグローバルな人々と繋がりたいと思ったことが挙げられます。そのような方は、いいなと思った時に、自ら発信することができないとフラストレーションが溜まるのではないかと思うんです。そのため、ただ体験していただくだけでなく、体験をうまく他の人と共有できるようなコンテンツを作りました。
ダイバーシティーを発信する「渋谷」という街
—「渋谷」という街で行うことについて、どのように考えられていますか?
森:周知の通り、渋谷は文化発信の地です。ソニーの持つユニークな魅力と渋谷のユニークな魅力を掛け合わせ、一緒に盛り上げていきたいと思いました。渋谷はイベントとしても音楽、ファッション、ハロウィン、カウントダウンなど、様々なものを開催しており、ダイバーシティーへのメッセージ発信も積極的です。このような街の姿勢と一体になり、そこにソニーの楽しさをミックスすることで、さらに面白い体験になると思っています。
また、テーマや展示内容は短いスパンで、どんどんと変えているんです。テーマは1〜2ヶ月に1回、そのテーマの中でも小さな変更を行っています。常に新しいユニークな展示を体験できる形にすることで、渋谷に来るたびに「Sony Square Shibuya Projectに行こう」と思ってもらえるようにしています。
—渋谷なので、実際に来られる方々も若い方が多いのでしょうか。
森:我々が当プロジェクトで特にターゲットとしていたのが若い人、発信力のある人、グローバルな人々でした。そのような狙いがある中で、実際に来場者の半数以上を占めているのは、10代と20代前半の方々です。さらに来場者の男女比は4:6程度、日本人と外国人の比は7:3程度となっています。これらの数字を見ると、渋谷で当プロジェクトを行うに至った狙いがしっかりと達成できていると思います。
—実際に足を運ばれた方からの反響というのはいかがでしょうか。
森:反響はとてもいいです。アンケート結果などを見ても、皆さんとても楽しんで下さっています。ソニーの製品の中に、質はとても高いけれど、高価で若者の目につきにくい製品もあります。
そのような製品と若者は今まで、実際に触れ合う機会があまりありませんでした。そんな中プロジェクトで、実際に製品に触れてもらって、楽しんでもらい、質の高さやモノとして良さが伝わっているのは良かったですね。触れ合って楽しんでもらって、我々のファンというよりも、我々の仲間になってほしいと思っています。
—仲間というのはどういう意味なのでしょうか。
森:感覚としては友達、親戚、家族のようなものです。ファンとしてあこがれの存在的ではなく、ブランドをそのように見てもらう方が、エンゲージメントも高くなり、我々と長く親密な関係を続けていくことができると考えています。
記憶に残す、声を聞くためにオフラインイベントを
—当プロジェクトのように、オフラインでユーザーさんとつながることの重要性、オフラインにおける施策の重要性についてはどのように考えておられますか。
森:今まで様々なプロモーションを行ってきてわかったことなのですが、例えばイメージ広告を作っても、そのイメージ広告が生活者の中に深く残ることは少ないです。逆にイベントで実際に触れて楽しんでくれた記憶というのは、皆さんの記憶の中に体験として深く残ります。
このような経験があるため、オフラインのリアルな場所を運営していくことはとても重要だと考えています。また、オフラインでリアルな場所を運営することによって、ユーザーさんのリアルな声を聞くこともできます。
森:また、オフライン施策の重要なポイントはその“場所”とのエンゲージメントだと感じています。場所とのエンゲージメントが深まることで、そこを訪れる人たちとのエンゲージメントもさらに深いものとなっていく。そのことに意義があると思っています。
—SXSW(サウスバイサウスウエスト)にも出展なさっていますよね。これもオフラインの場所を設ける狙いからなのでしょうか。また、SXSWではどのようなことをされたのでしょうか。
森:SXSWにはまだ世間に公開していない、開発中の技術を持ち込み体験型のブースにし、小さな遊園地のようにしました。このような体験は他ではできないため、とても盛り上がりました。
また、展示を行う際に技術に関しては来場者に何も説明をしませんでした。これも我々が意図して行ったことで、関心を持ってくださった方は自ら「これはどうなっているの?」と聞いてきてくださったり、来場者同士で技術に関する考察を言ってくださります。その話が盛り上がり、次はこうしよう、どうしようという話が進んでいき、我々とユーザーさんがオフラインの場で親密な交流をすることができました。
SXSWの良さは他にもあります。普通のプロモーションイベントであれば、マーケティング行為がメインになってしまいます。ところが、SXSWは先に述べたような、マーケティングとは違ったプロモーションができることに加えて、ソニーと同じような文化背景があるところです。 ミュージックから始まり、映画、技術と挑戦しながら拡張していった。 ソニーも順番は違いますが技術からミュージック、映画、ゲームなどのエンターテインメントに挑戦してきました。 同じ文化背景を持ち、かつ挑戦を受け入れるSXSWで、我々ソニーの挑戦の過程を披露できるという意味では、“場とのエンゲージメント”という意味でも非常に良い連鎖があったと感じています。
—今後もオフラインの場を設けて、ユーザーとコミュニケーションを取っていくのでしょうか?
森:まだ具体的な予定はないのですが、オフラインの場を重要視しているので、どんどんとやっていこうと思っています。しかし、実際にやるとなると場所や、本当に集客できるのかの計算など、様々な問題があります。
オフラインの施策は、実際に人々と触れ合うことができるからこそ、デジタルの施策よりも慎重にならざるをえない部分があります。しかし弊社では、これからもオフラインのイベントの場を積極的に考えていこうと思っています。
—ありがとうございました!
文化発信の地渋谷で、オフラインでユーザーと触れ合うソニー。ブランドのファンではなく、仲間を作っていくために、より親密にコミュニケーションを取れる企画を考えています。体験したあとに発信することがないとフラストレーションが溜まるのではないかという考えのもと、コンテンツを作られたことなど、若年層に向けたイベント作りとして非常に参考になるものではないでしょうか。
Photo:Noboru Miyamoto