動画の向こう側にいる、あの人、あの土地、あの音楽のことをもっと知りたい。行ってみたいし、真似したい。―――いちユーザーとして、動画サイトの動画を眺めながらそんな願望を抱きつつも、検索する手間が面倒だったり、検索しても自分が望む情報が出てこなかったりして不便な経験をすることは多々あります。

 

それは動画を出す企業側も同じ。テキストや動画などの一方的な情報伝達では伝えられない、または伝えにくいものをどのようにユーザーに伝えるかということは、動画領域が盛り上がってきている現在において重要な要素です。

 

動画を通じて、もっとインタラクティブなコミュニケーションがとれれば…そんな企業とユーザー、両者の想いを叶えるサービスが「Spotful」(スポットフル)。動画上にウェブサイトやSNS、地図、問合せフォームやカスタムした写真やテキストなどを自由に設置することが可能なサービスです。今回はSpotfulを運営する株式会社g&hの松山さんにお話を伺いました。

 

HPやSNSへの誘導、商品の購買まで実現

――まず、Spotfulは一体何ができるものなのか教えていただけますか?

 

松山:例えば、ミュージックビデオ上で「この人の音楽いいな」と思ったとします。気になってもう少し詳しく知りたいと思ったときに、当たり前ですが、そのミュージックビデオの動画上には「そのアーティストが誰なのか、どんな人なのか」など、その先にある音楽や人に付随した情報はありません。そのときに、動画上にボタンリンクを設置することで、ミュージックビデオを見ながらその人や音楽の情報、またはライブのチケット情報まで分かるようになる仕組みがSpotfulです。

 

――すごい…!

松山:とある動画に出ている人のことが気になり、「Twitterではどんなつぶやきをしているんだろう」という場合には、動画上に貼られたTwitterリンクをクリックすると画面上でタイムラインを表示させることもできます。ミュージックビデオを配信する企業は、1つの目的として曲をダウンロードしてもらうことがあるので、Spotfulを使えば動画上にSpotifyのリンクを貼ることでプレイリストを購入することができるようにもなります。

 

あとはファッションの事例もあります。動画の中の人が着ているものが気になった時、動画上のリンクからその人が着ているものと同じものが買えるようになる、というものです。もちろん動画を見ながら。ECサイトや動画コマースの領域はいま盛り上がっているのでどこもみな模索していると思いますが、仕組みを作るのにはやっぱり大変。その点、うちは管理が楽で簡単に埋め込むことができるという部分が強みですね。

旅行系の事例では、観光地の光景が流れている動画にSpotfulを使うことで、この場所はどんなところなのか知れたり、飛行機のチケットを予約できたり、Googleマップとも連携できるので動画上でその動画に映っている場所がどこなのかということも知れます。

 

――インタラクティブ動画って、これまではあったんですか?

松山:作品としてのインタラクティブ動画は2014年くらいからありますが、もっと簡単に、誰でも触れる動画がつくれるとい意味では、Spotfulが初かと思います。実際、クライアントさんからも「管理画面が使いやすい!」と評判は良いですね。

 

動画の世界感に合わせたアノテーションを

――動画の制作はどのように進めていくのでしょうか?

松山:動画の目的によって、出すインタラクションも変わってきます。この動画(※以下)の場合、服について動画で伝えるときに、動画だけでは伝えられない情報も載せることができます。値段はいくらなのか、素材は何なのか、デザイナーは誰なのかなど。作るときも、パソコンに慣れている人なら大体30分くらいでできちゃう。

――手軽に作成できるのはいいですよね。

松山:そこが特徴的ですね。誰でもインタラクティブ動画を作れるというところが肝。こだわればこだわるほどより良いものが作れますし、インスタントで簡単につくることもできるので、用途に応じて色々な使い方ができます。

 

――なんだか、Google Glassを見ている感じに近いなと思いました。あれも知りたい情報がぱっと出てくるじゃないですか。それにすごく近いなと。

松山:おっしゃるとおり。VRとかGoogle Glassの世界観って、すこし先の世界だと思うんですよ。僕らのようにテクノロジーやITが好きな人は既に身近なんでしょうけど、それが一般化されるには時間がかかるので、Spotfulも未来と現在の中間にあるサービスだと思っています。なので、これから確実に需要はあるなと。

私は、インタラクティブ動画という言葉が指すものというと、まだまだテクノロジーアート領域に限定されるものだなあと思っています。あれはあれでもちろん素晴らしい。ただ、やり方とコツさえつかめれば誰でも一定のクオリティを担保したインタラクティブ動画を作れるところがSpotfulの魅力だと思いますね。

 

――表示のアイコンもかわいいですね。

松山:アイコンがYouTubeのアノテーションあるじゃないですか。あれ、実は全然押されないんですよ。今のアノテーションってダサいから。だから、動画の世界観に合わせたクリエイティヴがいじれるという意味ではすごく強いと思っています。

 

情報が必要な動画と必要のない動画

――これまでただ見ているだけだった動画上に、何らかの体験があるだけでも記憶に残りやすいです。

松山:そうですね。ただ、全部が全部インタラクティブ動画になるかというと、それは違うと思っていて、やっぱりインタラクティブ性が必要なものだけでいいんですよね。

 

――必要なものというと、具体的にどういうものでしょうか?

松山:動画プラスアルファの情報を見せたいもの、ですかね。ファッションや旅行系などは動画に映っている情報に付随する情報がたくさんあるので、そういうものとか。逆にブランドの世界観を表す動画などには、インタラクティブをぽんぽん出すというより、冒頭と最後の部分にキャッチ的に入れてアクセントを付ける程度で良いと思います。

 

――他にどのような業種で親和性が高いんでしょうか?

松山:キャリアサイトは結構面白いなと思っていますね。新卒採用で動画を作っているところはいますごく多いじゃないですか。それをただ見てもらうだけじゃなくて、例えば社員個人のTwitterと繋げてみたり、Instagramを紐付けたりするのは面白いと思うんですよ。そうすることで手間がかからずみんな調べるので、会社のことだけではなく、そこで働く人の素顔も垣間見えたりして。

 

――良い活用方法ですね。

松山:通常はウェブサイト内に動画が埋め込まれていますが、うちは逆で、動画の中にウェブサイトを埋め込むテクノロジーなのですごく面白いなって。あとはイベント連携とかもしてみたいですね。音楽フェスやファッション系イベントは相性いいなって思ってます。

 

――海外だと、ファッションウィークなどでの、見てすぐに買うっていう「See Now Buy Now」って結構トレンドですよね。

松山:インフルエンサーとかファッションアイコン的なイケてる子がカフェでインタビューを受けている風景を撮影して、そのなかで「これ最近気に入ってるんです」と言っているものが、タップすると動画上で買えるとかね。今の子達はInstagramで良いと思ったものを他のECで検索して買っているので、動画上でそれができるならやってみたいですよね。

 

――最後に、今後の展望を聞かせてください。これからしていきたいことはありますか?

松山:まずは、Spotfulを使えば、インタラクティブ動画が凄く簡単につくれる事を知って頂くことが目先のミッションですね。次に動画制作の作業も結構増えてきているので、そこもより力を入れていかなきゃなと。埋め込みだけじゃなくて、インタラクティブ動画の前提となるプランニングの領域まで手掛ける事が出来るような体制はつくりたいと思っています。

 

――ありがとうございました!

 

私自身、動画を見ていて「この服欲しいな」と思っていてもどう調べればよいか分からずそのままにしておく、ということがよくあります。松山さんいわくまだ認知段階とのことですが、そのような経験があるユーザーとしては、一刻も早くこのインタラクティブ動画が世の中に広まって欲しいと願うばかり。ファッション、旅行、音楽など、インタラクティブ動画との親和性が高そうな領域におけるこれからの拡がりが楽しみです。

 

Interview photo:ENO SHOHKI

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石原 龍太郎
Post Author

石原 龍太郎

1992年生まれ。編集者・ライターとして音楽やファッションなど、カルチャー領域を中心に雑誌やウェブメディアで執筆。守備範囲は広めです。