2017.2.28

「お客さまの〈夢をかたちに〉する、〈夢に日付を〉いれるお手伝い」というミッションのもと、銀行という枠組みを超え、常に新たなことにチャレンジし続けているスルガ銀行。「ロードバイク購入ローン」、「鉄道模型ローン」など、これまでユニークな商品の数々を展開してきました。

 

そんな同社がコミュニケーションスペースをオープンしていたことを、みなさんはご存知だったでしょうか?そのスペースの名は「d-labo」。現在、ミッドタウン、二子玉川、たまプラーザ、湘南、静岡の5箇所に展開。どのスペースも銀行が展開しているとは思えないような雰囲気が特徴的です。

 

なぜ、スルガ銀行はこのようなスペースを展開することにしたのか?その狙いを、スルガ銀行のビジネスプランニングマネージャーである鈴木謙吾さんとアドバイザーを務めるフライシュマン・ヒラード・ジャパンのシニア・バイス・プレシデント&パートナー 馬渕邦美さんに伺ってきました。

 

金融機関として個人のライフスタイルをどうサポートしていけるか

— d-laboを始められたきっかけは何だったのでしょうか?

鈴木日本の金融機関は一般的に法人と個人の両方をお客さまにしているのですが、弊社は個人のお客さまが約9割、と個人の金融サポートに特化した銀行。創業以来、個人が抱える将来の悩みや金融の不安に対するサポートを行なってまいりました。

鈴木今から10年前の2007年、銀行の新たなカタチを研究する目的でd-labo(夢研究所)を立ち上げました。お客さま一人ひとりの夢をカタチにすることやお客さま自身の「らしさ」を追求していただくために活動を行なっております。

個人のお客さまをサポートしていくために、その人の夢や将来実現したいと思っていることに繋がる情報発信をしたり、人と人を繋げたりする場になることを考え、企画・運営をしています。

 

サイトを拝見して、良い意味で銀行っぽさがないなと思いました。

鈴木それは強く意識しましたね。むしろ、銀行と呼ばれなくてもいい。それくらいのイメージでd-laboを立ち上げました。あえてd-laboというブランドを掲げたのはそうした理由からです。

例えば、d-labo以外にも2016年10月21日に東京(日本橋)にオープンした「スルガ銀行ANA支店 Financial Center」も同様のアプローチを実践しています。せっかくANA様と提携させていただいたモデルとして、金融商品やサービスだけにフォーカスするのではなく、「ANA支店で取扱っているデビットカードを持ってどこに行ってもらうのか?」、「旅先で何をしてもらうのか?」という金融以外の情報発信にも注力しています。そういった点を刺激することで、お客さまの将来的な行動をサポートさせていただけるかもしれないと考えています。日本橋で次の旅行の計画をしてもらう、銀行で旅の目的地を想像してもらうためにあえてこの場所は空港ラウンジのような雰囲気を出して作りました。

銀行に用事はないけど、訪れたい。そんな空間を目指して

空間づくりでこだわっている部分はどこでしょうか?

鈴木T-SITE内に出店させていただいたd-labo湘南は、場面ごとに施設の雰囲気を変えられる仕様になっています。一度行っていただければわかると思うのですが、d-labo湘南では、ヨガやウクレレレッスンなど、湘南という場所でニーズの高いテーマでセミナーを行なっております。利用シーンや目的によって、雰囲気を変える仕組みがとても役立っています。

d-labo 湘南

鈴木また、たまプラーザは、ファミリー層や小さなお子さまが大変多くお住まいの地域ということもあって、気軽に立ち寄っていただき、ご家族で時間を過ごしていただけるスペースになっています。地域にある公園、図書館やカフェのように利用してもらう。そんなイメージですね。だからこそ、銀行に用事がなかったとしても人が集まれる場所になっているな、と感じています。


こどもと触れ合えるスペースのあるd-laboたまプラーザ

馬渕やっぱり、銀行は出来るならば行きたくない場所じゃないですか。その理由のひとつとして時間がかかることも挙げられるのですが、最近はスマホがあれば事足りてしまう。事実、ここ数年で銀行の来店率は急激に下がってきているのですよ。

馬渕そうした状況の中、d-laboのアプローチは新しいですよね。銀行に用事がなくても、その場所に行ってみようと思う。お客さま目線のアプローチに切り替えたからこそ、誕生したスペースだなと思っています。

目的を認知してもらうまでが大変だった

このスペースは世の中が求めているから作ったのでしょうか?

鈴木銀行って規制が厳しく挑戦的に何かを変えていくのはなかなか難しいイメージが強いと思うのですが、もっと自発的に社会を変えていきたい、人ともっと関わり合いたいということをもっと発信していくべきじゃないか、と考えた結果、d-laboが生まれました。世間のニーズに合わせて作った、というわけではないですね。

 

ということは、組織の考えや思いから出来上がったんですね。

鈴木そうです。もともとスルガ銀行は明治28年に静岡県の沼津で創業したのですが、沼津を襲った自然災害や全国的な経済不況により住んでいる村人たちが苦しい生活を送っていたんです。創業者がその姿を見て、個人がいつ起こるかわからない自然災害に対する備えができるように、という思いのもと立ち上げた会社。その思いが今にも受け継がれていて、こうした活動につながっているのかなと思っています。

 

逆に体験をデザインする上で難しかったことはありますか?

鈴木銀行が「歴史のセミナーやります」、「アートについて語ります」といってもお客さまは疑問しかない。そのため立ち上げたばかりの頃は、集客に大変苦労しました。しかし地道に活動を続けてきた結果、口コミで徐々にネットワークが広がり、今では自然に人が集まってくれるようになったなと感じています。まずはd-laboとは何をする場所なのか、それを認知してもらうまでが大変でしたね

馬渕個人的にはコンセプトの部分で、銀行がどこまで出来るのか明確でなかったのは難しかったですね。とにかく最初の頃はプロジェクトのメンバー全員で集まってとにかくアイデア出しを行ない、試してみました。もちろん上手くいかないものもありましたが、それを通して、お互いに何ができるのかが明確になっていき、うまく体験をデザインできるようになっていったかなと思います。

d-laboの存在自体がスルガ銀行にとって財産

実際にd-laboを運営してみて、どのような効果がありましたか?

鈴木d-laboにはスルガ銀行に取引のある人から取引のない人まで、さまざまな方がいらっしゃいます。やっぱり一般的な銀行だと取引のある人としか話せないのですが、我々はこの場所が存在することで、取引の有無に関係なく、さまざまな人とコミュニケーションがとれる。このコミュニケーションを通して、個人のお客さまが日々、どういった考えで過ごされているのか、将来どんなことを達成したいと思っているのか、を立場に関係なく話せる機会が得られるというのは財産ですね。そういったコミュニケーションで汲み取ったニーズから、新しい商品を作ることにもつながってきますし、いろんな活動に広がっていますね。

 

今後の展望があったら、教えていただけないでしょうか?

鈴木もっと発信力を勉強していかなければ、と思いますね。やはり世代によって物事の捉え方は異なってくるので、さまざまな世代の方々と対話を重ねることで、発信力に磨きをかけていきたいです。

馬渕d-laboは箱自体がすごく良いので、そこを軸にして、人が集まってくる取り組みをやり続けることが大事かなと思います。用事がなくても行きたくなる銀行の姿は、今後も追求していかなければいけないですね。

 

話を聞いていて、すごく面白い取り組みだなと思いました!今後の展開も楽しみにしています!

 

常に新しい取り組みを行なっている、スルガ銀行。その裏には世間一般が抱く“銀行”という概念に囚われることなく、「個人のライフスタイルをサポートしたい」という思いが一番にあるからこそ、どの銀行よりも早く行動し、d-laboのようなスペースが誕生したのかな、と思いました。今度、実際に訪れてみたいと思います。

 

Interview photo:ENO SHOHKI

Written by
新國 翔大
1991年生まれ。埼玉県出身。U-NOTE、サムライトでライター・編集者としての経験を積み、現在はBASEに所属。ショッピングメディア「BASE Mag」の運営をしつつ、フリーのライターとして活動している。
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新國 翔大
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