こんにちは、石井リナです。

2020年に向けオリンピック需要の対策として、訪日向けインバウンドマーケティングに注力している企業も多いのではないでしょうか。その中でもマーケッターの関心事と言えば、中国市場とどう向き合ったらいいのか、どうしたら上手く彼らを相手にインバウンドマーケティングができるのかということです。

中国版Twitterとも言われるWeiboで230万人フォロワーを誇る編集者、フォトグラファーである米原康正さんにインタビューさせて頂き、中国マーケットをどう捉えるのか、日本人と中国人のコミュニケーションの違いは、という点を追っていきたいと思います。
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カメラもDJも全て「編集」の仕事

石井リナ:まず、米原さんの肩書って何でしょうか?フォトグラファー、編集者、DJなど様々な面を持ってらっしゃいますよね。

米原康正
:自分では編集者だと思ってます。カメラもDJも、共通しているのは、編集してる仕事ということだと思っています。
 


石井リナ
:個人的にはフォトグラファーの印象が強かったのですが、過去はギャル雑誌「egg」などの立ち上げもされていたんですよね?


米原康正
:1995年だったんだけど、おさげ髪にひざ下スカートのセーラー服がスタンダードだった時代に、ルーズソックスでミニスカートの女の子がクラスにひとりとか、地域でひとりとか登場し始めた。渋谷に登場したチーマーの彼女たちに多かったんだけど、とにかくその子たちが目立ってた。その子達を集めて一冊の雑誌を作ろうって僕が提案してできたのが「egg」だったんだよね。

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Girls Channel より

石井リナ:中学生のとき一生懸命読んでました。今思うとあんなにインパクトのあるファションカルチャーもなくなっちゃいましたよね。

米原康正
:だよね。「egg」のあとに出てきたのが裏原の男子で受けてたブランドをサイズダウンして着こなす「裏原少女」。僕の友達関係は原宿系の人間多いんだけど、あくまでも男子文化だったからね。渋谷と原宿、僕はこのふたつの街から生まれる女子カルチャーは日本のエキストリームだと思ってます。

日本が日本を嫌いになったから、海外に発信していこうと思った

石井リナ:紙面を作りながら、時代の流れとともに渋谷や原宿のカルチャーを見てこられたと思うのですが、どういうきっかけで「中国」に接点を持つ様になっていったのでしょうか?

米原康正
:僕は日本、そして東京が好きなんだよね。それはナショナリズム的な大げさなものではなく、僕が日本に、そして東京に住んでるからという単純な理由から。原宿に事務所出して20年、僕は「日本が、東京が好き」という思想をベースに仕事をしてきた。そこで理解したのが、大人は新しいカルチャーができそれが受け始めると、必ずそれを商業にしたがるってことだったんだよね。

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石井リナ:悲しいですけど、確かにそういう動きはありますよね。

米原康正
:発信者だった人間を消費者にしてしまうというシーンをずっと見てきた。大人たちが日本の若者文化を消化し尽くした結果として、今度は韓流や外資のファストファッションに活路を求めた。僕はそれが始まったのが2006年からだと思ってるんだけど、そこから日本のカルチャーは日本人に忘れられていくんだよね。なんとかして日本の良さを伝えられないのかって考えた時、日本に興味のない日本人にプレゼンするんじゃなくて日本を好きな外国人にそれを伝えていこうと決意したの。特に中国の人たちにね。


石井リナ
:日本人のプライドがあってカッコいいですね。中国に、より近づくタイミングはいつだったんでしょうか。


米原康正
:その気持ちが強くなったのは1997年から作り出した「アウフォト」という雑誌の存在も大きかったな。その雑誌をきっかけに香港の文化人たちと遊ぶようになって、実はアジアの人たちがものすごく日本に興味だけでなく、好意を持っていることを知った。それを知ってから、日本で受けるというより、日本以外の国で受けることを考えながら仕事をするようになったの。 


石井リナ
:そうだったんですね、雑誌「Scawaii!」にも関わられていたんですよね?

米原康正
:2000年に入ってから、「Scawaii!」の副編集長だった国場君が考えた「エロカワ」って言葉のイメージをどんどん二人で具体化させていこうと動いていたんだよね。これは絶対に世界に通用する日本のエロだって、かなり力入れて仕事してた記憶があります。

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Zassi.net より

石井リナ:渋谷や原宿カルチャー、中でもちょいエロなど、女の子のファッションや特性を幅広く見られてきたんですね。

アウトサイダーな女子文化を紹介する

米原康正:今はカメラマンってイメージが強いかもしれないけど、僕は編集者として仕事をしているつもり。編集者として、受けてる女の子の文化を紹介することが日本文化を紹介するのに一番の早道だと思ってるんだ。ただ僕が追うのは、受けてるものならなんでもいいというわけではなく、体制の中にはないアウトサイダーな女子文化。そんな女子が渋谷、原宿、そして今秋葉原に多く存在してきたってことなんだよね。

石井リナ
:アウトサイダーな女子文化っていいですね。確かにそういう尖ったカルチャーに携わっていらっしゃることが多いですね。


米原康正
:具体的に言うと、2009年僕は台湾から蒼井そらちゃんをAVという文脈ではなく、アイドル的なアイコンとして台湾の雑誌に登場させた。それが上海に飛び火して、僕がプレゼンターとして開催したランボルギーニの上海支店ラウンチパーティへ参加してもらうことになったんだよね。彼女はそこでWeiboを始めたの。1年後に、彼女と再会した時に僕も始めなきゃって思ってWeiboを始め出したわけ。

石井リナ
:Weiboを始めたきっかけが蒼井そらさんだったというエピーソードも凄いですね。

Weiboには、桁違いのマーケットがある

米原康正:当時彼女は既に60万フォロワーくらいいて。遅れて1年後くらいに始めたら、俺が5万人フォロワー、彼女は200万人フォロワーにもなっていて。日本と中国のマーケットの違いに気付いて、本気出して運用しようと思った。
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石井リナ:Weiboの面白みは、どこにあるんでしょうか?

米原康正
:受け入れられるかっていう、実験をそこでやれたってことかな。あと、フォロワーが10万人を越した瞬間に、まずWeiboからの「協力してもらってありがとう」というメッセージが来て、仕事が直接来たり、パーティのゲストとして呼ばれるようになった。ある女の子のツイートを僕が何度かリツイートするうちに、フォロワー数200万人のスーパーブロガーになったこともあったよ。

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米原康正 Weibo より

石井リナ
:日本のTwitterの状況と違って、フォロワーの規模も桁違いですよね。


米原康正
:そうだね。他の女の子たちからも、リツイートしてくださいって自分の写真が毎日バンバン送られてくるようになっちゃって。毎日5件ずつくらいは選んで投稿してあげてるよ。(笑)

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石井リナ:凄いですね。かなり際どい写真もたくさん…。

米原康正
:日本と違って、中国は基本的にちゃんと自己アピールをする国だから、こういう動きも多いんだと思う。認められたいし、チャンスを掴みたいから動くっていうのは、凄く良いことだと思うよ。


石井リナ
:日本だと、そういう行動は叩かれやすいですよね。

米原康正
:そうなんだよ。実は僕「nicola」という中学生向けのファッション誌の読者ページを創刊号から担当していて、毎月中学生の女の子たちからの悩みを聞いてあげてるんだよね。そこで昔から気になっていたのが「モデルになりたい」とか「アイドルになりたい」みたいな明確な夢を持つと、その子はいじめられるみたいな図式。いじめられるから夢をあきらめる、みたいな子が多いのは日本の不幸だと思う。

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Amazon,co,jp より

石井リナ
:ちなみに、現在だと230万人フォロワーいらっしゃって、日本人男性内でTOP5に入るフォロワー数だと思うのですが、どうやって、フォロワーは増やされていたんですか?

米原康正
:もともと友達だった台湾や香港の芸能人が一千万単位のフォロワーいたりして、そいつらとやりとりしてると、千単位でフォロワー増えたり。Weibo内の有名なコラムニストに「この男を許したら中国の女の子全員が脱がされる」ってキャンペーンを貼られて炎上した時が1番フォロワー増えたんだけど、一気にフォロワーが60万人増えたよ(笑)。

石井リナ
:日本のTwitterとはやはりスケールが違いますよね。

米原康正
:Weiboを使って中国の若者たちが新しい価値観を求め出した。その時にがっつり関われたことがもっとも大きな僕がフォロワー数を増やせた理由だと思う。僕の場合、自分の意見はっきり言うし、誤解して差別用語使う人間とはグーグル翻訳使って喧嘩することも平気でやった。写真が中心のブログだし、いろんな意味で僕がどういう人間かってわかりやすかったんじゃないのかな。

中国内でのマーケティングが上手なのはユニクロと無印良品

井リナ:米原さんとアソビシステムの中川さんとの対談で、日本では水際対策ばかりやってるけど、それだけではダメだって仰っていたのが、印象的でした。

米原康正
:そうだね、自分のことで考えてみればわかりやすいと思うんだけど、旅行に行くときにガイドブック買ったり、Webサイトでしっかり調べたりが普通でしょ?買うものもある程度アテつけるじゃない?だから、中国人が日本に旅行するときだけでなく、中国の中できちんとマーケティングしないといけないんだよね。

石井リナ
:それが上手くいっているなと思う企業とかってありますか?

米原康正
:ユニクロと無印良品じゃないかな。

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ZUU online より

■2015年 Tモール「独身の日」セール 売上トップ企業
1位  小米 (Xiaomi 携帯やタブレットなど)
2位  華為 (Huawei 携帯やタブレットなど)
3位  蘇寧 (Suning 電化製品)
4位  ユニクロ
5位  魅族 (Meizu 携帯やスピーカー)
独身の日では他の企業ファッションブランドを抑え、売上げトップ4まで躍り出ました。

米原康正
:日本の企業は中国のカルチャーを全然理解しようとしてないと思うよ。ローカライズが下手くそだったり。あと、上手くいかなかったときに「中国にはまだ早すぎましたね」っていうのも代理店やマーケッターの口癖だと思う。

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石井リナ:ああ、確かにその言葉はなんだか良く聞く気がします…。

米原康正
:早いわけないでしょ。日本は中国にGDP抜かれてるんだから。きちんと中国のカルチャーを認識することが大切。例えば、政治的な記念日とか、中国人が嫌いな色や数字とかそういうことすら知らないとSNSの運用もできないよね。


石井リナ
:不謹慎な日に投稿したものがきっかけで炎上するとかもありますよね。

米原康正
:あとは、表記を気にしないことも多いと思う。ポスターに「Shibuya」って書いてあっても中国人は分からないのね。基本的には漢字だし。中国人のコミュニケーションとか、生活の基礎をきちんと把握しないと中国には入っていけない。

石井リナ
:本当にそうですよね。マーケティングをする身としても今日は大変勉強になりました。ありがとうござました!

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米原康正さんと言えば、「セクシーな写真撮るフォトグラファー」という様なイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。私も初めは、そんな印象を抱いていたのですが、渋谷や原宿のカルチャーを誰よりも側で見てきて、その温度感や変わり行く風景を、肌で感じ取っていたんだなと今回の取材を通し知りました。その中で、原宿が外資系ファストファッションブランドで軒を連ね、K-POPの流れる街に変わったとき、「日本が日本を嫌いになった」と感じ、海外に発信しようと思われたという話は、かなり印象的でした。

また、Weiboもアクティブに毎日利用されているからこそ、中国人のコミュニケーションや週間を、誰よりも把握されているということが分かります。中国人相手にプロモーションをするならば、当たり前ですが、彼らをよく知る努力をすることから始まるのではないでしょうか。

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米原康正 (よねはら・やすまさ)
編集者、クリエイティブディレクター、フォトグラファー、DJ。世界で唯一チェキをメイン機材とするアーティストとして、雑誌、CDジャケット、ファッションカタログなどで幅広く活躍。中華圏での人気が高く、中国版Twitterである「新浪微博」でのフォロワーが234万人超、シューティングとDJをセットにしたイベントでアジアを賑わせている。世界のストリート・シーンで注目される、ジャパニーズ・カルチャーを作品だけでなく自分の言葉で語れる日本人アーティストの一人。
HP:http://loveyone.com 
Twitter:https://twitter.com/yone69harajuku
Facebook:https://www.facebook.com/yonehara.yasumasa
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