2019.9.20

今年のGW明けに、Twitterであるおじいさんの写真が7.2万リツイート、約28万いいねされた。その写真とは、おじいさんがハイブランドの服を着て神社の前や畑の真ん中に佇んでいるといったもの。おじいさん×畑×ハイブランドというアンバランスな組み合わせが最高の化学反応を見せ、この写真の投稿者の言葉を借りると“エモカッコよく”、まるで写真集のようであった。

 

この写真を投稿したのは、広告代理店でCMプランナーをしているクドウナオヤさんだ。今年のGWに3年ぶりに実家のある秋田に帰ることを決めたものの、実家でやることが特にないということに気づき、自身の趣味で集めたハイブランドの服を秋田の田舎にいる祖父に着せて写真を撮ったらおもしろいのではないかと思い、東京の自宅から服を送ってみた。

「おじいちゃん、最初は『一体なにをするのか?』という感じではありましたね。でもだんだんと乗り気になってくれて、おじいちゃんから『ここで撮ったらいいんじゃないか』という提案をしてくれたりも。おしゃれとは程遠い田舎のおじいちゃんがハイブランドの服を着るなんて最初はギャグのような感じになると思ったけれど、意外と着こなしていましたね」と、おじいさんxハイブランドの意外な化学反応で「エモかっこよくなった」のだという。

 

撮影後、クドウ氏はツイッターに何枚か写真を投稿。「携帯の通知が鳴り止まないくらいツイッターでいいねやリツートがされて、同時に立ち上げたおじいちゃんのインスタグラムは10時間でフォロワーが1万人くらい増えました」と当時の反応を笑いながら教えてくれた。写真はツイッターで海外にも広がり、そこからグローバルメディアの目にもとまった。アメリカの大手メディア・BuzzFeedにも取り上げられ、その結果クドウ氏のおじいさんのインスタグラムのフォロワーは今では約半分が国外のフォロワーだという。

https://www.instagram.com/p/BxLoY4mB9MP/?utm_source=ig_web_copy_link

 

日本はもちろん、海外でもこの写真が大きな話題を呼んだ理由は一体何なのだろうか。

「みなさんが指摘してくださるのは、『孫がおじいちゃんに服を着せる』という“世代間コミュニケーション”ですね。おじいちゃん孝行や労わり、という背景ではなく、一緒におもしろいことをしようという感覚だったのが、結果として新鮮な“世代間コミュニケーション”として捉えられただと思います。実際に撮影しながら『あの木はナオヤが生まれた時に植えたものだから、そこで撮った方がいい』と思い出話をしながら撮影して、久しぶりにたくさん話をしました」

ただ写真自体がおもしろかったということだけではなく、疎遠になりがちな孫と祖父の新しいコミュニケーションの形が国境を超えたバズを産んだようだ。

一気に世界で有名になったクドウ氏のおじいさんだが、ご本人は今回の出来事をどう捉えているのだろう。「ツイッターやインスタグラムという概念を理解していないみたいなので、『インターネットからいろんな人に褒められているよ』と伝えました。秋田の新聞にも載ったようで、当時の教え子から元気な姿が見れてうれしいと言われているみたいです」

 

「CMを作りたい!」という一心で突き進んできた日々

現在はCMプランナーとして、人々の心に刺さり商品などを広めるための仕掛け作りをしているクドウ氏。なぜ、CMを作るというクリエイティブなことをしたいと思ったのだろうか。

田舎という言葉を聞いて多くの人が思い浮かべる、まさに田園風景のような秋田の村で育ったというクドウ氏。そんなクドウ氏はもともとテレビや映画などの映像がとても好きだったのだそう。「高校生の時に映画を作りたいと思ったけれど、それ1本で食べていくのは難しいことを知ったんですよね。その時にたまたま、情熱大陸でクリエイティブディレクターの箭内道彦さんを見て、CMを作るという仕事があるということを知りました。それからパソコンで調べて博報堂や電通という会社があることを知り、国立大学の中からそこの会社に行ける大学を調べたんです。そうして行った大学のデザイン学科はあまり映像系の授業がなかったので、自分で映像をいじったりして勉強していましたね。そして最終的にプランナーになりたくて、今の会社の総合職枠に応募しました」

そうして入社したが、最初は営業、リスティングなどの数字を追う作業がほとんどだったそう。その後マーケティングに携わったがそこで「クリエイティブ職になりたい!」と上司に訴えたところ、「それならなにかの広告賞を取ることに挑戦してみたらどうか」と言われたのだとか。そうして熱い思いを証明するかのように、いくつかの広告賞を受賞。その後、ようやくクリエイティブ領域の部署へ移動することができたそう。「入社した当初は営業や数字を追うために入ったのではないと思っていましたね。でも現在、企画を作るときはクリエイティブ領域以外での経験が生きている気もするので、最初の経験もよかったなと今は思います」

 

     

クドウ氏が手がけて来た広告・プロモーション。
上)バズる要素が3分の映像の中にふんだんに詰め込まれた日清食品チキンラーメンのバズムービー
下)マジョリカマジョルカの「マジョリ画」。マーケティング的にも大成功。ECサイトでは前年同月比380%超えの売上

 

「バズの本質は普遍的な人の気持ち」そしてバズらせるために必要なこと

CMプランナーとして、狙ってバズを起こす案件も多い立場にいるクドウ氏。

今回は自身の個人的なことでもバズるということを経験したが、クドウ氏はバズるということはどんなものだと捉えているのだろうか。

「バズるってなんですかね……今はただバズれば良いだけじゃないと、世の中的にも冷めてきているとは思います。バズるって言ってしまうと、流行り廃りがあったり、広告的には手法として古いと思われがち。だけど、バズを生む本質的なところは、おもしろいと思うことを誰かに伝えたいとか、わざわざ誰かにシェアして見せたいとかいう人の普遍的な気持ちだと思います。そういったところまで、クリエイティブのレベルを上げることは、常に狙っていきたいと思っています。」とクドウ氏は自身のバズるということに対する考え方を教えてくれた。

近年はSNSの急速な発展により、日々いろいろなニュースが話題になり、ものごとがバズるかバズらないかという二極化で捉えられがちな状況にある。私たちはそれを全てそのまま受け止めてしまっていたら、情報に振り回され続けてしまうだろう。そこで必要になってくるのが、本質を見極める力。クドウ氏はどのように本質を見極めているのか聞いてみた。「自分の主観によることが最終的には多いですかね。誰かがシェアしていることを、なぜそうなっているのか、そなぜそれが面白いか、そしてなぜシェアされているのかを噛み砕いて自分の中に持っているようにしていますね」

 

また今回おじいさんの写真がバズった際にも、流行の本質について考えるきっかけになったよう。

「(今回写真がバズったことで)DMにインフルエンサーマーケティングの業者から脱毛の案件が来たんです。広告のために有名な人を使うということ自体は、マーケティングとして間違っていないと思うし思考としてはいいと思うけど、話題になっていて人が集まっているからという理由で利用し、本質的な文脈を理解していないのはイケてないなと思います。」

 

https://www.instagram.com/p/BxQm7-nBzXU/?utm_source=ig_web_copy_link

 

世の中の人の心に届くものを作るにはクリエイティブな視点をもつ一方で、大衆的な意識を持つことも必要となる。そのために意識していることはあるのだろうか。

「例えば、世の中のリアルとツイッターのカルチャーは違うように、そのカルチャーにある文脈や背景を意識するのが大切だと思いますね。何かメッセージを作るときは、ターゲットが所属しているカルチャーを意識して、そこのトンマナを理解したうえでこういうメッセージにした方がいい、という提案をします。そのためには、自分がまずその中の1ユーザーであることも大事。そういう意識を持って自分もいろいろ試したりするけど、それは勉強のためにやっているというよりかは楽しんでいるという感じがありますね」

 

また、広告を作る上で欠かせないものは「客観視する力」なのだとか。

「僕がこの人センスいいなと思う人って、自分のことを客観視できる人かなと思います。意外と、根っからの表現者というより、計算的にどう見せるかということを考える客観視力を持った人。広告を作る上では、自分が面白いと思ったから、だけでは通じつ、客観的にみんなが面白いと思うかというような、主観と客観のハイブリットで考えるのが基本だと思います。。それなので客観視力は基礎筋力と言えます。」

そう言われて客観視力を鍛えるのは難しいと思ってしまうが、クドウ氏はその客観視力を鍛えのには、今はとてもいい時代だという。

「今はインスタなどのSNSで、誰もがセルフブランディングできる世界なので。若い人は客観視は基礎力として上がっていると思いますね」

 

 

クドウナオヤが考える広告の未来と自身のビジョン

CMプランナーとして広告業界に身を置き、バズの仕掛け人として仕事をしているクドウ氏は、広告の未来をどう見ているのだろう。

「広告業界だけのトレンドとかは関係なく、数多あるコンテンツと横並びで、わざわざ人が見たくなるものが、広告としても求められてくると思います。。だからこそワクワクする、見てみたいと思ってもらえるものを、広告領域だからできることで時代が変わってもやっていきたい」

 

また広告を作るプロセスも、今後変わっていく必要があるという。それは、広告宣伝活動をしたいと考えている企業と広告を作る側がよりコミュニケーションを取れるようにすること。

「企業がすでに広告したい商品があって、どんな広告がいいですかね、と我々に相談するのではなく、そもそもなんで広告を打つ必要があるんだっけとか、ひいては、なんで世の中にその商品を作る必要があるんだっけ、から一緒に考えていければなと思っています。そういった意味で、僕たちが請け負う広告クリエイティブという定義はどんどん広がっていると思うし、そういったところから一緒にクライアント共犯関係になれれば、世の中に対して、もっと大きな仕掛けができると思っています。」

最後に、おじいさんとの作品作りを通したこれからのビジョンを聞いてみた。

「僕的なビジョンは、おじいちゃんの写真展を開いて写真集を作り、それをおじいちゃんにあげて、(一連のおじいちゃんに関すること)は完結ですかね。けれどこの活動に共感してくれた方には、“新しい世代間コミュニケーション”という大義を感じてくれた方も多くいます。それは”敬老”の新しい概念を打ち出せるものなので、そういうのを広げてもう一つ活動していけたらと思っていますね。アート活動的に、若い人たちとおじいちゃん・おばあちゃんとの関わりを変えていけたらおもしろいなと」

紫の髪色と攻めたファッションとは裏腹に、家族が公務員一家で、ご自身のことも「小中高一回も休んだことがないくらい根がクソ真面目で、イマイチ突き抜けれなかった」と言うクドウ氏。しかし真面目で物事をしっかりと把握し、世の中の基準を捉えて理解しているからこそ、新しくておもしろいことを次々と生み出すことができるのではないかとインタビューを通して感じた。今後、クドウ氏がいったいどのようなバズを世の中に起こしてくれるのか楽しみだ。

 

そんなクドウ氏のおじいさんの写真展が、9月16日の敬老の日から表参道で開催されている。
是非足を運んでみてはいかがだろうか。

「SLVR.TETSUYA “ENDRESS NOTE”」#シルテツ展

開催期間:9/16(月)-9/22(日)

会場:表参道「SIDE」

入場無料

WEBサイト:https://slvr-tetsuya.com/

 

Kanako
Written by
Kanako
1996年生まれ。埼玉県出身。大学で語学や海外カルチャー、コミュニケーションを勉強。卒業後はフリーランスとしてライターや編集を中心に、人々の生活を楽しいものにするために「広める」仕事をしている。愛読書は雑誌、バイブルは"gossip girl"、尊敬する人はアナ・ウィンター。
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1996年生まれ。埼玉県出身。大学で語学や海外カルチャー、コミュニケーションを勉強。卒業後はフリーランスとしてライターや編集を中心に、人々の生活を楽しいものにするために「広める」仕事をしている。愛読書は雑誌、バイブルは"gossip girl"、尊敬する人はアナ・ウィンター。
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