2019.12.26

いよいよ2020年が訪れようとしている中、2019年は様々な価値観の変革期のような時代だった。

2018年ごろに大きなムーブメントとなった#metooに代表されるガールズエンパワーメントの流れはより大きくなり、日本でも主にSNSを中心として「男らしさ」「女らしさ」といった固定概念の定義を考える動きや、ダイバーシティ・性多様性について認識を広げる見聞も増え始めた。

時代の変革の中、世界規模でメンズコスメの市場が広がっている。
そんな、メンズコスメの世界の現状と事象について展開していこう。

 

世界規模で市場を拡大し続けるメンズコスメ

米国のAllied Market Researchの調査では、男性のパーソナルケア市場は2022年に1,660億にのぼると予測されている。米国の調査会社・NPDのレポートによると、18〜22歳の男性40%近くがジェンダーレスな美容製品に関心を示しており、米国の男性回答者の56%以上が、2018年に少なくとも1回、ファンデーション、コンシーラー、BBクリームなどのフェイシャル化粧品の使用を行なっているという結果もでている。
(参考:Men are a multibillion dollar growth opportunity for the beauty industry

欧米でのメンズコスメラインは増えており、「CHANEL」が昨年9月に男性向けコスメライン「BOY DE CHANEL」を立ち上げたり、「トム フォード(TOM FORD)」のメンズスキンケアライン「トム フォード フォー メン(TOM FORD FOR MEN)」が今年3月に日本に上陸するなど、ハイブランドのシーンがメンズコスメを牽引してきた。


(画像:BOY DE CHANEL公式サイトより引用)

国内でも男性向けスキンケアブランド「BULK HOMME」や、昨年9月に、THREEのメンズコスメ「Fiveism × Three」が立ち上がるなど盛り上がりを見せている。

株式会社富士経済の調べによると、国内のメンズコスメ市場も年々拡大しており、今年2019年には1196億円にのぼると見通されている。(参考:19年メンズコスメ市場、1.4%増の1196億円へ
化粧水などの基礎化粧品、ワックスなどのヘアケア、制汗剤などのフレグランスも含んだ調査結果だが、10年前の2009年には900億に満たなかったのに対して、徐々にその需要が拡大していることがわかる。前述の「Fiveism × Three」では、スキンケア商品だけではなく、リップやアイシャドウ、マスカラなどメイクアップアイテムを幅広く揃えており、男性のメイクアップの可能性を広げている。

男性のメイクアップ、と聞くと抵抗のある方も多いかもしれないが、今年3月に資生堂・unoから登場した男性用BBクリーム「フェイスカラークリエイター」が発売と同時に話題になり、働く男性の間で人気のコスメアイテムとなっている。

(画像:uno公式サイトより引用)

今年9月には販売販路も増やし、俳優の窪田正孝を起用しさらにその認知度を拡大している。この商品の特徴は「化粧をしている」と気づかれない程度の薄づきで、肌のトーンをアップさせてくれるため、二日酔いや疲れで顔色が悪い時などにも役立つ。

スキンケアのような感覚で塗れる白いクリームタイプなため、化粧に抵抗感のある男性でも使いやすい仕様になっているのも特徴だ。

米国・NPDの美容業界アナリストLarissa Jensen氏が「美はもはや「理想的な美」だけではない。美しさは、何でも、誰でも、どんな性別でもかまいません。」と述べているように、いま世界中で男女ともに美を目指し、磨く時代へと突入している。

韓国・中国。アジアで広がるメンズメイク

12月に、韓国発のジェンダーレスなメイクコスメ「LAKA」が日本に上陸した。

(画像:プレスリリースより引用)

LAKAは、韓国初のジェンダーニュートラルなメーキャップブランドとして2018年5月にデビュー。LAKAでは、性別関係なく好みやそのときの感情に合わせてプロダクトを自由に選択でき、みんなが自然体でメイクアップを楽しむことを掲げ、メインビジュアルには男性モデルを起用。
韓国は発売からわずか1年で急速に人気が高まり、2019年9月に発売した「ジャストアイパレット」は2週間で初回販売分が完売となるなど話題だ。

 
(画像:プレスリリースより引用)

K-BEAUTYと呼ばれ、アメリカ・ロンドン発のビューティーイベント・BEAUTY CONなどでも注目を浴びる韓国コスメ市場は国内外ともに盛り上がっているが、韓国人男性は1年間に費やす化粧品代の支出が世界1位という調査結果も2014年時点にあり、男性専用の皮膚科や美容整形外科クリニックも増えているという。
アメリカで躍進を続けるK-popの韓国男性アイドルたちが日常的にメイクアップをしていることもあり、
間違いなく韓国は、アジアでメンズコスメを牽引している存在となっているだろう。

その背景には、韓国男性が義務として行われる徴兵期間に支給される日焼け止めや迷彩具の成分が肌に悪く荒れてしまうため、韓国男性はスキンケアやファンデーションに力を入れるようになったといわれている。

実際に、日本でも大人気の韓国コスメブランド「Innisfree(イニスフリー)」は兵役中の男性向け商品を販売している。

(画像:innisfree公式サイトより引用)
韓国コスメでは、男性アイドルなどをモデルに起用することも多く、コスメのジェンダーレスのイメージが強くなっている。

また、中国でも根強い人気を持つK-POPの影響か、メンズコスメの市場が拡大している。中国の男性スキンケア市場は100億人民元(1500億円)に達し、さらに2019年には154億人民元(2300億円)を突破することが予想されている。(参照:中国、男性向け化粧品急成長

中国のメンズメイク ブランド「Chetti Rouge」ではBBクリームとリップ、アイブロウが人気アイテムとなるなど、その市場は拡大していきそうだ。

国内でも増える、スタートアップ系メンズコスメ

日本で展開されるスタートアップ系メンズコスメも増えてきている。

2018年2月にローンチされた「BOTCHAN」は、墓石メーカーの経営者が立ち上げ、「男らしくを抜け出す」をコンセプトに展開。主に百貨店での取り扱いが多く、オーガニックに近い製法で、従来の男性的イメージな「黒・白」ではないカラフルなパッケージが特徴だ。現在はスキンケアを中心に展開されている。
(画像:プレスリリースより引用)

メンズコスメメディア「his&」からもオリジナルブランド「NUDO」が2019年6月に登場。「his&」では男性向け美容に関する情報を発信しており、「NUDO」ではユーザーインタビューを重ねローンチされたスキンケアやメイクアップベースなどを販売。(画像:プレスリリースより引用)


LIPPS BOY」は、東京を中心に展開する美容室LIPPSのメンズコスメブランド。2019年4月ローンチされ、スキンケアからフェンデーション・コンシーラー・色付きリップまで幅広く揃える。モデルに俳優の杉野遥亮を起用し、全国14店舗のLIPPSで販売するほか、LOFTでも展開している。(画像:プレスリリースより引用)

グローバルな市場はもちろん、国内でもさらに盛り上がって行くであろうメンズコスメ市場。
SNSで世界中の美が共有され、ダイレクトにトレンドにアクセスできる時代。
古くからの美の固定概念から解き放たれ、自分にとっての理想の美を、性別問わず目指す世界がもうすぐそこにきている。

Written by
前田 沙穂
2019年1月からCOMPASSの全ての記事の企画・編集を行う。フリーライター&アートディレクター。マーケティング,ガールズカルチャー,サブカルチャーを軸に企画・ライティングや、女性アイドルやアーティストのクリエイティブディレクションなどを行う。https://twitter.com/sahohohoho
Written by
前田 沙穂
2019年1月からCOMPASSの全ての記事の企画・編集を行う。フリーライター&アートディレクター。マーケティング,ガールズカルチャー,サブカルチャーを軸に企画・ライティングや、女性アイドルやアーティストのクリエイティブディレクションなどを行う。https://twitter.com/sahohohoho
  • LIKE@COMPASS
  • FOLLOW@COMPASS